本編とは全く関係ないところで転生した男の、危機感スキルがいい感じで仕事をしない話。その10。
瞬間、場の空気が、凍る。
瞬間、お姫様の表情が消える。
瞬間、二人のマッチョが、自分の首に剣を当てる。
あー、ちょっと選択を間違えたかなあ…?
「あなた、誰?」
底冷えする声で、ファリア…シャルロット嬢が自分に話しかけてきた。
いやー、声怖いんですけど。
本当に17歳?
「答えなさい。」
答え方によっては即斬だよ!と言わんばかりに、頭の中に警告音が鳴り響く。
警告だけ貰ってもなあ。
でもまあ、即ではないということは、交渉の余地は…あるかなあ?
ないかなあ。
まあいいや。
取り合えず何か言おう。
「では、包み隠さず申し上げます。」
一つ。
自分は本当に先ほどこの世界に来たこと。(ホント)
一つ。
自分の能力で、「相手のウソ」が分かること。(ウソ)
「何より、自分は分かってしまうんです。」
静かに問いかけてくる、シャルロット嬢。
「…何が?」
なんて言おう。
「この世の、すべてが。」
おお、すごい。
自分、神っぽい。
ちょっと、誇張しすぎな気もするけど、どんなもんでしょうね?
すると、シャルロット嬢の顔に明らかに
「は?」
という困惑というか馬鹿にしたようなというか、何とも言えない表情が浮かぶ。
「えっと…。」
ですよねー。
本気かお前?っていう発言ですし。
よし、じゃあもう少し突っ込んでみよう。
「明後日(本当の)お誕生日ですね。おめでとうございます。」
「…ッ!!」
どうだろう。
恐らく、知っている人は極少数の機密事項だと思うんだけど。
あ、横の二人にバラしてもいいかどうか確認してなかった。
やっちゃったかなあ。
と思ってチラリと視線を向けると、二人とも驚愕の表情を浮かべていた。
この表情は、知らなかったではなくて、なんで知っている、だな。
多分。
「自分の事を信じてくれとは言いません。ただ、危害を加えてくる恐れのある相手に対しては、それなりに対応しなければなりません。とりあえず、お話をしませんか?」
努めて冷静に語りかけたつもり。
すると、少しの間を開けて、首に当てられていた2本の剣が下がる。
「お嬢、ちょっと話、聞きましょうや。」
「我々の手に余る事態かもしれませんぞ。」
そんな二人の様子を見たシャルロット嬢。
ふー、と一息。
「そうね。あと、お嬢はやめて。」
「へいへい。」
うんうん。
賭けには、勝った…かなあ?
「えっと、コウ、だったわね。」
「はい。」
あ、覚えててくれたのね。
「ちょっとまだ信じ切れていない部分もあるけど、少なくとも、こちらがあなたに害をなすことは、【今は】無い、としておくわ。」
「十分です。」
「それから、ここに長居するわけにはいかないの。直ぐにでも【ナウル街道経由で】王都に戻らなきゃいけないから。」
それは、先ほどの謀反紛いの事も含めて、戻る必要があるってことかな。
「だから、どうかしら。とりあえず一緒に来てくれない?」
そうだなあ。
多少は友好的になってくれたとしたら、それもいいかも。
ということで、念のため。
【シャルロット・デル・ラ・ブリトン Lv:61(人間・女性・17歳7か月)】
ブリトン王国出身。現王の第一婦人の末娘<ファリア:17歳>だが、王位の継承争いを激化させないよう第五婦人の長女<シャルロット:公称16歳>と偽って育てられている。性格は優しいが、不義理な行いには厳しさも見せる。
あと、コウのことは暗殺者か間者のどちらかだと思っているから、帰り道でコウを罠にはめようとしているよ!ナウル街道は隠語で架空の街道だよ!
…。
まあ、普通はそうだよなあ…。




