炎揺れる廊下
「まぁ、ローレル様への追求は後でにしましょう。シオン、その宿までお送りしますよ」
「あ、そうですね、そろそろお暇しないといけない時間ですね」
ゴタゴタのせいで気づいていなかったが、応接間に西日が差し込み始めている。間もなく日も落ちて暗くなってくるだろう。
事件に巻き込まれる前に、宿には帰りたい。
私とローレル様も立ち上がる。
「どうして、ローレル様も?」
「いや、送ろうかと思って」
「無駄に警護の手間を増やさないでください。私が行きますから、ローレル様は仕事に戻る。まだまだあるんですから。徹夜したいんですか」
やれやれと言ったふうに、分かりやすく頭を抱えたリーク様はローレル様の顔を見てバッサリ切り捨てる。
ローレル様は、少し傷ついたように顔を歪めた。
「僕だって息抜きしたい」
「それが本音でしょう。尚更ダメです。ローレル様は放っておいて、行きましょう」
「は、はい。では、失礼します」
さっさとリーク様が部屋を出ようとするので、慌てて私はローレル様に頭を下げて部屋を出た。
静かに閉めた扉の向こうで、困ったように笑うローレル様が手を振っていた。私も小さく振り返す。
「すみませんでしたね。色んなことに巻き込んでしまって」
「いいえ。こちらこそ、また助けていただいて。迷惑をかけてすみません」
教会のことと言い、今日のことと言い。
ローレル様やリーク様に助けて貰ってばかりだ。
「前にも言いましたが、シオンのせいではありませんよ。なので、謝らないでください」
歩き出したリーク様の隣に立ち、燭台のあかりが灯った廊下を歩き出す。
白亜の壁や床に反射した、炎が揺れる。それがとても幻想的だ。
「明日から忙しくなりますね」
「そうですね。でも早起きは慣れています」
「そうですか。それに、なんだか嬉しそうですね」
分かりますか、と言うとリーク様はそれはもう、分かりやすいですよ、と笑った。
そんなに顔に出ていただろうか。
仕事は見つかったことは嬉しい。けれど、それ以上にハンナと別れなくてすんだことが本当に嬉しいのだ。
「はい。明日から楽しみです」
「それは良かった」
他愛もない話をしながら、リーク様は宿まできっちり送ってくれた。
「ではまた明日」
「はい、また明日。おやすみなさい」
明日も早い。さっさと支度して寝よう。
宿の中に戻り、女将さんと挨拶を交わして部屋に戻った。




