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CHAPTER 3

校舎から俺達はぐんぐん距離を開けていく。体育倉庫に走っているようだ。花音のペースが淡々としていて、5分前とほぼ変わらない。持久走が得意だとは俺は言えない。短距離の方がどちらかと言えば好きだ。木製の体育倉庫の錆び付いたドアを開け放つ。独特なカビ臭い異臭がする。体育委員長ではあるが、まだ体育倉庫は入ったことが無い。何て言ったって正式に体育委員長になった翌日には学校と世間とメディアを騒ぎ立てる程の大騒乱に学校全体が呑み込まれたからだ。でも、こんなに汚い、臭い、古い倉庫は初めてだった。狭い校庭にひくラインの粉の臭いが特に庫を悪化させている。倉庫には1つだけ窓が有ったが、使われている様子は無く鉄が茶色くなっていた。砂だらけのハードルが雑に並べられている棚の下にはコーンと思われる劣化したプラスチックの森が広がっている。更には色褪せたフラフープとドッジボールが床に散乱している。そんなことはどうでも良いのだが、怪しいことに、椅子が三脚中心に綺麗に並べて置いてあるのだった。花音は潔癖症なのか、バラバラに置かれた運動要具を片っ端から片付けている。

カンカンカンカン

「脱獄?もっと良い場所沢山有ったのに。学校の外とか…」スティレットーヒールが古いマットを刺しながら俺達に近付く。シャボンの薫りが俺に不思議な気分にさせる。胸がすっとして、空っぽのような。赤い爪が銀色の小さな鍵を吊るした紐を揺らしている。「鍵かけちゃおっかなぁ」小悪魔のような微笑みを鍵に向ける。此方見ろよ。

「おい、食い物と飲物と地面を保証してくれてるのか?」

「さぁ?Guten Nacht」そう言い残して倉庫を花音と出て鍵をかけて歩き去った。俺と優蘭は普通の人間がする通りに扉を叩いて出してくれーって叫ぶ。優蘭は泣いている。さっきの事で気まずいのに何で寄りによって一緒に監禁されなきゃいけねぇんだ!

「あーあ…転校して2週間目でこんな学園物みたいな事件に巻き込まれてるよ…何とかしてくれよ。何で態々こんな学校に編入したんだろう」俺は溜め息をついてポツポツと貫通されているマットにしゃがみこむ。

「私、川谷くん諦めないし、誰にも譲らないから」

 「優蘭ごめん。でも好きじゃないのに好きだって言ったままって反対に優蘭の気持ちを傷つけることになるだろ」

 「自分を正当化しないでよ、全く正しくないんだから」優蘭がつんつんした声で言う。

 「それより…もう逃げ場無いような気がするんだけど、気のせいかな?」

 「何暢気なこと言ってるのよ!あんたアホ?」優蘭は窓を指す。もしかしてこいつも奴等の手下か?だったら信じない方が良い。でも、守田は言っていた、優蘭の事を救うのかと。優蘭はもう閂を外そうと2つの古びた棚に足を片足ずつ掛けている。

 「手伝うよ」俺にこの言葉をかけてもらう為にこんな無謀な事をしているのか、俺にはわからなかった。

 「結構です。スカートの下見られたくないし」やけに言葉がきついような…。

 「誰も見たくねぇよ、鬼のパンツなんか」

 「誰が鬼よ!」優蘭は窓にかぶっていたホコリを俺の頭の上に振り撒く。

 「花咲か爺さんかい!いい加減にしろ!」

 「あたしは鶴の恩返しの綺麗な娘です。せっせと働いて高価な着物を織って役に立つ人間です!鬼でも爺でもない!」優蘭のパンツは確かに黄色と黒ではなかった。以外にも真っ赤だった。

 「何で黒パンとかいうやつ履いてねぇんだよ」

 「キャン!」優蘭が俺の頭の上に落下する。スカートに埋もれた俺の顔…赤いのだろうか?ここはあえて何も言わないでおこう。「どうしよ!」

 「どうしよも糞もねえだろうが!馬鹿かお前は」俺は優蘭の体をマットに振り落として自分から閂を外しに行く。当たり前だけど古びた閂はなかなか外せない。ライン用の粉やらを使ってやっとのこと閂を外すと、もう闇が掛かり始めている。かなり息が楽になった。窓は調度人が通れそうで、降り立つところは1m以上あるからここから抜け出すには相当な勇気と身体能力を保持する人じゃないと無理だ。しかしながら…ここから脱出をはかっている生命体は俺以外に勇気の欠片も、身体能力もあるのかよくわからない奴が居ることは忘れてはいけない。「取りあえず、俺が先に降りてるからその気になったら来い」俺は窓を潜り抜けた、は良いけど…何で顔面から行ったんだろう。と思った瞬間!ぐしゃり痛い。鼻が折れていないことはわかるんだけど生温い液体が絶えず鼻から流れ出る。俺はブラウスを脱いで鼻に当てた。激痛が鼻をつたう。

 「大将!逃亡者が居る!」校舎の方から声が聞こえる。まずい、気付かれた。校舎からこの倉庫まではかなり遠距離だ。鉄砲だって相当の腕前の奴じゃないと…バン!針が猛スピードで空中をかけ抜く。針は俺に掠れたけれど俺が素早く避けたからだ。ヤバい。これじゃあ、俺も俺も終りだ。あいつが針を(何か塗ってあるのだろう)射っている間に湍水みたいな奴が駆け付けてくるかもしれない。取りあえず、学校の敷地から出なきゃいけない。

 バン!バン!バン!バン!

 乱射しはじめているようだ。

 危ない。

 俺は体育倉庫の裏に隠れて生い茂っているツタをを掴んで壁を乗り越える。針が俺の右手にはりが突き刺さりそうになるけど、何かがその針の行く手を阻んだ。俺はその何かがか飛んできた方向を見た。


 信じられない

―そこには湍水星羅が息を切らせて立ち竦んでいた

瑞水は一体何者だ!!!私も実を言うと分かってないんです・・・

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