第十七(じゅうなな)章:万代(バンダイ)
毎日3話公開の4日目、夜の更新となる第17章です。残された矢はわずか二本。部の生存と道場の死守、すべての想いを乗せて、主将トウジが最後の射座へと進みます――。
総合体育館は息を潜めているかのようだった。デジタル掲示板の上、三位決定戦の対戦相手は二十射中十五的中という驚異的な記録で自らの立を終えていた。ダイコの計算は非情だった。部の消滅を阻止し、表彰台に牙を剥くためには、この公立校弓道部は巨大な的のサポート体――万代――に据えられた的に、正確に十六本の矢をぶち込む必要がある。これ以上の失射は、すべてが終わることを意味していた。
線の係員が流れ(フロー)の開始を承認した。ここから先は、前の弦の響きが次の射手の確信を決定づける、連続した連鎖の始まりだ。
イツキが大前として一步前に出た。その足踏み(あしぶみ)の姿勢は微動だにせず、一切の躊躇はなかった。彼は自分がやすりをかけ、修復したあの木弓を持ち上げた。
引分け(ひきわけ)。彼は弦を開いた。若き確信に満ちた笑みは口元にはなかったが、その焦点を絞った瞳の中に宿っていた。
離れ。
ツルネ――ッ!! 彼の弦の響きは伝染性の確信を伴ってこだまし、チームの士気を最高潮までぶち上げた。矢は風を切り裂き、紙を捉えた。
ドッ!! 的中。イツキは四射中三的中という決定的な数字で自らの役割を終えた。最初の弦は、純粋な風格をもってその職務を全うしたのだ。
チームの目に見えないメトロノームのリズムを崩すことなく、ダイコが射線に入った。彼は人差し指で眼鏡を直し、イツキが空に残したあの残響と完全に同調して脳内パネルを作動させた。彼は観客席も照明の熱気も見つめていなかった。あるのは、自分が証明すると決めた幾何学ベクトルと数学的定数だけだった。
離れ。
ツルネ――。乾いた、外科医のような、機械的なクリック音と寸分違わぬ一音。彼の矢は完璧な放物線を描いて突き進み、側面の風の雑音を完全に相殺した。
ドッ!! ドッ!! ドッ!! ドッ!! 四射すべて的中。ダイコの幾何学アルゴリズムは、尋常ではない精密さでシステムを安定させていた。
スコアが上昇し、ミナトが射座に入った瞬間、プレッシャーの熱量が変わった。巨漢は照明の下で野性的な威厳を放っていた。彼は自らの荒々しい力で弦を引いたが、その肩甲骨は、あの寺の合宿が教えた洗練さをもって重みを分散させていた。
(轟音を聞け)ミナトは奥歯を噛み締めた。
離れ!
ドンッ!! アルミの矢が万代の紙をぶち抜いた衝撃音は、まるで大砲の轟音のように響き渡り、観客席の伝統校の連中の士気を粉砕した。四射中三的中という猛烈な一射。布陣のへそが、その野生の執着で戦線を繋ぎ止めたのだ。
正式な技術的切り札の席にユウセイが付いた。彼は静かな足取りで、貴族的な冷徹さをまとって一步前に出た。連盟の待機席ではソラ・ハチマキがさらに身体を前に傾け、神童の完璧な洗練を目にしてその瞳を輝かせていた。ユウセイは純粋な誇り(プライド)に満ちた風格で黒い竹弓を引き絞った。会において、彼は気高き静寂をまとう氷の彫刻だった。
離れ。
ツルネ――ッ!! 水晶のように澄み渡った、鋭利な一音が体育館全体の息を呑ませた。
ドッ!! ドッ!! ドッ!! ドッ!! 四本の矢すべてが黒い的の中心の正中を完璧に貫いた。神童の帰還は、外科医のような洗練さをもって完全に証明された。
デジタル掲示板が激しく明滅した。累積十四的中。残るは、この大会の最後の二射。部の生存を懸けたこれまでの旅路、新入生たちの血の汗、そして道場の死守は、すべて大落の最後の二本に委ねられた。
「大落、射位へ」
係員のコマンドが厳かに響いた。
トウジは一步前に出た。緑のカーペットは彼の素足の下で燃え盛っているかのようで、畳と汗の匂いはかつてないほどに濃くなっていた。本戦の射場を包み込んだ沈黙は、窒息しそうなほどに重かった。彼は足踏みの姿勢に入り、己の肉体の根が、体育館の使い込まれた床板へと定着していくのを感じていた。
彼は使い込まれた和弓を掲げた。打起し。
引分けの中で弦を引き抱え始めたとき、早気という名の残虐で冷酷な支配者が、全精力を懸けて精神 of 壁を叩き割ってきた。息苦しい熱波がトウジの首筋を駆け上がる。臨床的焦燥が彼の神経系に引き金を引いた。右手の指先が激しく脈打ち、本来のタイミングより前に弦を放せと絶叫する。二十八メートル先の的が、彼の瞳の前で歪み、縮小していくように見えた。
(今すぐ離せ! 時間はもうない! 準決勝のようにまた失敗するぞ! 離せ!)――脳内の声が暴力的に叫び、彼の腱のコントロールを乗っ取ろうとする。
だが、トウジはもう、あの寂れた道場で一人きりで引いていた射手ではなかった。
矢の側面を頬のすぐ近くへと引き寄せたとき、彼はその弓の本物の重みを感じていた。彼が保持しているのは、ただのグラスファイバーと古い木材ではない。彼はイツキの姿勢を、ダイコの論理を、ミナトの力を、そしてユウセイの尊厳を繋ぎ止めているのだ。最初の四本の弦が、それぞれの職務を全うした。スコアは生きている。
トウジは会に達した。
焦燥の圧倒的な重圧に筋肉は目に見えて震えていたが、彼は呼吸の重みを完全に下へと落とし、自重のすべてを踵へと据えた。彼は自らの執着だけで精神をロックした。臨床的な引き金に屈することを、彼は断固として拒絶した。彼は己の脳とミリ単位の戦争を繰り広げ、胸のラインを拡張させながら、頭の中の悪魔を沈黙させるほどの圧倒的な主将の威厳を放ってみせた。
三秒。四秒。五秒。
トウジは肉体と精神の限界を超えてその張力を維持し、主将としての純粋な姿勢と意志の力だけでその構造を成熟させていった。
六秒目。矢が、自ら飛び立つ決意をした。
離れ。
弦の解放は、完璧な清冽さそのものだった。
ツルネ――ッ!!!
メイン射場の空気を真っ直ぐに切り裂いたその響きは、歪んだ音ではなかった。それは神聖な、純粋で、鋭く共鳴する最高の一音となって体育館全体に鳴り響き、観客席のソラ・ハチマキの心臓を激しく跳ね上げさせた。矢は二十八メートルの空間を、目に見えない完璧な直線となって突き進んだ。
ドッ!!!
アルミの矢は、万代に据えられた紙の的の完全なる中心をぶち抜いた。
デジタル掲示板は瞬時に「十六」の数字へと変わり、黄金色の光を放って明滅した。地方大会総合三位。表彰台は、ついに幽霊部活のものとなったのだ。
トウジは最終姿勢の残心のまま微動だにしなかった。左腕を伸ばしたまま、眩しい照明の下で彼の呼吸の白い煙がゆっくりと立ち上る。彼は極めてゆっくりと弓を下ろし、手の中の革の握り皮を見つめ、早気との戦争はこれからも続くとしても、チームの支えによってついに流れを手懐ける方法を学んだのだと、深く実感していた。
観客席から圧倒的な拍手と驚愕の叫びが沸き起こった。イツキとミナトが制御不能な笑みを浮かべて緑のカーペットへと雪崩れ込み、主将の背中に飛びついた。ダイコは感情で白く曇った眼鏡を拭おうとしており、ユウセイは誰よりも傲慢で、誰よりも誇り高い不敵な笑みをその口元に浮かべていた。
彼らは、純粋な姿勢をもって勝利を掴み取ったのだ。
(第十七章 終わり)
第17章をお読みいただきありがとうございました!万代の的に突き刺さるトウジの最後の一射、そしてチーム全員で掴み取った総合三位の栄光。
この後すぐ、夜19:30には最新話となる第18章「道場を吹き抜ける風」が公開されます。五人の進む未来の地平線をぜひ見届けてください!
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