表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/193

紫苑、その結末を

 今回、短いですがキリをよくするために切っています。ご了承ください。

「ま"ち"な"さ"い"っ"っ"っ"っ"!!!!」

「ひぃっ」

 

 俺が滑り込むようにマスコミたちの足の下を潜り抜けて逃げ出すことに成功したのも束の間、その人垣を割いて包丁女が、おおよそ人間の声とは思えない雄叫びを出しながら追いかけてきた!

 まぁ、流石に包丁振り回してるようなのを体を張って止めるようなのはいないわな!

 

「ま"て"え"ぇ"ぇ"ぇ"え"ぇ"っ"っ"!!」

 

 口から泡を吹いて追いかけてくるその女は、思ったより足が速かった。じょ、冗談じゃない!俺が何をしたっていうんだ!?そこまで恨まれる覚えはないぞ!

 男女の差はあれど、体力不足の俺ではいずれ追いつかれるのは明白だった。このままでは、まずい。

 しかし、無我夢中で逃げていたつもりだったが、体はしっかりと安全な場所を求めていたようだ。

 

「紫苑!」

 

 曲がり角を曲がった先から走ってやってくるのは、照弘。よくもまぁ、ナイスタイミングだな、おい!

 

「照ひうべ()っ」

「紫苑!?」

 

 安心してしまったからか、カーブを曲がり切れなかったからか、足がもつれてしまった俺は、みっともないことにここで転んでしまったのだ。

 やばい。

 体を起こして振り返れば、もうそこに。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

「なん……だ、お前っ!!」

 

 俺が倒れたことで、追いかけていた女が飛びかかる様に襲い掛かってきた。

 曲がり角から飛び出してきた()()に驚いた照弘。しかし、それで体が止まることはなく、流れるような動きで回し蹴りを、俺を(かば)うように繰り出して、その女のどてっ腹に叩き込んだ。


「ぎゅえっ」

 

 飛びかかった勢いもあってか、カエルを潰したような声を上げて、その女は吹き飛んだ。

 

「はぁ、はぁ……大丈夫か、紫苑」

「ぜっ、ぜひゅっ……を"っ、おう……なん、とか」

 

 久々の全力疾走。しかも準備運動もなくいきなりだ。落ち着いたせいか、急激に痛むわき腹を押さえながらも、息も絶え絶えに照弘に返事する、俺。

 

「なんだ、今の……マスコミとかじゃ、ないよな」

「おっ、俺も、分かんねぇ……急に、襲ってきて……そうだ、親父……刺されて……!」

「落ち着け!まずは、救急車を」

「そ、そうか」


 俺は照弘に言われるまま、懐からスマホを取り出して、顔を上げて、照弘の後ろ。

「照弘!!」

「――ッッ!!」

 

 照弘の後ろには、包丁を逆手に振り上げた、あの女。その刃物の行く先は、間違いなく。

 しかし照弘は、俺の声と表情で察したか、上半身だけを回転させて――。

 

「ぐっ……!」

「あ"あ"あ"き"き"き"き"き"き"ぃ"っ"!!!!!」

「照弘!」

 

 その左腕を盾にして身を守った。

 俺の目に映るのは、刃の中頃まで貫通して、だくだくと血を流す照弘の左腕と、痛みでか苦しそうに声を上げて、冷や汗を垂らす照裕の顔。

 そして、瞳孔を開いて俺を――俺たちを凝視する謎の女の敵意が(あふ)れた表情だ。

 その瞬間。

 俺は、照弘が、殺されてしまう。そう思った。

 俺にはその女が人間には思えず、怪異――妖怪か化け物の類にしか見えなかった。だから、照弘が、このままでは死んでしまうと思った。

 短期間とは言え全力疾走した俺の体は、もはやまともに動くことはできない。しかし、それでも最後の一欠けの力を振り絞って、俺は動いた。

 

「――っざけんな、クソアマぁ!」

 

 恐怖に固まる自分の体を奮い立たせるように吠える。立ち上がるのももどかしく、そのまま地面を蹴り、照弘を抑え込んでいる女に体当たりを敢行(かんこう)した。

 女は両手を使って押し込むように包丁を持ち、照弘は振り下ろされた包丁を受け止めたので腕を上げている。

 狙ったのが腹だったのは、タックルがどうとか、足が動かなかったからとか、色々理由があったのかもしれないけど、俺は一つだけしか思いつかなかった。がら空きだったのが、腹だった。それだけだった。

 

「かひゅっ」

 

 俺のタックルで俺ごと(もつ)れて、俺と女は転がっていった。

 でも、体当たりの衝撃にしては、先ほどの照弘キックとは、全く異なる音がした。

 俺と女は吹き飛び、転がって体が止まるときには、俺は彼女に馬乗りになるような体勢になった。

 俺は、身動きが取れなかった。

 視界が、赤かった。


 ――俺の体の下で、女は首から大量に出血をしていたのだ。


 ただ、見開いた眼だけを俺に向けて。

 息ができないのか、口をぱくつかせ、何かを言っている気がするがそれは音にならず。かひゅっ、かひゅっ、と空気が漏れるだけ。

 ただ、恨みのこもった視線だけが俺に向けられていた。


 ―― オマエ ノ セイ ダ


 そう言われた気が、した。

 ご拝読・ブックマーク・評価・誤字報告にご感想、いつもありがとうございます。

 昔、いきなり動いてわき腹が痛くなるのって、急な運動でエネルギーが足りなくて、体を急速に分解しているからとか聞いたんですけど本当なんですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ