ぶつかり合って
まさか、とローレル様はリーク様に詰め寄る。
「どういうつもりだ!? この国を危険に晒して、何をするつもりだった!? それに、姚国の人間まで使って……!」
胸ぐらを掴み大きく揺さぶるローレル様と、それを受け入れるリーク様。
「やめ、止めてください!!」
私は慌ててそれを止める。揺さぶるのを止められても、胸ぐらを掴んだローレル様の手は解け無かった。その手は白く、血が滲みそうなほど、握りしめられていた。
リーク様は、仕方の無いことだと受け入れているように見える。
「聞いてください、ローレル様!!! リーク様は、ローレル様に、こんなことやらせたくなくて、自分からノーブル王に志願したんです」
「どういうことだ……」
怒気を含んだローレル様の声に、私は怯まずに続ける。
「ノーブル王が、実験と称して虹脈を扱えるように命じようとしたからですよ。ローレル様を、次期国王として試すために……」
「私は、聞いていない」
「それは私が止めたからです」
「何?」
仲間い沈黙を破りらリーク様は、観念したように答えた。
「きっとあなたは、この実験の内容を知ったら、拒否されると思いました。あなたはなにより姚国を大事にしていたから」
「……」
「鉱脈を扱うこと、実験のこと。知ったら、ロイは悲しむと思った。何よりそんな思い、させられないと思った。あの時、みたいに……」
「それ以上言うな!」
なにか言葉を続けようとするリーク様を、ローレル様はぴしゃりとぶった斬る。
それ以上は本当に許さない、といった雰囲気に私は思わず身震いを覚えた。
「もういい、分かった。お前が、何を思っていたのかを知れてよかった。だけど、ちょっとひとりにしてくれ」
そういうと、ローレル様は城の中へ戻って行った。
「リーク様、あの時って……?」
「シオンにも、きっと知る権利があります。だけど、私の口からは何も。ただ、何があってもローレル様を信じてあげてくださいね」
「それは、もちろん………」
良かったです、とリーク様は少しすっきりした表情で笑った。それが今まででいちばん自然で、飾り気のない心からの笑顔のような気がした。




