第0話 神の光に導かれて
山奥にある人気の少ない世門町にある青年が訪れた。男の名は播磨銀次。かつて傭兵として育て上げられた銀次は長身に加え鍛え上げられたたくましい身体を持ちとても歴史研究家には見えなかった。
そんな銀次がこの町を訪れたのは黒都神社を調査するためであった。なんでも、そこには太陽の光を浴びると赤く光る宝石があるそうで研究者たちの間ではちょっとした有名地になっている。
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神社に着き本殿へ行くとそこには灰色の髪の青年がいた。せっかくなので声をかけた。
「やぁ、こんにちは!僕は歴史研究家の播磨銀次と言うものですけどここの祭壇を見てもいいかい?」
「俺は灰崎徹です、ここの関係者じゃないですよ。でもここはもう誰も使っていないんで好きに見て大丈夫だと思いますよ」
「そーだったのか、特に用もなさそうな感じでここに居たからてっきりここの人かと」
「違いますよ、ただこの場所が好きなだけです。他の世界と切り離された1人の世界って感じがして」
「この神社は別世界と繋がっているという都市伝説もあるしね、まぁ少しあの祭壇を拝見させてもらうとするよ」
そう言って銀次は階段を上がり祭壇の前へに立った。祭壇はかなり古びていて誰も手入れをしていないせいでだいぶ埃をかぶって汚れていた。しかし、それを差し引いても飾られているものは良い腕を持った人によって作られていると思われるものばかりであった。中でも1番上の段で太陽の光を浴びて赤く光る宝玉は、銀次を魅了させた。
「播磨さんもやっぱり『賢者の宝玉』が気になりますか?」
「この赤い宝石は『賢者の宝玉』と言うのかい?」
「そうだよ、この宝石には色々な伝説があるんですよ。例えば、はるか昔に雨がなかなか止まずにいろんな被害が出た時に太陽の神様がこれを持って来て雨雲を追い払っただとか、紅い獣が町を襲った時に通りすがりの旅人がこの宝石に封印しただとか、まぁどれもありえない話だとは思うんですけどね」
「そんなたくさんの伝説がこの宝玉には秘められているのか、思いの外この地には面白い歴史がありそうだな。」
銀次はもっと詳しく見るために『賢者の宝玉』を取ろうとした。
「その宝石は見かけによらずかなりの重さがあるから持ち上がらないと思いますよ」
しかし、銀次はいとも簡単に宝玉を持ち上げた。
「その点に関しては問題なかったようだね。これでも昔は傭兵とし訓練してしたからね、ほんとあの時は毎日地獄のような日々だったよ」
銀次は色々な角度から見たあと持参した器具を使って詳しく調べた。重さを測ったところなんと50キロもあった。
「この大きさでここまでの重さがあるなんてとんでもない密度だな、一体何でできてるんだか」
「俺は50キロもある宝玉を片手で軽々と持ち上げてた人間も十分すごいと思いますよ」
そう言うとそれもそうだと2人で笑った。
一通り調べ終え、宝玉を元の位置に戻そうとしたその時、宝玉が西日を受け奥の壁が赤い光を受けた。するとそのにはさっきまでは見えなかった文字が映し出された。どうやら赤い光を受けることで文字が浮かび上がる仕組みになっていたらしい。
「徹くん、こっちに来てみろ。文字が浮かび上がったぞ」
「ほんとだ!こんな仕組みがあったなんて今までずっと気づかなかった」
2人は映し出された文字を声に出して読んだ。
「「かつて世界は『創造主』と『破壊者』の2種類の人間がいた。彼らは互いの存在を認めず、その結果多くの争いが起こった。多くの人間が殺され、多くの生物も殺された。大地は炎に支配され、海は血で赤く染まった。挙げ句の果てに空に終わりを告げる『ラッパを吹く天使』が現れ世界が終わろうとした時、創造と破壊どちらも持つ1人の人間が一夜にして戦争を止めた。そして争いが起きぬように世界を2つに分け隔てた。しかし、力を使いすぎた人間は完全には分かられなかった。人間は自分の変わりに世界を完全に分けることのできる人間を見つけるため世界の神となった。神の名は『エル・オーラン』。そしてこの場所は壊すことも創ることもできぬ原点。世界の果てにして始まりの地である。」」
読み終えたと同時に『賢者の宝玉』がより一層赤い光が増し2人を包んだ。そして2人はこの世から消えた。
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どうやら銀次はさっきの光を受けて気を失っていたらしい。そして視界がだんだんとはっきりしてきて思わず息を飲む。それもそのはず。周りを見渡すと見たこともない街並みと人々が目に映ったのだから。しかもよく見ると、人々は火や水を自由自在に操っていたり空を飛んでいたりなどまるで魔法使いのようなことをしていた。
「どうやら僕は異世界に来てしまったらしいな」




