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第29話 鉄に色々混ぜたら硬くなるよね

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 第29話 鉄に色々混ぜたら硬くなるよね

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 鼻歌を奏でながら、お玉を回す。

 昨年の秋に仕込んだ味噌と醤油がいい具合に出来たのだ。

 上手くいけば儲けものと思っていただけに、すっごく儲けた気分だ。

 そこで今日は味噌ちゃんこを作ろうと思って、野鳥の骨で出汁をとって白湯スープに味噌を加えてみた。

 味見をしたが、美味しいじゃないか。フフフ。


「なんかいい匂いだね」

「クラリッサか。味見してみるか」


 クラリッサは今日も可愛いね。


「うん」


 小皿に少しつけて渡す。


「美味しい!」


 そうだろ、そうだろ。フフフ。


「ノイスはお料理が上手だね」

「ちゃんこ鍋は分量さえ間違えなければ、誰でも美味しいものを作れるよ」


 うちは獲物の骨がたくさんあるから、出汁は骨が基本だ。

 野鳥、イノシシ、シカ、クマ、カモシカ、野ウサギなど色々な骨があるのでブレンドした出汁も美味しいんだよ。

 このブレンド出汁の配合比は門外不出にしている。


「よし、できた。クラリッサ、皆を呼んできてくれるかな」

「うん」


 パタパタ走っていくクラリッサ。

 まだ八歳の少女なのに、最近は少し色気が出てきた気がする。

 俺はロリコンじゃない……よな? 最近少し怪しくなってきた気がしないではない。





「父さん。俺にも鍛冶を教えてよ」

「あん? ノイスも鍛冶をしたいのか?」


 ニマニマしてどうした?


「俺も鍛冶師の息子だから、少しは齧っておこうかと思ってさ」

「ふん。そんな中途半端では大成せんぞ!」

「俺が大成しなくてもケルン兄さんがいるから、跡継ぎには困らないだろ」

「ちっ。口だけは達者だな。まあいい、ここに座れ」

「え、いいの!?」


 いきなり炉の前に座らせてくれるなんて、どうしたんだろうか?

 ケルン兄さんが炉の前に座ったのは修業を始めて結構してからだったよね?


 父さんはふいごを操作し、炉の熱量を上げる。

 なかなか熱いな。

 だが、俺には身体強化魔法がある。外皮を強化して熱に耐える。


「ほう、やるじゃないか。なら、こいつだ。俺の合図で槌を打て」

「分かった」


 赤く熱せられた鉄を金床に置くと、槌を打つ。

 そして俺に合図槌を打つように「ほい」と声を発した。


 トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。ジュワーッ。


「やるじゃねぇか、こんちくしょうめ」


 江戸っ子かよ!?

 手鼻をかむな!


 トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。トンカン。トンカン。トンカンカン。ジュワーッ。


「おう、お前は筋がいい。本気で鍛冶師を目指せよ」

「そう言ってもらえると嬉しいけど、俺は鍛冶師ではなくトルク様の従者だから」

「ちっ。ケルンもお前も名人になれるかもしれねぇってのによぉ」

「名人か~。俺には無理だよ~」

「やる前から諦めるんじゃねぇっ!」


 父さんは本気っぽいが、俺に鍛冶師は無理だ。

 どちらかというと、獣を狩る猟師のほうが俺の性格に合っている。


 それから俺は鍛冶をして過ごした。

 おかげで冬が終わる頃には、それなりに鍛冶ができる程度にはなった。


「おい、ノイス。本当に鍛冶師にならないのか?」

「俺の性格では、鍛冶師は無理だ。ケルン兄さん」


 物作りは好きだが、集中力が続かない。

 俺の集中力は適度に切れるものがいいんだ。


「ところで、この鉄なんだけどさ」

「それがどうした?」

「他のと違うような気がするんだけど?」

「ああ、それは黄鉄だ。うちがよく使うのは青鉄だな」

「黄鉄と青鉄……」

「産地が違うんだ。黄鉄はもっと南の地で採れるが、青鉄はこの辺りで手に入るものだ」

「へー、そうなんだ」

「黄鉄は脆い鉄だ」

「脆いの? なんでそんな鉄を使っているの?」

「黄鉄には黄鉄の使い方がある。青鉄に少し混ぜるんだ。そうすると、適度に粘りがある鉄になるのさ」

「ほえー、なるほどー」


 たしかに鉄には色々な種類がある。

 それに鉄に炭素を加えると硬くなるとか、クロムやニッケルを加えるとステンレスになるとか、ケイ素やマンガン、リン、硫黄なら超硬い鋼になるとかくらいは知っている。

 結局、何か混ぜたら硬くなるんじゃん! という感じだ。






 春の訪れに、草木が喜んでいる。

 雪が降っていても元気なのは、ヴァイスくらいなものだ。

 真っ白い毛が雪の保護色なので、動いてないとどこにいるか分からなくなるヴァイスだ。


「おい、ヴァイス。俺の足の指は美味しいか?」

「ワフ」

「って、足がベタベタなんだが?」

「ワフ?」


 俺の足はヴァイスにとってとても美味しいようだ。

 ん、ちょっと待て……この感触は……。


「おい、ヴァイス。お前、俺の魔力を吸ってないか」

「ワウ」

「そうか。魔力を吸っていたんだな。それでお前の魔力が少しずつ増えていたわけか」


 ヴァイスの魔力は、子オオカミだった頃より明らかに増えている。

 不思議に思っていたが、これで謎が解けた。


「てか、お前。このままだと魔獣になるぞ」


 現在の魔力量はまだ俺の数百分の一もないが、確実に成長している。

 ま、いいか。魔獣になってもヴァイスはヴァイスだ。

 それに……面白そうだしな!



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 魔獣を従える男(但し子供)……と、女の子(ママぁ)
つまりフェンリルに変形するわけと
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