第十二章:第一回戦:イツキの失射
毎日3話公開の3日目、第12章スタートです!ついに始まった第一回戦。しかし、大前を務めるイツキを襲ったのは、あまりに巨大な公式大会の重圧でした――。
総合体育館のスピーカーから流れるアナウンスが、まるで合戦の合図のように響き渡った。射手たちのエリアを覆う緑のカーペットは低い仕切りで囲まれ、その向こうの満員の観客席は、まるで鋭い瞳でできた壁のようにそびえ立っていた。人の熱気と新しい畳の強烈な匂いが、空気を窒息しそうなほどに凝縮させている。
第四射線。そこに、ついにトウジたちの弓道部が公式の立ち順のまま一列に並んでいた。
彼らの左側、メインの第一射線では、前年度準優勝の伝統校チームが氷のように冷徹な安定感を放っている。連盟の待機席では、ソラ・ハチマキが黒い弓を膝の上に立てて腰を下ろし、その鋭い眼差しでこちらをじっと観察していた。
最初の立ち順(立)では、各射手に四本の矢を放つ権利が与えられている。最初の射手たちが一步前に踏み出したとき、体育館を包み込んだ静寂は絶対的なものだった。
「大前、射位へ」
線の係員が厳かにコマンドを下した。
イツキが一步前に出た。彼の弓道着は完璧に整えられており、いつもの不敵な笑みを維持しようとしていたが、こめかみからは冷や汗が静かに流れ落ちていた。足踏み(あしぶみ)の姿勢に入った瞬間、彼はこの舞台の本当の巨大さを思い知らされた。学校のあの寂れた部室でも、山の静かな境内でもない。何百人もの人間が、自分を見つめている。高い窓から吹き込む風の音が、まるで生きた催促のように聞こえた。
彼は弓を掲げた。打起し。
両手がわずかに震えた。第六章で自分自身の手で巻き付けたあの革の握り皮が、冷たく感じられた。
引分け(ひきわけ)。彼は弦を引き絞った。しかし、稽古弓の張力はいつも以上にずっしりと重くのしかかった。彼の精神が、流れ(フロー)の外側へと漂い始める。凍結された予算、職員室からの重圧、部を廃部に追い込んだ戦犯になるかもしれないという、底知れない恐怖。
離れ。
弦が不揃いに弾けた。安定を失った矢は軌道を外し、三十六センチメートルの紙の的を完全に逸れて、後方の安土へと鈍い音を立てて突き刺さった。
失射。
観客席からざわめきが起こった。対戦相手の伝統校は微動だにしなかった。イツキは唾を飲み込み、顔を恥辱で真っ赤に染めた。彼は第二射ですぐに立て直そうとしたが、焦りのせいでリズムはすでに完全に破壊されていた。二の矢、彼は引き絞る時間が成熟する前に、弦を放してしまった。
またしても、失射。
デビュー戦の初っ端から二本の矢を無駄にした。他の者が引く前に、チームの士気は完全に崩壊する危機に瀕していた。トウジが構築したあの流れが、音を立てて分解されようとしていた。
イツキは荒い息を吐きながら、瞳を床の木目に落とし、待機姿勢へと後退した。
「二的、射位へ」
係員のアナウンスが響いた。
ダイコが外科医のような冷徹さで一步前に出た。彼は人差し指で眼鏡の位置を直すと、横目でイツキを一瞥した。パニックに陥る代わりに、ダイコの脳内パネルは純粋な幾何学論理でパチパチと点滅を始めていた。
「熱雑音および空間的焦燥を検知」ダイコは自身の足の裏を床に据えながら、低く呟いた。「システムを安定させるため、数学的定数をこの流れに導入する」
ダイコは弓を掲げた。その動作は、完璧な精密さのアルゴリズムそのものだった。彼は観客席のざわめきなど一切無視していた。彼にとって、この体育館はただの二次元のデカルト座標系に過ぎなかった。彼は風の角度を計算し、正確に二度、左へと補正をかけた。
離れ。
ツルネ――。クリアで乾いた弦音。矢は二十八メートルの空間を真っ直ぐに切り裂いた。
ドッ!! 的の中心。
「三的、射位へ」
ミナトが、畳を震わせるほどの重い足取りで射線に入った。彼はイツキの失策に対して猛烈に頭に血を昇らせていたが、あの寺の合宿が、その野獣のような衝動を制御する方法を彼に教えていた。彼は軽蔑の笑みを浮かべる対戦相手を睨み据え、自らの規格外の純粋な腕力で和弓を引き絞った。
(こっちを見ろ、この間抜けどもが)ミナトは奥歯を噛み締めた。
彼は会の状態で丸四秒の間それを保持し、背中に野性的なエネルギーを限界まで凝縮させていった。
離れ!
その一射は暴力的だった。アルミの矢が紙をぶち抜いた凄まじい衝撃音が体育館全体に轟き、得点掲示板の枠が微かに振動した。
ドンッ!! 的中。
ダイコとミナトの二人は、崩壊の瀬戸際で完璧なリカバリー(修復)という奇跡を成し遂げていた。確実に的中を重ね、全体のスコア上での差を最小限に抑えることで、この幽霊部活を戦線に踏みとどまらせたのだ。
イツキはゆっくりと頭を上げた。前を歩く仲間の背中を見つめる。彼の不敵な笑みはまだ戻っていなかったが、ダイコとミナトが放った伝染性の熱量が、彼の士気を再び高みへと押し上げていた。ミスは起きた。だが、チームの流れはまだ断裂していない。彼らはまだ、戦いの中にいた。
トウジは射線を見つめ、新入生たちに対する誇りで胸が張り裂けそうになるのを感じていた。待機席では、ソラ・ハチマキが椅子の上の姿勢を正し、不敵に微笑んでいた。幽霊部活の気概は健在であり、第一回戦の幕は、まだ上がったばかりだった。
(第十二章 終わり)
第12章をお読みいただきありがとうございました!イツキの失敗をデータとパワーで即座に埋める、ダイコとミナトのリカバリーが最高に格好いい一戦でした。
この後、本日のお昼12:15には、かつてユウセイが去った因縁の最強エリート校・最可中学との激突が描かれる第13章「準々決勝:神童の帰還」が公開されます!
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