67 無粋だが、謎解きは焼肉中で(その5)焼肉どころではない受難
読者の皆様、行間まだ直してなくて申し訳ないです。今話も含めて明日調整します。
それでは今週の不憫第二弾をどぞ!
テントの中に入ってすぐ目に入ったものは仲間の変わり果てた姿…とかではなく、女王様にしばかれて喜ぶ変態の姿であった。いや、ある意味変わり果てた姿なのだろうが。
…なんというか、私が見たのは侵入していたホヒト族相手に短鞭で戦うエリスさん。そして亀甲縛りで床下に這いつくばって敵を掴むトパーズさんを踏みつけながら敵諸共鞭の餌食にしていた。
というか、狭い場所で戦う手段あったんだエリスさん…
なお、音源はあまりにひどいので真っ先に遮断した…男の、しかも変態の喘ぎ声とか本当、誰得だよ。
外のことはひとまず親父と半獣族に任せているのでまあ大丈夫か。それにいざとなったら青ツナギがなんとかするだろう。できれば最終手段にしてもらいたいところだが。
あの青ツナギのことだ…どうせご褒美に味見させろとかいうのだろう。なんせ奴はノンケでも〇〇でも構わず食っちまうからなとか宣言しているどうしようもない変態なのだから。同じ変態でもトパーズさんが可愛く見えてしまうレベルといえば、わかりやすいか。
ドワーフなら絵的にひどいしホヒト族ならもう誰がどう見ても犯罪だ。確実に通報案件である。画面越しの紳士淑女の皆さんからゴミのようなものを見る視線を投げかけられた上で青い鳥などのオカズにされるのがオチだ。
そんなことすれば、寝耳に水どころか鼻から味噌汁ブラストで火夢着火炎な世界の意志様から爪楊枝か何かでプチっとされてこの世界が終わってしまう。それは地獄のしごきを耐えた私の今までを徒労に変えてしまうということだ。
ん?…なんだか今変な電波を受信した気がしたが、気のせいか。
それでさっきまで一体何を私は悩んでいたのだろうか…まあいい、きっと大事なことではないのだろう。忘れるということはそういうことだ。確かヒトの脳とは大事ではない案件からデリートするのだと聞いたことがある気がする。
まあまぎれもない事実だろう…脳もUSBとか同様容量があるのだ。特に重要ではないことはさっさと削除するに限る。例えば目の前で行なわれている変態のポージングとか。
…現実逃避するのをやめ、とりあえず文字どおりスルーすることにした。
まあ逃げ出したことについては認めよう。だって仕方がなかったのだ。無理だよ、8歳児に変態の変態たる言動を止めろとか無謀にもほどがある。
だいたい伝染してすぐ発病はしないにしても、潜伏したらどうしてくれよう。子供とは悪い大人の模倣をついしてしまうものなのである。大人として終わっているというかいろんな意味で人としてダメなマダオを年齢的に情操教育真っ最中の子供へ見せるのがそも間違っている。
この2人、絶対子供の前に出さないあるいは子供の前では取り繕わせねば(使命感)
荒ぶるエリスさんたちの横を通り過ぎて、息を整え次へと向かう。さぁて一体どんな酷い映像が待っているかな。
奥へと進むと今度目に入ってきたのは背中を合わせて戦っているギルマスとレミィリアさんだった。連携とかバッチリでお互いのタイミングとかも息使いなんかで測っており、抜群のコンビネーションとかきっと言われるのだろう。
完全無欠なリア充ですね…これってあれか、独身への攻撃なのか。そうか、精神攻撃だったのか。
「いいよもう別に…いつか見つけるもん。」
そうだまだ希望はある。
私はまだ8歳。まだまだ子供であり成長の余地もある。第一まだ性徴も来てないのだからきっとそのうち見つかるさ。前の世界みたいに年齢=彼女無しなんて事態にはならんさきっと。希望はまだあるのだから。
しかしげにおそろしきかな敵は。こうなんども私へ攻撃(精神)してくるとは…ここまでくるのにいろんな意味で大分削られた気がする。それも私から攻撃できない味方を使ってくるとは卑怯な(※無関係です)
焼肉といい精神攻撃といい、許すまじミスティフコッカス。いますぐ殲滅してやるから待っていろよ(※だから違います)
どっと襲ってきた疲れを無視し、到頭テントの奥に着いた。
ここまで本当に長かったな。だいぶSAN値が削られた。少しくらい私も役得があっても…そういえばあの某暗殺執事ウォルターの名台詞をチョチョイと加工して言えるか?いけそうな気がしてきた。
よし、どうせなら声に魔力を乗せてついでに威圧もして…
『手洗いは済ませたか?焼肉様へのお祈りは?
食卓の隅でガタガタふるえて命乞いをする心の準備はOK?』
調子に乗った私は某少佐の言葉を言いかけて、飛んできた複数のナイフと小斧を避けるために口をつぐんで身体を仰け反らした。
一瞬だけ時間がゆっくりと進み、周囲の者がスローモーションになる。同時に飛んできた凶器複数はある程度のスピードで進んでくるのが空気でわかった。
それらを全て紙一重で避け、元の体制に戻ると同時にこちらは雷の術式を放った。
バチバチバチバチ…チッチッチッチッチ…
そんな音が辺りに散らばると同時に不規則にジグザグしながら一瞬で進んだ電流は視界から消えた。瞬間焼けるような音と悲鳴が聞こえ、音が止んだ。
…ヤバイ、やりすぎたかも。
アフロ程度に済ませたはずなのだが、咄嗟だったのでもしかしたらちょっと神経伝達がおかしくなっているかもしれなかったりしなくもなかったり…とりあえず落ち着こうか。深呼吸でも。
いや早く行けよ。
自分で自分にツッコミを入れつつ慌てて部屋に入ると、プスプス言いながら床でピクついている半透明な人の姿があった。足元には何もなく、影もない。ついでに重要なのでもう一度、体が透けていた。
…幽霊ってこの世界ではあれか、物理なのか。幽霊(物理)だらけで犬とか道を歩けば幽霊に当たるとかそんな状態なのか。
思わず道ゆく女子高生がにやけ顔をした変態の幽霊を知らぬ間に通過する映像が頭を過ぎる…それ、私も見えなかったら通るのか。
それってすごく嫌だな。
若干遠い目をして疲労を感じながら、とりあえずピエールさんを起こそうと近づく。そして、目の力を一瞬強化して黒い鎖の先を見た。
ああやっぱりと納得した。
ピエールさんは幽霊になったばかりだというのに実体化できていることがなぜかずっと引っかかっていたのだ。なるほどそんな仕掛けが施されているのか。
どれどれ…ああなるほど、裏切ったらわかるように伝言する魔術式がこれにあたり、さらに逆らう意志が見つかったらこれが発動して寄生者が『敵』と定めた相手を殲滅しにかかると。だからさっきのナイフ投げなんてできたのか、冒険者とか暗殺者でもないのに。
まあ大体読めたし、壊すか?
いやその前に未だ感染しているらしいミスティフコッカスを殺すのが先決か。そうだなそういえばそうだった。焼肉中断の恨みとここに至るまで受けた精神的打撃の八つ当たりをせねば。
とりあえず、ピエールさんに害が及ばないようにするか。そのためにもあれをするか…男にとって、泣きたくなるようなアレを。
すまないとは思うが、謝らない。これはそう、人助け。人の命を助けるための行為なのだから、仕方がないのだ。たとえ相手が死人であり、死人に鞭打つ行為であったとしても仕方がないことなのだ。
だってやらないとこの死人が死んでしまう。
ならばやるしかない。諦めて妥協するのはまさに今でしょな状況なのである。
だからまあ、アフターケアくらいはしよう。
「『毛刈り』執行。」
ベリベリベリミシミシミシ……ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ…
ギャー
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「ライ、もう少しやり方とかなかったのか?これは流石にないと俺は思うのだが?貴族時代外道…なんて呼ばれるようになった俺でさえ流石にドン引きだ…」
「いや、もうなんというかごめんなさい…」
土下座をさせられて説教されているライくん8歳。やったことには反省も後悔もないけど、現在もう少し手段はなかったのか考える余裕を持てる状態で敵へ対面しなかったことについては反省している。だってやり方が悪かっただけでやったことは間違っていなかったのだ。
結果的にピエールさんは生きているが、毛根は死滅した。
「髪が…私の髪……」
涙目で頭頂部をさするピエールさん。そこは見事な無毛地帯となっていた。
私が全部ぶち抜いたのだ、ある意味当たり前ではある。
カッパみたいな状態になっており、幽霊なのに血も滲んていた。整った顔をしていたのにハゲ。その一点で全てが台無しになってしまった…本当にごめなさい。
「だが予想外だったんだ…あんな、あんな風に髪の毛にミスティフコッカスが潜伏していたなんて!」
「俺だって予想外だよ!!誰が自分の息子が相手をアフロヘアーにしてからハゲにするなんて思うか!!?」
「う、ゴフッ」(吐血)
涙を滝のように流してパタリと倒れるピエールさん。なんだか消え掛かっているような…
「「ショックで成仏しようとするな戻ってこい!!」」
なんとか足を引っ張り現世へと留めさせるのであった。
なお、ミスティフコッカスはちゃんと瓶詰めにして逃げられないようにしております。




