第112話 十五歳の当主継承
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第112話 十五歳の当主継承
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俺が十五歳になると、盛大なパーティーが行われた。
「ノイス、おめでとう」
「ありがとうございます、トルク様」
「これでノイスも一人前の大人ね」
「また説教ですか、シュラーマ姉さん」
「説教されたいの?」
「勘弁してよ」
「《《今日は》》勘弁してあげる」
今後ずっと勘弁してくださいよ。
それからも多くの人たちから祝いの言葉をいただいた。
そして最後に、トルク様や重臣たちが見守る中で、養父カイン・シュラードは正式に隠居を発表し、俺がシュラード家の第四十二代当主になったのだ。
「これよりは、このノイスが新しきシュラードを築いていきましょう。皆様にはノイスを温かい目で見守っていただければと存じます」
「ノイスです。これよりシュラードを率いる者として自粛自戒し、百折不撓の心を忘れずにいきたいと思います」
パチパチと拍手をもらい、一礼して挨拶を終える。
そして春祭り。
「よし、食うぞ!」
「駄目ですよ」
「え!?」
そりゃないよ、スライミン姫ー。
「旦那様は歴史あるシュラード家の当主であり、毘沙門党の党首、仏法守護社の神官長なのです。これからトルク様らをお迎えしなければいけません」
「うぅぅ……」
しょんぼりしいていると、視界の先でクラリッサがたこ焼きを頬張っていた……。あれはいいのか、スライミン姫!?
くそー、可愛い顔して美味しそうにたこ焼き食ってるよー。
「トルク様、ようこそ」
「なんか機嫌悪くないかい、ノイス?」
「ソンナコトナイッスヨ」
「……そうかなー?」
「痛い!? 姉さん、痛いっす!」
頬を抓らないでくれ!
「どうせ買い食いができないから不貞腐れているんでしょ? そんなことで、シュラード家の当主が務まると思っているの?」
なんで分かるんだよ、あんたはエスパーか!?
「ノイスの考えていることなんて、今も昔も変わらないんだから、すぐに分かるわよ」
「ま、マジっすか……?」
俺、成長してないのか?
いや! 俺は成長した! 背は一・八五メートルもあるんだ! (それは違う!)
「ノイス兄さん、お好み焼き食べます?」
「ネイルンー、ありがとうよー」
「甥っ子のものをとるんじゃないわよ!」
拳骨落とすことないでしょ、シュラーマ姉さん……。
他にも色々な人を出迎え、挨拶をしていく。そんな俺の視界の隅では、ロッガとタタニアがイチャイチャしながら買い食いしていたり、レンドルのヤツが新妻にあーんしてもらっていたりした。なんで俺だけが……。こうなったら、次の秋祭りでは、あいつらにも仕事を分けてやろう! それで俺の仕事を減らすんだ!
秋祭りはスライミン姫とクラリッサの剣舞を奉納するが、春祭りは仏法守護社の神官たちによる演舞が奉納される。
この演舞は、毘沙門党員であり、神官であり、なおかつ演技が上手くないと出演できない。
彼ら彼女らは一年をかけて、演舞の内容を考え、配役を決め、厳しい稽古を積む。中には役が与えられず、裏方になる者もいるけど、あえて裏方を希望する者もいる。そういった百人ほどの神官たちによって、この演舞は成り立っているのだ。
今年の演舞は、去年よりかなり派手になった。皆が魔法を駆使して圧倒的な迫力で、演舞を演じ、演出を盛り上げた。
狩や戦いでは目立たない者でも、この演舞でスポットライトを浴びて輝く者もいる。
多様性があるということは、いいことだ。そんなことを思いつつ、熱がこもった演技を見ている。
そしてクライマックスでは、派手に雲(水蒸気)が出てきて、幻想的な天上の世界を演出し、主役が堂々と歩き、神と迎合して祈る姿で終わった。
観衆はその光景に息を飲み、幕が下りても静寂が支配した。
二分ほどの静寂のあと、大歓声が巻き起こった。空を割らんばかりの歓声が、同時に演舞に関わった全ての者への賛辞となって包んでいく。
春祭りが終わった。
燃え尽きた。
そんなことを言ってられない情報がもたらされた。
「トレイアス・ウバラッシュ様が大将軍に就任されました」
舅のアルタンさんが、帝都で仕入れてきた情報だ。
「ウバラッシュ政権が樹立されたわけか。これで少しは戦がなくなるといいんだけど」
「そうも、そうはいかないようですね。かなりきな臭い話がいくつもあります」
「安定政権、とはいきませんか?」
「少なくとも、しばらくは難しいかと」
「詳しく聞かせてください」
「帝都があるムサン州を押さえておられるのはウバラッシュ家ですが、北のトロリル州のバシャード家、東のデトロング州のサドン家とラクサイド家、南のアバテント州のグリモス家が大連合を組み、ウバラッシュ家を包囲しております」
ムサン州は西側が海なので、海以外の三方を完全に囲まれた形か。なんか日本の戦国時代の信長包囲網みたいだ。
まあ、連合と言っても連携できなければ、ただの烏合の衆でしかない。
アルタンさんの話では、包囲網を築いている四家は、盟主というべき存在がおらず、あまり連携は取れていないようだし、これまでのウバラッシュの手際を考えれば、四家を各個撃破して勢力を大きくするかもしれない。
「はてさて、どうなることか」
「本当に、どうなることでしょうな」
俺とアルタンさんは、見通せない情勢にため息を吐く。
うちの製品の最大の消費地である帝都が、情勢不安定では困るのよ。まったくさー。




