帰還
狭い廊下を抜け、地上に出ると空は一気に曇って今にも雨が降りそうだった。
待ち受けていたかのように、衛兵たちが入り口を取り囲んでいた。
全部、読んでいたのだろうか?
それくらい用意周到だった。一切逃げ場、といっても逃げるつもりは毛頭ないのだが、ロイさんは警戒するように見回してやがて深い息を吐いて、私の後ろをついてくる。
その様子を、リーク様はふとわずかに口角を上げて見ていた。ちゃんと見なければ見逃してしまう、そんな笑み。
「こちらへ、どうぞ」
止まっていた馬車の扉を開け、さぁどうぞと招かれる。私は立ち止まることなく乗り込み、次にロイさんと抱えられたコウエイ、そしてリーク様が乗ってくる。
乗り込んだ私たちを確認した従者が扉を閉め、しばらくした後ゆっくりと走り出した。
行く先は、言わずもがなカロラ王国の城下、ないし城だろう。
誰も何も発しない。ロイさんは静かにコウエイを抱えて、私は気を失っているその顔を見ていた。
ちらりと目だけを動かし、時たまリーク様の顔を伺うと無表情で私たちを見ていた。
何を考えているのだろう?
やがて城下に入り始めた頃、リーク様は馬車の窓のカーテンを閉めた。
恐らくロイさんの姿を見られないようにだろう。
今はロイさんは怪我をして動けないことになっている。そのロイさんがここにいたら、王家で付いた嘘が明るみに出る。そんな事になったら信用はがた落ちた。それは避けたいはずだった。
薄暗くなった馬車の中、ロイさんは何を思っているのだろう。
自分が生まれ育った場所を追われ、名前を捨てて、そして再び戻ってきた。
けれど、ローレルとは名乗れない状況下で何を思うのだろう。
私に何が出来るだろう。
そして、馬車は止まった。
どうやら城の中についたらしい。
従者によって馬車の扉が開かれると、そこは中庭だった。ノビリス女王の姿が見える。
「降りてください」
先に降りていたリーク様が、手招きする。
私は意を決して馬車を出、ロイさんとコウエイも降りた。
ノビリス女王は少し離れたところで私たちを見ていた。
声をかけたほうがいいのかと、ロイさんを見るがロイさんはノビリス女王の方へ一瞥もくれなかった。
「部屋へ案内しますね」
コウエイを抱えたまま、歩き出したリーク様の後ろをついていくだけだ。
私も慌ててその後を追いかけた。




