偽善者と配信イベント前篇 その07
自らのリスナーの後押しもあってか、彼女は【怠惰】を受け入れる決意をした。
それ以外にも理由はあるだろう……求めない者に、資格はそもそも無いからな。
「──はい、というわけでセジュちゃんが新たに魔王少女になりました!」
[アレ、時間が飛んでる?]
[さっきセジュちゃんが決意してから、ここに至るまでの過程が無いんですけど?]
「その辺はちょっと企業秘密なんだよ。それよりもほら、見てみて! セジュちゃんのこの……そこはかとなく力溢れる感じ!」
[おお、変わって……るか?]
[強いて言えば、目の色が少しだけ白っぽくなっている気がするけど]
[正直、強そうとは思えないな]
「まあ、強くは見えないって意見は仕方ないよね。ステータス的には変化なし、固有スキルとして【怠惰】が登録されたぐらい?」
うん、ここでツッコミの嵐。
一番多いのは『魔王少女とは?』、もっともである。
「いちおうね、AFOには七つの<大罪>の名を冠した【魔王】が存在するんだよ。で、ある場所に辿り着けば魔王少女たちは無条件でそれを手にすることができる。つまり、ある意味『魔王少女(見習い)』かな?」
「見習いッスか……」
「でも、いきなり物凄い強くなって……みたいな展開よりいいんじゃないかな? あくまでも、みんなが観たいセジュちゃんの活躍のお手伝いツールぐらいに思った方がいいかもしれないね」
[まあ、俺ツエーが観たいなら他の動画でいいわけだし]
[ちょうどここみたいにさ]
[強そうな魔物もワンパンだったし、雑談はアレだけど暇潰しにはちょうどいいかも]
偽善中はともかく、普段はあまりリスナーたちを気にせずやっているからな。
無視ではないものの、最初からそういうスタイルとしておかないと困ることが多いし。
「さて、ここからが本題だよ。【怠惰】の魔王少女になったセジュちゃんに、チュートリアルとしていくつか手解きをしていくよ」
「お、お願いしまス!」
「まず、魔王少女たちに共通して与えられている能力、“超速成長・超”。魔王少女たちはみんな、獲得経験値に補正が入るんだよ。そうだね……セジュちゃんなら、迷宮内の石に“鑑定”を使ってみれば分かるかな」
「は、はいッス──“鑑定”!」
魔力の籠もった視線が迷宮の壁に向かう。
初心者である彼女が視て、得られる情報はほとんど無いのだが……少しして、驚いた表情を浮かべた。
「も、物凄い勢いで通知が入るッス。スキルのレベルが上がったって……」
「あー、通知は切った方がいいかもね。ここが迷宮で、視たのが迷宮だったからってのもあるけど、これからはどんなことをしても常人の何十倍も速く成長していくからね。通知がうるさくなるんだよ」
[なに、その天才の苦悩みたいなヤツ]
[むしろ聞きたいのに、全然レベルが上がらない人だっているんですよ?]
[同窓で観てるけど、たしかに壊れたラジオみたいに鳴ってるな]
うんうん、俺も初期に悩まされたからな。
ちなみに{感情}に内包されたスキルの数分これが増え、かつ{感情}そのものもこれの上位版が組み込まれていた。
だからこそ、スキルや職業を大量に組み込むことができたんだよな。
あの強引なビルドが成立していたのも、レベルの暴力があったこそだ。
「そりゃあ【魔王】だから。しかも普通のと違って魔物の統率とかをしない分、個でぐんぐん成長していないと【勇者】にやられちゃうからね。これが共通の能力、そしてもう一つが──“魔武具創造”」
[! 魔武具だって!?]
[知ってるのか、ライデン!]
[唯一無二なのは遺製具と同じだが、こっちは理論上誰でも使える。ただし、滅茶苦茶使い手を選ぶ……一から作ることはできない、そのはずなんだが]
「長文ありがとう! でもでも、作るじゃなくて『創る』──創造だからね。<大罪>を冠するスキルの特権、自分だけのオリジナル魔武具を生み出せるんだ!」
[それなんてチート?]
[だが大罪なわけだし、それ以外で何かしらのペナルティがあるんじゃ……むしろ、これらが無いとやっていけないぐらいの]
「本当はあるんだけど、魔王少女たちには無いようサービスしてあるよ。さっきも言ったけど、あくまで私が魔王少女にしている……スキルの所持自体は私がしているからね」
[いやそれ黒幕ぅ!]
[用済みになったら力を徴収するパターン]
[ツッコミどころが多過ぎる……]
俺は知らなかったが、本来<大罪>スキルは持つだけで業値が一気に悪に傾くらしい。
畏怖嫌厭の邪縛同様、所有者が闇堕ちしやすいよう周囲に働きかけるんだとか。
だが俺は同時に<美徳>系列も保有し、それらを統合する{感情}を手にした。
おまけに<正義>もあったため、業値関係のペナルティは無効化されたんだよな。
「ただ、これについてはまだ使えないよ。ある程度、体に【怠惰】が馴染んでから……そうだねぇ、目の色だけじゃなくて髪の色も変わるようになったらかな?」
「自分、髪の色も変わるんスか? 目も自分じゃ実感が無いっスけど……」
「条件次第でね。ある程度馴染まないとそもそも変わらないし、今は気にしなくていいから大丈夫」
説明だけでだいぶ時間が掛かっちゃうな。
視聴者も飽きちゃうだろうし、そろそろ戦闘チュートリアルでもやりながら説明をしていこうか。
※“超速成長・超”
高速成長の上位互換、超速成長の超版
なお、それぞれの成長で補正が入る部分の幅が異なる
そのうえで、後ろの『・〇』の部分が補正量を決めます
……まだ上があります
p.s. 無字×1214
新年明けてから初更新ですね
他作品で山田武の作品を見ていない方、今年もよろしくお願いします
無字でお察しの通り、こんな感じでゆるっとやっていきます





