遺書 その⑩
奴隷商人と傭兵をロープで拘束した後、ケイトは家から持ってきた金貨で、船長を買収した。
船長に指示して、まず向かったのは近くにある港だ。そこで奴隷商人と傭兵には、船を降りてもらった。
すぐに出航して、今度は遠い国を目指した。遠い国まで逃げないと、サイパス村の村人が、追いかけてくる危険性があったからだ。
故郷から遥か遠い異国の地に着いたケイトは、使われていない大きなボロ屋敷を安く買いとった。そしてその屋敷で、クラスメートと共に新たな生活を始めた。
長い間使われていなかった屋敷は、ひどく汚れていた。掃除に何日も費やしたのに、掃除の終わる気配は全然ない。今日も朝から晩まで掃除に精をだしたケイトは、自分の部屋で休んでいた。
机に頬杖をつき、心地よい疲労の中で微睡んでいると、なんの前触れもなく、机の上のノートが燃えた。
ケイトは慌てて近くにあった雑巾をとり、雑巾でノートを叩く。燃えていたのはノートの一部分だけだったので、すぐに火は消えた。
ホッとしたのも束の間、今度はノートが光の粒へと変わる。光は淡く薄くなり、消えてしまった。
ノートのあった場所を触ってみるが、そこにはなにもない。ノートは消滅していた。
なぜノートは消滅したのか? ケイトは記憶を辿り、ノートに書かれていたルールを思いだす。
〝ルール2。ノートの持ち主が死ぬと、ノートは消滅する。〟
先ほどノートが燃えたことから推察するに、ケイトの考えた策が上手くいったのだろう。もう一人のノートの持ち主が死んだから、ノートは消滅したのだ。
ケイトは黙とうを捧げる。もう一人のノートの持ち主であるアイスは、ケイトが殺したも同然だった。
ケイトたちの子孫を、アイスは爆弾で殺そうとしていた。サイパス村で暮らしていたケイトは、サイコパスな人間を説得することが、不可能だと知っている。アイスの凶行を止めるためには、アイスを殺すしかなかった。
爆弾の作り方を、アイスはノートにメモしていた。そのメモがアイスを殺す方法のヒントとなった。
ケイトは爆弾の作り方について調べた。それからアイスの筆跡を真似て、加えてはならない材料を、ノートに書きこんだ。その材料を爆弾の製造過程で加えれば、化学反応を起こして、爆弾は爆発する。その爆発に巻きこまれて、アイスは死んだのだ。
ケイトはランプを消すと、ベッドに入った。疲労がすぐに、ケイトを眠りの世界へ連れていく。明るい未来が、ケイトを待っていた。
交換日記の最初の話であるラブレターを書こうとして、上手く書けずに悩んでいた。そのときに、別のアイデアが生まれた。そうして誕生したのが、この遺書だ。
タイトルの遺書はちょっと不気味だが、パッと思いついたのが、このタイトルだった。
これが私の遺書とならないように、次回作を発表できるように願って、ここでお別れとしたい。
それでは、また次の作品でお会いしましょう! さようなら!




