身体検査
自分の趣味が高じて戦国物のIF小説を投稿しています。
不定期更新ですので興味のある方は読んで見て下さい。
誤字・脱字は追々編集で修正していきます。
祖父三浦義清を見送った後、
自室に戻る途中に、
俺は、庭の池に写る現在の自分の姿を改めて再び確認した。
あどけない表情の子供が映る水面を見て
‘あ~、本当に子供に転生したんだ。’
と、溜息を付き
そして自室に入った俺と三須三河守。
しかし、意識が乗り移った此の時代の荒次郎で有る俺は、
満6歳の子供にしては背丈が異常に大きい様に思える。
下座に座っている傅役の三須三河守より、
少し小さい位で
とても、満6歳児の数えで7歳児には見えない。
戦国から江戸時代に掛けての、
平均身長は成人男性で158cm位なので
今の俺の身長は、どれ位なのだろうかと気に成り、
三須三河守を立たせて横に並び比べてみた。
「若は、5尺(151cm位)程ですかな、
儂が、5尺4寸位(162cm位)ですのでな。
やはり、背が高いのは、三浦家のお血筋ですな。
此れで大人に成り、更に背が大きく成って、
筋骨が逞しゅうなれば、立派な大将に成られましょう。」
と、嬉しそうに言っている。
「三河守。
儂は、記憶を失のうて居るので、
昨日までの事を何も覚えておらん。
まるで別人の様に成っているかもしれんし、
何かと迷惑を掛けるが宜しく頼む。」
「迷惑などと、勿体無いお言葉。
分からぬ事が有れば、
此の三河守に何なりと、お申し付け下され、若。」
と、畏まって頭を下げた。
‘良かった~。
頭を打って昏睡し、記憶を失った振りをしたお陰で、
昨日迄の荒次郎が別人に成り代わった事を
周囲に怪しまれる心配は無く成ったな’
此の時代に転生し、気が付いてから、
祖父と名乗る三浦義清を見送って、
今迄バタバタし、冷静に考える暇も無かったが、
自分の居室で腰を落ち着けて座り
頭を下げている、
傅役のキチンと整えられた丁髷の頭を‘ボ~っ’
と、見ながら考えだした。
先ずは、夢の続きなのか現実なのか分からないが
俺は此処に生きていると云う事実が有る。
俺の知っている史実では相模三浦家は、
天正6年(1578年)時点では既に滅んでいる。
しかし、先程、記憶を失っていると思った、
周囲の大人が教えて呉れた此の世界の歴史によると、
相模三浦家が滅んでいない事以外は、
どうやら俺の知っている史実通りである。
俺が夢で見た史実と違う三浦義意の活躍に依り
相模三浦家と含む、
後北条家とその周辺の歴史が変わっただけの様だ。
そして、他聞、何もせず歴史に身を任せて要れば史実通り
12年後には、後北条家と共に最悪滅亡するかもしれない。
先程は、
今現在、出来無い事を考えても省がない、
成る様にしか成らないし、
頑張って生き抜くしかないと思いはしたが、
出来れば天寿を全うし畳みの上で死にたい。
殺されたり、切腹して自殺するのだけは、何としても避けたい。
だから、今後具体的に、何を、どう、頑張れば良いか思案した。
現状俺は、満6歳の子供で、
次期当主とは云え、相模三浦家で扶養され、
何の力も無く、養われているだけなのだ。
何としても早急に、周囲の人達に自分の能力を示し、
1人前の大人として扱われる様に元服し、
家督を継いで三浦家を自由に動かせる立場に成らなくてはいけない。
幸い、時は戦国時代で、
現在では考えられ無い位の年齢で元服する例は多いのだ。
だから、早い時期に元服し大人の仲間入りをして
家督を相続する事を第一目標とする。
次に、俺の知っている歴史通りに進むかの検証も大事だろう。
長篠の戦いも起きているし、武田が大敗した事も史実通りだが、
今後も史実通りとは限らないので、
取り敢えず上杉謙信が今年の3月に亡くなり御館の乱が起きるのか、
近場で言えば、北条氏政が9月に世田谷で楽市令を発布したり、
里見義弘や武田家の重臣の高坂弾正が死去し、
自然災害で京都で水害が起こったり、
東海地方に大地震が起こったりする事を確認し、
俺の知っている史実通りで有れば、
色々対処し易いし、
運命を左右する様な出来事にも的確に判断を下す事が出来る。
3つ目は、
今の三浦家や北条家の現状を把握し、
情報収集や諜報活動などで様々な情報を得て、
分析し正しい判断をして、
依り良き未来を切り開いていく事も重要である。
最後に、現代で生きていた俺の知識を最大限に生かして、
新兵器や新技術・新しい産業を生み出し、
軍事的にも経済的にも力を付けていかねば成らない。
そして、政治を良くして民を集め、家臣の団結力も上げ、
相模三浦家は云う迄も無いが、
主家でも有り一門でも有る北条家も強く大きくして、
何としても歴史を改変し、
1590年の滅亡を免れなければ成らない。
と、考えていると
「若、如何なされました。
雅か、お加減でも悪く成られましたか・・・」
「あ、いや何でも無い。
少し、考え事をしていただけじゃ、
体も頭も大事ない。
それよりも三河守、ちと、頼みが有る。」
と、俺は、
まず手始めに、今直ぐに出来る事として、
自分の身体能力を確かめる為に、
昨日迄の俺とは違う荒次郎が、
どの様な生活をし、
何が出来たのか確認したく成り
今迄の荒次郎が普段から行っていた
日課を熟してみようと思い
早速に三河守へ日常的に行なっている、
手習いや鍛錬を初めて欲しいとお願いした。
そして、三須三河守に言われるが侭、
毎日の鍛錬で行なっている
槍・剣術・弓矢・馬術の稽古など
立派な三浦家の当主と成るべき、
武将としての日々の鍛錬や読み書きや算用など、
一通り実践してみた。
「ほほう!、若。
記憶を失のうて、如何かと思いましたが、
身体の余分な力が抜け、槍裁き・剣裁き共に
昨日よりも、断然鋭く成り申した。お見事です。
弓矢も、全て的を射て居られるし、
馬術にしても、馬の扱いと云い、身の熟しと云い、
昨日と比べると雲泥の差で御座いますよ。
読み書きは、相変わらず御子とは思えぬ卓越振りですな。
ご立派としか、言い様が御座いません。
本当に三河守は若の将来が楽しみで御座います。」
と、お世辞抜きで、
昨日からの上達ぶりに驚きながら褒め称えて呉れた。
しかし、当の俺は心の中でビックリし、
そして、自分の身体が不思議で成らなかった。
‘な、何で出来るんだよ!
剣術・槍術・弓矢・馬術って・・・、’
生まれて初めて、行った事ばかりで有る。
確かにTVやネットなどで、
先程行った武芸などを見た事は有っても、
実際自分で習った事もやった事も無い事ばかり。
身体が勝手に反応して勝手に上手に出来てしまうので有る。
依り不思議だったのは、
ミミズの這った様な旧字体が書けたり、
中国語の様な漢語ばかりの文章が読めたりする事だ。
‘ど、どうして!、
昔の字が読めたり、書けたりするんだよ・・・’
頭の中で、勝手に、現代語に翻訳されたり、
紙に、書こうとして文章を、頭で考えると
手が勝手に動いた。
‘ど、どんな、トリック何だ・・・
全く判らないけど、
現実に行為として実行出来ている。
昨日迄の三浦荒次郎が鍛錬して来た事を、
身体が覚えていて、
今の俺が引き継いでるって事なのか?’
しかし、傅役の三須三河守は、
昨日よりも、上手く成っているという。
身体事態は、満6歳児だが、
意識は成人した大人なのだ。
神経回路や脳事態の発達とか、
精神状態が大人に成ったとか、
何か、関係が有るのだろうか?
不思議な事も、有るもんだと、
俺は思ったが、
転生事態が不思議な事の際たる事なのだ。
俺は、もう一々、不思議体験に驚か無い様にしようと決意した。
‘まあ、此れも此処で、いや、此の時代で
生きて行く上での、初期特典なんだろうな
何にせよ物事が上手く出来る事に越したことは無い’
と、素直に受け入れる事にした。
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