表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草少女と花の国  作者: 山名真雪
雑草少女と新たな出会い
24/120

王子と辺境伯

「あれは、良くないかも……! ハンナも怪我したら大変……!」


尋常じゃなく暴れているハンナを見て、私は慌てる。馬が怪我を負うことがどれだけのことが分かっていたから。ひとつの怪我が馬の命を脅かすことがある事を知っている。最悪の場合……。

嫌な想像をかき消す為に、強く首を振る。


「リーク様、ハンナの元へ案内してください!」


「はい、こっちですよ」


私の慌てた様子に、リーク様は強くうなづいた。

ノビリス女王と王への挨拶もそこそこに、走っていくリーク様の後を追いかけた。


その後は、本当に地獄のようだった。

暴れるハンナの元へ走り、怪我をした衛兵達の救護。

それから、どうやらその様子を見ていたらしいローレル様が走ってきて私を手伝ってくれたが、公務が滞っているとリーク様に怒られるという始末。


今は、城の応接間のひとつに三人で座っていた。

テーブルを挟みリーク様とローレル様が座り、テーブルの上の紅茶を飲みながら一息ついているところだ。


どうやら、今までローレル様は公務で部屋に缶詰だったようだ。

目の下の隈がローレル様の苦労を物語っていた。


「まさか、シオンがいるなんて思ってなかったよ。んで、リーク説明してくれるよね?」


眠気と疲れで目のすわったローレル様が凄むとそれは、迫力がある。背中に黒いオーラさえ見える。

しかし、リーク様は見慣れているのかものともしない。


「ノビリス女王が女王に会いたいとおっしゃるので城にお連れしたまでのこと。どうやらシオンに引き続きハンナの世話を頼もうとしたようですね」


優雅に淡々とした口調でリーク様は言う。

飲む姿も余裕を見せつける、落ち着いた所作。

対してローレル様は足を組み、崩した様子で少し乱暴に紅茶を嗜んでいた。


「まぁ、あれを見れば母上もそう思うだろうね。まともにハンナの世話が出来ないんだもん」


はぁ、と深いため息を吐くローレル様は天を仰ぐ。


「ローレル様にもハンナの世話が出来なかったですもんね」


「なんだとっ……まぁ、リークの言う通りなんだけどさ」


あぁあ、と遠い目をしたローレル様はチラリと私を見た。

目を瞬かせて二人の会話を聞いていた私に気づいたらしい。


「あのね、ロベリア教会に預ける前、僕が面倒を見てたんだけど見切れなかったんだよ。それで母上が落ち着ける場所をって考えたらしいんだ」


「それで選ばれたのがロベリア教会だったんですね」


「そういうこと。でも、それは正解だったみたいだ。シオンに出逢えたんだから」


「そうですね。それはいい判断だったですね」


と、リーク様も同意した。

そんなことは、と私は首を振る。やれることをしたまでなのだ。それがたまたまハンナに届いただけのこと。それに、すぐに懐いてくれた訳では無いし、紆余曲折を経て信頼関係を築けたのだ。


「いや、凄いことだよ。なにかに一生懸命になれない人だっているんだ。まず、初めに必要なのにそれさえやろうともしない人がいる。シオンはそれが出来る人なんだよ。それは胸を張っていい」


そう言われて、私は照れてしまった。

膝の上の手を弄りながら、モジモジしているとローレル様は手をぽんっと叩いた。


「でもこれで、シオンの生活基盤は整ったわけだ。住むところも仕事も見つかった」


にやり、とローレル様は笑う。


「あ、すみません、宿のこと……!」


言われるまですっかり忘れていた。

宿代をローレル様が負担していることを思い出して、力強く頭を下げる。


「いや、いいんだ、気にしないで」


「宿代って……?」


「あー、後で説明する」


私とローレル様の会話を聞いたリーク様が首を傾げる。どうやら、初耳のようだ。

ローレル様は、まぁまぁとか言いながら、目線を彷徨わせる。言い訳を考えてるようにしか見えず、それはリーク様も察しているようにも思える。


詰め寄るリーク様を、ローレル様は青い顔で笑っていなしていた。

それでも、二人楽しそうだから2人は友達以上の関係に見えた。王子と辺境伯という立場を超えて、友人と言う関係。

それが、羨ましくて眩しく見えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ