十話 考察その2
冬季うつ病というものがある。気力が低下し、倦怠感を感じるが、食欲が増して、良く眠るようになる。患者は冬以外健康であることが多い。これは、人間の冬眠なのではないか、という説がある。患者数もより寒い地域に多いのだ。これらは、太古の昔、人間も他の種と同じように冬眠していたその名残なのではないかと考えられる。人間が冬眠せずとも生きられる術を身に付けたため、忘れられてしまった技術なのではないか。つまり、冬季うつというものは、そんな太古の記憶が不完全な形で現代に蘇ったもの、ということかもしれないのだ。となると、この男はそれを完全な形で再現したものなのか?
「スイさんの御先祖にも冬眠する方はいらっしゃるのですか?」
「村の長老の話では、スイの家系には時折、こうやって冬籠もりする者が現れるのだそうで。」
先祖代々失われることなく受け継がれてきた遺伝子。ならば私の説はおそらくきっと正しいだろう。さて、冬眠することによって長生きするというが、本当だろうか。
「ところでスイさんの御年齢は?」
「今年で40になります。こう見えて私よりも年上なんですよ。」
ハルはにっこり笑ってそう答えた。驚きで声が出なかった。とすれば、冬眠は老化を抑え、若さを保つことにも繋がるのか。これを人間に応用できれば…常識を覆す可能性を秘めたこの男に、私は興奮を隠せなかった。




