あの人に、会わないと
リーク様と別れ、私はコウエイが眠るベッドの脇に腰かけていた。
穏やかな寝顔を見ていると、僅かにコウエイの瞳が震えた。
「あの人に………会わないと……」
「え?」
「んっ、あれ……? ここは? ……っ、シオン……?」
夢と現の世界から、完全に覚醒したコウエイががばっと体を起こした。体に激痛が走ったのだろう、体を丸めるコウエイの背中を支える。
「ここはカロラの城の中だよ。今はとりあえず安全だから安心……はできないか……でも、大丈夫だから」
「……」
目覚めたばかりなのに、コウエイは辺りを警戒したように見回した。
コウエイはカロラの人間たちに虐げられてきた側だ。その人間の本拠地の真ん中にいるなんて思いもしなかっだろう。
それを知らされて、警戒しないわけが無い。
「……うん」
ぎゅ、とシーツを強く握り締めて、コウエイは小さく頷く。
納得はしていない雰囲気はあるが、とりあえず今この状態を受け入れてくれたみたいだった。
「コウエイ、痛いところない? 何かあれば頼んでみるよ。多分、そうそう断られることは無いと思うから」
「今は大丈夫……。ねえ、シオンは、姚国に帰りたいって思う?」
「え? 何、突然」
「……いいから答えて」
「私は……帰れないと思う」
それはどうして、とコウエイに問われ私は少し考えた。
「今戻っても、後悔すると思うから」
思い浮かぶのは、雪で閉ざされた故郷。
そして、この国で出会った、ローレル様とリーク様の顔。
この国が私たちにしたことは許せない。
虹脈を奪い取って、滅ぼしたこの国を許せないとも思う。それに、コウエイにこんな仕打ちを与えたことも。
だけどこのまま姚国に帰ってしまったら、遺恨が残ったままだ。それはまた次の悲劇を呼ぶ。
第二の姚国が生まれるだけだ。
「まだ私にはできることがあるって思うの。何もしないまま、姚国に帰れない」
「……そう。なら、私と一緒に来て。この国に、姚国がどんな国か思い知らせてやりたいって思わないの?」
「それは復讐って言う意味?」
うん、とコウエイは静かにうなづいた。
「私は、思い知らせてやりたいよ。私の故郷を、私をこんな目に遭わせたこの国が憎いから。それを、できる人を私は知ってる」
だから行こう、とコウエイは手を差し出してきた。さぁ、この手を取ってと懇願され、私は迷わずに首を振った。
「出来ない。コウエイもそんなこと考えてはダメ。お互いやり合う先に未来はないよ。悲しい思いをする人が増えるだけ。私たちは耐えなきゃいけない。そして、その上で変える努力しなくちゃ」
この国と、姚国の関係を。




