第84話 正妻は関与しているのか、何が起っているのか?
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第84話 正妻は関与しているのか、何が起っているのか?
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加護に意識を向けると、俺が加護を与えた人の信仰心が伝わってくる。
現在の毘沙門党の構成員は三百人ほどに増えているが、その全員に俺の加護が与えられている。毎日魔力を使い切っていても、それぞれに信仰心の強さが違うのがよく分かったよ。
今まで加護のことを認識していなかったから感じなかったことが、認識した今は感じることができるようになった。
それは毘沙門天様への信仰心であり、俺への信仰心でもある。
古参の毘沙門党員のほうが信仰心は強い傾向にある。長く俺とつき合ってきた中で、信頼関係を築いているからだろう。
逆に最近加わった子供の中には、信仰心がほとんど感じられない子もいる。これはまだ世間や人間を信じられないのだと思う。
「ノイス兄さん。さっきからボーっとしているけど、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「もうネルタ城が見えてきたから、シャキッとしてね」
「おう、分かった」
マルダに注意されるとはな。成長したな、マルダ。お兄ちゃんは嬉しいぞ!
ネルタ城に入り、城主のドルド・ヘインにはすぐに遭えなかったが、パーカーの部屋にはすぐに通してもらえた。
「ボス。わざわざすみません」
「いいさ。で、敵に動きは?」
「ありません。役に立てず、すみません」
「十分に役立っているさ。それに、ティークという侍女の単独行動の可能性もあるからな」
パーカーの部屋で三時間ほど過ごしていると、ドルド・ヘインとの面会ができると呼ばれた。
「待たせてしまって申しわけない。城下の見回りをしていたものでね」
「いえいえ、いきなりきたのはこちらです。気にしないでください」
「さっそくだが、今日の訪問に理由についてうかがおうか」
「アルディア嬢の診察と、あとはパーカーとの婚礼が迫っていますので、一度パーカーを戻そうと思いまして」
「おおお、そうであったか! アルディアもしっかり回復したから、予定通り婚儀を挙げられるな!」
ドルド・ヘインは満面の笑みで膝を叩いて、同席するアルディア嬢を見た。彼女は恥ずかしそうに頬を染め、俯いた。初々しいね。
「ノイス殿、今日は歓迎の宴をしよう!」
「それは楽しみですね」
宴の準備の間、リリルダはアルディア嬢の診察をし、俺は客間に通された。
「ボス。ヘイン様に言わなくていいのか?」
椅子に背を預けたグルダが、頭の後ろで手を組んで俺を見ている。
タタニアの弟なだけあって、最近はかなり大きくなっている。そういえばもう十六か、グルダも騎士に引き上げるいい時期かもしれないな。
「言うが、あの場では言わないほうがよかったと思うぞ」
「だけど、それならどこで言うんだ?」
「俺に任せておけ。それより見たか、正妻を」
「すっげー睨んでいたな、俺たちを」
「おっかなかったですね、あの人」
マルダも気づいていたか。たしかに、人を呪い殺せそうなくらい睨んでいたな、あのおばさん。
それに真っ黒な魔力を体にまとっていた。あれは絶対にヤバい。まるで以前一度だけ見たキツネの魔獣のような禍々しさだ。
「あのおばさん、嫌な感じがしたよ。兄さん」
「マルダは見えたのか?」
「見えた? ううん、僕はなんか気持ち悪かっただけだよ」
マルダは俺よりも魔力量が多いから、あの禍々しさに当てられてしまったようだ。
「多分だが、ティークという侍女はあのおばさんに命じられてやったんだろう。あくまでも予想だけどな」
歓迎会をしてくれると言うが、あのおばさんは要注意だ。そのことを皆に言い含め、俺たちは歓迎会に出た。
「ヘイン様。わざわざこのような場を設けてくださり、感謝します」
「何を仰るか。ノイス殿は当家よりはるかに格上のシュラード家の次期当主であるのに、ここまで足を運んでいただき、感謝しますぞ」
歓迎会という名の宴会は、和やかに始まった。
パーカーとアルディア嬢はいい感じで、二人の世界を皆に見せつけている。俺がいるからといって、気を抜くんじゃないよ。莫迦者が。
俺たちはまだ子供ということで酒は遠慮した。グルダが悲しそうに酒の瓶を見つめていたが、駄目だ。ここでは何があるか分からないのだから、酔っていては後れを取るかもしれないからな。
「ノイス殿ほどなら、酒くらいなんてことはないのであろう? 飲んでもよいのではないか?」
前世ではアルハラになり得そうな勧めを笑顔で躱す。
「これは養父上の言いつけです。ですから破るわけにはいかないのです」
嘘です~。
「カイン殿のか。ふーむ、仕方がないの。では、ノイス殿の分まで私が飲もう!」
自分が飲みたいだけじゃん!
俺だって酒は好きだよ! 飲みたいんだよ! だけどさ、俺が飲んだら他の子たちに示しがつかないから飲まない! (固い意志!)
そのまま宴会は終わると思ったんだが、そこで騒ぎが起こった。
城内から悲鳴が聞こえた。同時に違和感のある魔力が複数増えた。しかもまるでそこで生まれたかのように、いきなり魔力が現れたのだ。
まさか俺の魔力感知を掻い潜ってここまで近づかれたというのか? しかもそれは十や二十では利かない数だ。
「「「ば、化け物だーっ!?」」」
ドルド・ヘインが勢いよく立ち上がり、椅子が倒れる。
「太刀を持て!」
さすがは勇将と定評があるドルド・ヘインだ。判断が早い。
「ノイス殿らは、ここにいてくだされ」
「手伝います」
「客にそのようなことはさせられぬ」
「侵入者はかなり危険です。おそらくヘイン様以外では俺たちくらいしか相手ができません」
「む!? ……ノイス殿の判断を信じよう。すまぬが、助力を頼み申す」
ドルド・ヘインが頭を下げた。こういう判断が早いのも良将と言われる所以なんだろうな。
「承知しました。パーカーはアルディア嬢を命をかけて守れ」
「はい!」
「リリルダもここに残れ。最悪はあれを使って構わない」
「分かったわ」
「マルダ、グルダ、ハック。いくぞ」
「「「応!」」」




