第94話 恥ずかしながら十三歳になりました
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第94話 恥ずかしながら十三歳になりました
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長い冬が終わり、十三歳の春がやってきた。
この冬で俺の魔力干渉はかなりの成長を遂げた。魔力を五メートルほど伸ばすことが可能になったのだ。
この魔力干渉は面白いもので、なんと物体を動かすことができたのである!
まだ五メートルと範囲は短いが、三十キログラム程度なら動かすことができるようになった。
これからも訓練は続けるから、いずれは手足のように自由自在に動かせるようになることだろう。(強く願う)
俺は関知してないが、騎士たちが行っていたアラム家とアシャール家の取り込みは、順調のようだ。
シュラード討伐軍に参加した際に、当主ヘンドリック・アラムと騎士を全員失ったアラム家は、五男で庶子のヒルク・アラムが当主になった。皆殺しとか酷い状態だな。(他人事)
長男と三男は前当主(父)と共に討死しており、次男はすでに病死している。ヒルクと同じ庶子の四男は、病弱のためということで、五男のヒルクが当主になった。
ここまでくるのには色々すったもんだがあり、庶子のヒルクを当主にするなら、ヘンドリックの弟の子を当主にという家臣もいた。
ダルバーヌのように内戦にならなかったのは、ヒルクが早々にソルバーン家に庇護を求めたからだろう。
詭道のグラードンとテアス・ガルドの二人が兵五百を率いてアラム領に入り、反ヒルク派を押さえ込んだのだ。
電光石火の動きだったため、反ヒルク派はどうすることもできず、アラム家の騎士たちは人質をジャバス城下に住まわせることになった。
トルク様は人質はいらない。そういうのはアラム家の中で話をつけろと言ったが、一番穏便に済ませるのがソルバーン家に人質を出すことだと二人に説得されて受け入れた。
アラム家を傘下に収めたことで、ジール州でソルバーンでない勢力はアシャール家のみになった。
そのアシャール家のほうは、どうするのかと家内で意見が割れている。そこら辺は詭道のグラードンが中心になって調略を進めている。
今のところ、詭道のグラードンはおかしな動きをしていない。もしかしたら監視されていると気づいているのかもしれない。これからも監視は続けるけどな。
ソルバーン家は急速に領地を拡大させたことで、人材不足の感は否めない。毘沙門党員《うちの子たち》が騎士家に養嗣子に入っても、すぐに当主としての力を発揮できるわけではない。
そこで中央集権化を押し進め、人材を無駄なく配置させるようにしている。
自分の執務室で、書類を処理しながら読み取ったものから状況を把握していく。
その部屋の片隅では、ヴァイスと戯れるネイルンの姿がある。ネイルンは俺が登城すると、いつも部屋にやってきてヴァイスと遊んでいく。
俺が城にいる間は、ヴァイスもネイルンのそばを離れない。モフモフと子供が戯れる姿は微笑ましいよ。
「ノイス兄さん」
ネイルンは俺を兄さんと呼ぶ。叔父なんだが、年が近いことからそう呼んでくれるのだ。
「なんだい?」
「お外で遊んできていい?」
「ヴァイスと一緒ならいいよ」
「うん! ヴァイス、いくよ!」
「ワウン!」
ネイルンの後ろをテテテッとついていくヴァイスの尻尾は揺れている。お前は犬かよ、とツッコみそうになった。
ネイルンと入れ違いに、スライミン姫が入ってきた。今年で十四歳なのでまだ中学生の年齢だが、ドンドン大人っぽくなっていく。
「ネイルン様はヴァイスと遊びにいかれたのですか?」
「うん。ヴァイスがいれば、何かあっても安心だからね」
悪魔は俺の魔力感知に引っかかることなく近くまで入り込める。どこにいても気を許していいわけではないのだ。
城内だからといって、シュラーマ姉さんやネイルンを一人っきりにはしない。ジャバス城内にホッタンの第二独立部隊を住まわせ、トルク様たちを護衛している。姉さんにも、姪のテリーヌにも、うちの子がついている。
ホッタンは脳筋だが、副隊長のグルダがそこら辺はカバーしてくれる。シューとジラルディンも成長しているので、何かあっても俺が駆けつけるまでネイルンを守ってくれることだろう。
この春に、養父は帝都に向かった。向こうで色々やることがあるためだ。バカ殿(大将軍)が悪さをしないとも限らないので、ゴドランさんと兵五百を率いて帝都に入っている。
目的としては、トルク様やその家臣の騎士たちに職位・役職をもらうのが一つ。
役職では、トルク様にはジール州の州督司を得るのが、一番大事だ。
州督司というのは職位こそ八位と低いものの、各州に置かれる州の自治を司る役職だ。つまり、その州のトップだよ、という皇帝からのお墨付きだな。
あと、俺が家を継ぐ最終的な手続きがある。俺も今年で十三歳だから、十五歳になった時に速やかに家を継承するための準備と言えばいいか。
さらに、人材確保も目的の一つだ。騎士というのは、脳筋が多い。戦場で活躍できればいいという考えのヤツが結構多いのだ。そういった脳筋に政治はできない。だから、貴族で家を継げない人で、うちの文官をしてもいいという人物を連れ帰ってもらうように頼んでいる。
養父がいないルイノース城は、従者から騎士に昇格したサルダーンが城代として守ってくれている。
今日はスライミン姫とクラリッサを連れて領内を見回っている。まあ、視察にかこつけたデートだな。
俺だってたまには二人とゆっくりしたいじゃないか。
ここジャバス城には知る人ぞ知る良港がある。そう、ソト港だ。この地は冬になると西と北側から強い風が吹く。残念ながら吹き荒れるというくらい風が吹くので、冬は海に出る船はいない。
しかし、アルタンさんが大陸から大型戦船・ラベルダと中型戦船・ハッペンを持ち帰ってくれた。おかげで冬も海に出ることができるようになった。といっても、今は春だけど。
「うわー、おっきーねー」
クラリッサが目をキラキラさせて見上げているのは、大型戦船・ラベルダだ。
これまでソト港に入っていた船は、大きいものでも中型交易船のラジームで、巨大な戦船は俺を含めて皆が初めて見る。
中型戦船・ハッペンでさえ、中型交易船・ラジームよりもかなり大きいのだ。それが大型戦船・ラベルダになると、本当に見上げるほどの巨大さだ。
「まるで山ですね」
「ああ、本当に山だな」
俺の右にスライミン姫、左にクラリッサ。二人と並んで大型戦船・ラベルダを見上げている。どれだけ見ていても飽きないな。
「これはノイス殿」
声をかけてきたのは、クスリム・アッジだ。
トルク様と相談し、海軍を任せることにしたのが、彼クスリム・アッジである。
元々ダルバーヌ家の海賊の一隊を任されていたので、海には慣れている。とはいえ、これだけの大型戦船を操るのはさすがにすぐにはいかない。数カ月から一年ほどかけて操船に慣れてもらうことになっている。
「船の中を見ることは可能ですか?」
「散らかっていてもよければ、可能ですよ」
三人で船へと上がる。デカいな、これ。大砲はない。大陸ではまだ開発されていないのか。
「アハハハ、ひろーい!」
「クラリッサ、走り回ると転ぶぞ」
「大丈夫~♪」
クラリッサは無邪気で無垢な少女だな。戦場では氷姫と言われ恐れられているけど。
「風が気持ちいいですね」
スライミン姫のピンクゴールドの髪が激しく揺れる。船上の美少女だな。フフフ。




