第32話 狩りの後、引き続き説明回。
「なるほど…そこそこ厄介ね。」
と言いつつ首を捻るシトラス。
それを横目に、同じように首を捻る僕。
「確かに、気絶したのよね。」
とシトラスがレグに聞くと、レグは無言で頷いた。
「そして、縛った、と。」
「でも、気が付くと、気絶ではなく死んでいた…。」
「どういうことでしょう?」
「何か仕掛けがしてあったということでしょうか。」
「本人の意識が無くなること自体を起爆装置にしていたか…あるいは外部から何かの合図で起爆したか…。」
「秘密が漏れる前に命を絶つ…ってことですよね。そこまでしても、守るべき何かがあったのでしょうか?」
「まあ、何かはあった、そう考えるのが普通よね。」
さっきレグが踏み込んだ家での戦闘は、レグ曰く、間違いなく一人は気絶させたそう。
ただ、僕が後からその場に着いた時には、その気絶したはずの男は、縛っていた最中に気絶ではなく絶命していたことに気づいたそうだ。
逃げた二人も含めて、あの建物の目的もいまいちはっきりしないし、結局部屋にも何も残されていなかった。
「何かしらの計画は企てていたはず、部屋もかなりの広さ、でも男が3人いただけ。」
「隠したか、破棄したか、いずれにしても動きが速い。」
ちなみに逃げた二人は、途中まで採糸で追跡できていたみたい。
ただ、どうやら動き方がちょっと変な感じになって、どうも何らかの方法で転移したかもしれない、とのこと。
「転移って、要は別の場所に一瞬で移動することですよね。可能なんですか?」
というトープの疑問ももっともだ。
少なくとも僕は「この世界では」見たことはない。
「しかも、結構惜しげもなく転移を使っているようにも見えるけど、そんなこと出来るの?」
とシトラスやみんなに聞いてみると、レグが、
「一般的には無理だろうな。」
と答えてくれた。
「一般的ではない、何かはあるということね。」
「そうだ。」
「道具とか?」
というシトラスの疑問に対して、今度はリラが答えた。
「教会には、そういう能力を持った人や、能力を封じ込めた魔導器の話はありました。ただ、実際に見たことは無いので、どこまでが本当なのかは難しいですけど…。」
「ううん、とてもいい情報だと思うわ。少なくとも、使える可能性はあるけど、潤沢に使えるほどではなさそうね。」
僕もそう思う。まあ、推測なんだけど。
「じゃあ、これからどうする?」という僕の疑問に対して、皆で顔を見合わせる。
ちなみにウィスは取り合えず高熱のふりをしていたら、そのまま寝てしまった。
「大きく分けて、更に調べるか、無視して冒険者生活を満喫するかってとこね。」
「満喫って…まあそうだけど。皆はどう?」
シトラスの示した選択肢以外にも、何か思うところがあれば…と持ち掛けたところ、レグがこんなことを言い始めた。
「俺たちの動きは相当程度見張られていると考えると、寧ろ普通に冒険者として活動した方が、何かとっかかりが掴めるかもしれんな。」
それってつまり、泳がされていることを承知で、普通に過ごすってことかな?
「何だか良く分からないけど、何かが動いている。でも、こちらから動くよりは、次に何かが動いたときに備えておこう、ということね。」
シトラスはどうやら冒険者として活動する方に考えが傾いているようだ。
リラやトープはどうだろう。
「僕たちもそうですね、下手に動き回るよりも、まずは普通に過ごしてみてもいいのではないかと。」
「私も、どちらかといえば探し物は苦手なので…。」
「無くすのは得意なのにね。」
「もう、変なこと言わないの!」
兄妹…じゃなかった姉弟仲がいいなあ。
「じゃあ、とりあえず今日はこのまま休んで、明日改めてギルドに…って僕たちは普通にギルドに行ってもいいんだよね?」
いろいろ怪しまれたりしてないよね?
「まあ、堂々と行きましょう。」
何かあればその時考えればいいか。
シトラス「人が一人死んでいるのに、皆普通に会話しているのが、今更ながら怖いわね。」
クロム「僕らはそういう場面に遭遇する機会も多かったけど。」
リラ「私たちも回復が間に合わなかったりする人たちは結構見てきました。」
レグ「そもそも自分が死ぬ寸前だった。」
クロム「このパーティ、普通に危険人物認定されそう。」




