第85話 人、それを悪魔というのだが、それよりもマルダが……
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第85話 人、それを悪魔というのだが、それよりもマルダが……
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空を飛ぶ何か。それは異形の姿の何かだ。羽があり、腕は長く足は太く短い。胴体に毛はないが、足にはある。顔はゾウ、ヘビ、イヌ、ネコ、ウシなど色々な個体がいる。
「悪魔だな」
「「「えっ!?」」」
お前ら、何を驚いているんだよ? 勉強不足だぞ。
「シュラードの家に、文献があったぞ。かつて世界に混沌をもたらした存在がいたそうだ。その存在が率いていたのが、悪魔の軍団だ。ちゃんと本を読めと言っているだろ、お前たち」
シュラードの者以外に読むことが許されてない書物もあるが、その文献は毘沙門党員なら誰でも読むことが許されている。
勉強不足はこういうときに分かるんだぞ。
「あ、悪魔だとして、空を飛んでいるから、どうしようも―――」
「何を言っているんだ?」
無限収納魔法で強弓を取り出す。三人には機械式弓を渡す。
「射落とせばいいんだよ。外したら、訓練追加な」
「「「えっ!?」」」
「何を驚く? 毎日訓練しているんだろ? いざという時に使えない武術では意味がないだろ?」
「「「ソウデスネ」」」
「よし、落とせ!」
「「「応!」」」
三人が矢を番え狙いを定める。
うーん。まだ姿勢が悪いな。スライミン姫にしっかり指導してもらわないといけないようだ。
「シッ!」
「フッ」
「ハッ!」
マルダとハックは外し、グルダは命中。ただ、命中させたグルダの矢は、足に当たっただけなので、悪魔は落ちてこない。
「何をボケッとしているか!? 外そうが、当たろうが、次を射る準備に入らんか!」
「「「はい!」」」
まったく、戦場ではその数秒が命取りになるというのに、この三人はまだ甘い。
グルダは頭の回転は早いし、指揮能力も高い。あとはこの甘さが抜ければいいんだがな。
マルダとハックはもっと鍛えなければいけない。帰ったら、鍛え直そう。
「おらっ! 射て射て射て射て射まくらんか!」
「「「はいぃぃぃっ!」」」
犬も歩けば棒に当たる。十射もすれば、二、三回は当たるだろ。
「気を抜くな。死ぬ気で射ろ!」
「「「はい!」」」
三人がいい感じに矢をばら撒いてくれたおかげで、悪魔の注意がこっちへ向いた。
俺もやろうかね。今回は普通の矢を使っているが、一度に三本を番えた。
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
射る!
バシュンッバシュンッバシュンッと悪魔の眉間を貫く三本の矢は、命中と同時に爆ぜた。爆破の魔法を使ったわけでも、火薬を詰めていたわけでもない。強弓で射た矢が命中するとこうなるのだ。
眉間を射られた悪魔三体は、地面へと落下した。さすがにまだ生きているが、かなりのダメージが入っているのでドルド・ヘインに任せよう。
毘沙門天様の真言を唱えると、どんなことでもできそうな気がする。こういうのは、できると思い込んでやるものだよ!
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
真言を唱えつつさらに三本の矢を番え、射る。
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
真言を唱えつつさらに三本の矢を番え、射る。
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
「オン・ベイシラマンダヤ・ソワカ」
真言を唱えつつさらに三本の矢を番え、射る。
記憶を取り戻した際にこの真言も思い出した。
「お前ら、ボケッとするな! さっさと射ろ!」
「いや、ボスの矢が飛んでるヤツを全部落としたんだけど?」
「悪魔は見えるヤツだけだと思うなよ!」
「「「えっ!?」」」
「あいつらは闇に紛れて忍び寄るんだよ」
矢を射ると、闇に紛れていた三体の眉間を射抜く。
「それはボスにしかできないだろ!?」
「兄さん、それは無理だよ!?」
「それができたら、誰も苦労しないって!?」
三人が叫ぶ。
「お前ら、やってもいないのに、できないと言うな! 見るんじゃない、感じるんだ!」
無茶なことを言っている自覚はある。だが、それで皆の力が上がるなら、無茶振りでもなんでもするさ。
「「「そんなーっ!?」」」
「やれ!」
「「「はいぃぃぃっ!」」」
殺気を込めた声で、三人を脅すと涙目になって必死に悪魔を感じようとしている。
それでいい。努力することが大事なのだ。その結果、感じることができなくても俺は努力したことを評価するからな。
パワハラだって? 上等だ! 甘いヤツは早死にするんだ。生き抜けるように甘さを取り除いてやるのが、俺の仕事だ。
ドルド・ヘインたちが戦っている悪魔にも、矢を射る。ドルド・ヘインの顔を立てるために、こっちは支援に徹する。今のところ、ドルド・ヘインならなんとかなる強さの悪魔しかいない。
「あ、分かった!」
「ん?」
マルダが叫んだ。何かと思い、振り返ると、矢を番えていた。
放たれた矢は夜の闇を貫くように見えなかった悪魔に当たった。
「兄さん、感じたよ! 僕、感じられた!」
「お、おぅ……。さすがは我が弟だ……」
え、今の短時間で感じられたの!? お兄ちゃんビックリだよ!? でもさ、それをされると、お兄ちゃんの立場がないのですけど……。
ここは弟が立派になったと思って喜ぼう!
「グルダ。ここは任せるぞ」
「おう、任せておけ」
「マルダはグルダの指示に従ってくれ」
「うん。でも、兄さんはどこにいくの?」
「俺は城内に悪魔が入り込んだみたいだから、ぶっ飛ばしてくる」
「分かったよ、気をつけてね」
「おう。ハックはついてこい」
「了解!」
俺は踵を返して駆けた。




