何を知ってるの
姚国大使のコウちゃんと、辺境伯リーク様の会談は静かに開かれた。
私とコウちゃんの再会が終わった数日後、開催されたのだ。
私は、リーク様に言われ部屋の隅に控えていた。入口には、ロイさんがあの甲冑姿で立っている。
リーク様に隣に座るよう勧められたが、私は再びコウちゃんの前に座れる勇気がなかった。
私は、どっちつかずだからどっちの味方にもなれないし、敵にもなれない。
願うのは、どっちも生かせる道だ。
でも、どうすればいいのか分からなかった。
虹脈があるからいけないのだろうか。
虹脈を、皆でわけあえたなら……。
「それは無理かな……」
誰にも聞かれない私の呟きは、溶けて消える。
だって、コウちゃんは全てを取り戻したい、そういったのだ。
「改めて、カロラ王国へようこそ。私はローレル様に変わり代役を努めます、リーク ポッロと申します。この国に滞在中、何かありましたら遠慮なく声をかけていただきたく思います」
私の考えを断ち切るように、リーク様が口を開いた。
「いえ、こちらこそ最大限の配慮をありがとうございます。姚国大使のウブ コウリンと申します。実りある会談にしましょう」
コウちゃんは落ち着いた声色で応える。
「では早速ですが、姚国の復興のために私たちが出来る最大限の支援をしたいと思います。その用意は既に手配しており、衣食住、あらゆる面で……」
「それはありがたいですが、我々の願いは別にあります」
コウちゃんはリーク様の言葉をさえぎる。
その目は有無を言わせない意志を持っていた。
「回りくどい言い方はしません。あなた達が奪い取った虹脈を返していただきたい」
「……それは、無理だと言うことは分かっているのでは?」
リーク様が負けじと、睨み返した。
しかし、コウちゃんはたじろいだりしなかった。
「それは、虹脈がある事件の代償としてカロラ王国が貰い受けたからですか」
「……」
黙ったままのリーク様が頷く。
コウちゃんは、腕を組む。
「それは、彼が起こした自らの罪でしょう。こちらには何ら落ち度は無かったのに。俺は……見ていましたよ。全部ね」
ふぅ、とコウちゃんは長い息を吐く。
「その彼……ローレル王子は今どこに? 普通なら王子がこの場にいるのが礼儀でしょう? それとも俺の前に来れない理由でも?」
そう言って、住みに控えていた私を見た。
「そうか、シオンが居るから来れないんですね。なら都合がいい。俺が今ここで、全て話してあげますよ」
にっこりと笑った、コウちゃんはあの頃の無邪気な笑顔では一切なくて。悪意に満ちた、笑みを浮かべた。
「だって、君はあの時――」
「やめろ」
「……やっぱり、居た」
コウちゃんが何かを言いかけた時、ロイさんが震える声で私とコウちゃんの間に割って入る。
コウちゃんの顔はロイさんの背中で見えないけれど、コウちゃんはその向こうで、楽しげに笑っている気がした。




