第六章:木弓の重み
夜の連続公開、第6章スタートです!ここから部活本格始動。ボロボロの道具を自分たちの手で修復する、熱い「武器職人パート」をお届けします!
道場は椿油と紙やすりの削り屑の匂いで満ちていた。使い込まれた畳の上に、トウジは古びた青い布を広げ、そこには竹とグラスファイバーでできた三張の複合弓(和弓)が横たえられていた。塗装は剥げ落ち、革の握り皮は経年劣化で乾燥してひび割れ、弓の両端には学校の部室の奥で何年も放置されていた埃が積もっていた。
職員室は部の存続こそ認めたものの、地方大会で一勝を挙げるまでは予算は凍結されたままだ。彼らには部員が集まったが、全員が行使できるまともな武器がなかった。
「これじゃまるで、難破船から引き揚げてきたゴミだな」
ミナトが顔をしかめながら、指先で弓の一張をつまみ上げて不機嫌そうに溢した。
「数値的に言うなら、これらの一張の構造的整合性は、わずか六十二パーセントの効率でしか機能していない」
ダイコがノギスで竹弓の厚みを測定しながら、手の甲で眼鏡を押し上げて分析した。
「接着剤の層が乾燥しているため、十五キログラムを超える引力がかかれば、爆発的な剥離現象を引き起こす可能性がある。要するに、力任せに引けば、僕たちの顔の前で粉々に飛び散るということだ」
イツキは床に胡坐をかいて座り、粗い紙やすりを一枚手に取りながら笑い声を上げた。
「だからこそ、俺たちの汗の出番だろ、お前ら! まともなライトノベルには、大決戦の前に主人公たちが自分たちの武器を修復するパートが必ずあるもんだぜ。トウジ、どこから始める?」
トウジは作業がしやすいように、すでにたすき掛けで弓道着の袖を固定していた。彼はイツキの隣に膝をつき、薄い木肌の稽古弓を手に取ると、傷んだ塗装の溝を指先でなぞった。
「過去を削り落とすことから始めよう」
トウジは静かに告げ、空間に集中を呼び戻した。
「古い塗装をすべて削り落として、綺麗なグラスファイバーと竹の地肌を露出させるんだ。もし深いひび割れがあれば、その弓はもう死んでいる。表面的なものだけなら、樹脂で埋めて、握り部分の革――握り皮――を交換する。イツキ、これが君の弓だ。大切に扱ってくれ」
イツキは瞬きをし、手の中の使い込まれた道具を見つめた。彼はいつも物事を冗談半分に捉える男で、弓道のポーズやスタイルを好むプロモーターだったが、自身の努力によって再び一射の命を吹き込むことになる弓を握った瞬間、その両肩にこれまでにない重みがのしかかるのを感じた。
「俺の、弓……」
イツキは呟き、不敵な笑みが一瞬で消え去り、真剣で引き締まった眼差しへと変わった。彼は木肌に紙やすりをかけ始めた。細かな木粉が、午後の黄金色の空気の中に舞い上がり始める。
二時間の間、道場に響く音は、木材を削るやすりの粗い摩擦音と、力を入れすぎてやすりを破りそうになっているミナトの押し殺した不満の声だけだった。ダイコは外科医のような精密さで樹脂を塗布し、射出ベクトルが狂わないよう、層の厚みをミリ単位で完璧に均一に仕上げていった。
ユウセイは相変わらず隅の席で本をめくっていたが、その鋭い瞳は頻繁に青い布の中央へと向けられていた。彼は、素人たちが古い弓をまるで国宝でも磨くかのように必死に手入れしている、その異常なまでの没頭ぶりを観察していた。彼の冷笑的な態度は崩れなかったが、グループの放つ極限の集中が、彼の静寂を乱し始めていた。
「よし、できた!」
イツキが腕で額の汗を拭いながら声を上げた。
手の中の弓は、光沢を失った、完全に滑らかで綺麗な質感を呈していた。トウジは型押しされた革のロールと、専用の接着テープを抱えて近づいた。
「次は、握り皮だ」
トウジは指示した。
「親指でしっかり圧をかけながら、革を巻き付けていくんだ。一巻きごとに、前の巻きの正確に三分の一を重ねるようにする。もし緩みがあれば、弓構え(ゆがまえ)の最中に弓が手の中で滑ってしまう。握り皮は、君の魂と木材が直接触れ合う唯一の点だ。焦るなよ」
イツキは唾を飲み込んだ。彼は黒い革を巻き始めた。普段は矢を回したりスマホを操作したりする彼の器用な指先が、微かに震えていた。彼は素材の抵抗、テープを固定するために必要なトルク、そしてその責任の本物の重みを感じていた。彼はただの木切れを修理しているのではなかった。彼は自分自身の「リズム」の基礎を構築していたのだ。
最後のひと巻きが固定されたとき、イツキは弓を掲げた。そこにはもう、学校のゴミ捨て場から拾ってきたような無残な姿はなかった。洗練され、格好よく、無骨で圧倒的な威厳を放つ武器がそこにあった。
「おい……めちゃくちゃイケてんじゃねえか」
ミナトも、自分の弓に保護オイルを塗り終えながら、横目でそれを見て認めざるを得なかった。
「握り部分の重量配分は、九十八パーセントの精度で補正された」
ダイコがコメントし、技術的な満足感から、滅多に見せない微かな微笑を浮かべた。
イツキはゆっくりと立ち上がった。新しく生まれ変わった弓を左手に持ち、射線へと歩む。初めて、彼は冗談を言わず、大声で笑うこともしなかった。彼はトウジを見つめ、目で許可を求めた。
トウジはただ静かに首を縦に振った。
イツキは射位についた。足踏み。両足が正しい幅で開かれる。彼にはミナトのような荒々しい力も、ダイコのような天才的な頭脳もなかったが、彼が弓を頭上へと持ち上げたとき(打起し)、道場の空気が彼を中心に一列に整列していくかのように見えた。
彼は新しく張り直された弦を引いた。使い込まれた木肌がギギッと軋み、少年の努力に力強く応える。イツキは会で張力を維持した。三秒。四秒。汗が首筋を流れ落ちていたが、彼の視線は、新しく宿した誇りをもって的へと固定されていた。彼はただトウジの部を救うためにそこにいるのではなかった。この競技が、今や彼自身のものでもあるからこそ、そこに立っていたのだ。
離れ!
弦が弾けた。弦音は完璧ではなく、少し粗い音だったが、矢は真っ直ぐに、力強く飛び去り、紙の的の最も外側の縁へと突き刺さった。
ドッ!!
イツキは残心の姿勢のまま、遠くの矢を見つめていた。彼はゆっくりと弓を下ろし、自分で巻き付けた革の握り皮を見つめると、広い笑みを浮かべた。その瞳は、周囲の全員の士気を最高潮に高めるような、伝染性のエネルギーで輝いていた。
「トウジ……感じたぜ」
イツキは興奮で声を震わせながら、主将を振り返った。
「この弓の重み……ただの木の重さじゃない。俺たちのチームの重さだ」
トウジは微笑み、部の基礎がようやく固まりつつあるのを感じていた。彼らはまだゴミ溜めから拾ってきた道具を使う素人集団に過ぎなかったが、その姿勢は無敵だった。道場の隅で、ユウセイは乾いた音を立てて本を閉じ、立ち上がると、雨の降る外へと静かに去っていった。好むと好まざるとにかかわらず、あの五本の弦が、危険なハーモニーを奏で始めようとしていることを知りながら。
(第六章 終わり)
第6章をお読みいただきありがとうございます!道具に命が吹き込まれ、チームのリズムが少しずつ形になってきました。
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この後20時には、因縁の神童が動き出す第7章が公開されます。お楽しみに!




