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魔兵機士ヴァイスグリード  作者: 八神 凪


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第18話 陽動

「うわあ!?」

「くっ……」

「ふん、なにをやっている。皆殺しでいいぞ!」

「ぎゃぁぁぁ!?」


 ――グライアード王国の騎士達が町へ強襲をかけ、住人を攻撃していた。

 男を斬った騎士は苦悶の表情を浮かべる。

 だが、その直後に巨大な鉄の足が肩を斬られた男を踏み潰した。


「あ、ああ……」

「女は回収だ。特にガキは男も女もだぞ」

「そこまでせずとも――」

「あ? ここの隊長は誰だ?」

「……」

「誰だと聞いている!」

「ひっ!? ジョンビエル様です!」


 鉄の足を上げながら質問を投げかけると、黙っていた騎士は慌ててそう口にする。

 ジョンビエルと名乗った男はニヤリと笑い、足を下げた。


「そうだ。俺様だ! 分かったら命令を遂行しろ」

「……はい」


 深夜の寝静まった時間にグライアード王国の軍勢が町を襲う。

 理由は簡単。

 寝ている相手を蹂躙する方が抵抗が無くていいからだ。そのため、夜を待っていた。

 だが、思ったより起きている人間が多いなとジョンビエルは訝しむ。


「どういうことだぁ? この辺まで伝令が来ているはずはねえんだがな」


 エトワールの王都からそれなりに離れており、あの混乱で正確に逃げ出せた者がいるとは思えない。しかし、今、この町の住人はまるで襲撃があることを見越していたような節がある。

 するとその時、どこからか怒りの声が聞こえて来た。


「貴様等ぁぁぁぁ!!」

「なに!? ぐあ!?」

「こっちへ!」

「あ、ありがとうございます……! 夫が……」


 眼下にエトワール王国の鎧を着た騎士達が仕掛けて来たのだ。一瞬、面食らったジョンビエル。しかし、すぐに目を細めて口の端を歪めた。


「なるほど、逃げ出した腰抜け騎士達が加担していたか。まさか間に合っているとはな。だが魔兵機《ゾルダート》三台相手に挑もうなんて……死にたいようだなあ!」


 黒く重苦しい巨体が動き出し、騎士達の戦っている場所へ移動を始める。


「こいつらどこから……! チィ!」

「エトワール王国の騎士はまだ負けてはいない……!」

「お前等はもう終わってんだよ!」

「なに!? 魔兵機《ゾルダート》か!」


 剣を交えていた相手の背後に闇の中から巨体が現れて冷や汗をかくエトワール王国の騎士。その瞬間、魔兵機《ゾルダート》の右足が地面を踏む。


「「ぐあああ!?」」

「チッ」

「ジョンビエル殿、どういうつもりか!」

「ぐぬ……。味方ごとだと! 正気か……? いや、ジョンビエルと言ったな……! まさか『殲滅者《ターミネーション》』のジョンビエル!」

「『様』が抜けてるぜ腰抜け国の騎士さんよぉ!」

「ぐぅぅ……!」


 ジョンビエルは仲間ごとエトワール王国の騎士を踏みつけようと何度も足を地面に叩きつける。

 しかし、そこは騎士。素早い身のこなしを見せて転がりながらも避け続けた。

 そこへ通りから別のエトワール王国の騎士が姿を見せて腕を振る。


「こっちはもう避難できた! 撤退だ!」

「よし! お前は行ってくれ。姫様によろしく伝えておいてくれ!」

「死ぬ気か!?」

「足止めは必要だろう! とぁ!」

「見せしめだ、囲んで殺せ……!!」

「早く行け!」

「くっ……!」


 ジョンビエルが指示を出すと、足止めを買ってでた騎士がグライアードの騎士達に囲まれた。


「数で攻めなければ戦いもできんとはな。腰抜けはどっちだ?」

「ほざけ!!」

「ぐぬ、まだまだ……!!」


 再び味方ごと踏み潰しにかかったジョンビエル。激高しながら足を上げると、エトワールの騎士は覚悟を決めてその場にいた敵を数人引き倒す。


「これで少しはグライアードの追手が減れば――」

「ジョンビエル様、おやめ――」


 地上の騎士達が驚愕の表情を浮かべた。おかまいなしに足を叩きつけようとしたその時――


◆ ◇ ◆


「させるかってんだ!」

「な……!? うがあ!?」


 町に入った俺は目にしたデカブツを目標にして一気に詰めた。

 すると伝令に行った騎士の一人が敵に囲まれているところに出くわす。そいつを踏みつけようとした魔兵機《ゾルダート》を力任せにぶん殴った。

 バランスを崩した機体はよろめき、家屋に倒れこんだ。


「なんだ!? 魔兵機《ゾルダート》が魔兵機《ゾルダート》を殴った!?」

「貴様、味方になにをする! ……な!? 見たことが無い魔兵機《ゾルダート》、だと!?」


 グライアードだっけ? そいつらが動揺する声が聞こえてくる。それよりもと、俺は騎士を手に取ってから敵の正面に立つ。


「リク殿……! どうして――」

「お前達を見殺しにはできないだろ? 死ぬ気なら許さねえからな」

「……」


 そのつもりだったようだな。

 一人で囲まれているから囮にでもなったんだろう。そんなことを考えていると先ほどぶん殴った魔兵機《ゾルダート》が立ち上がり、怒声が聞こえて来た。


「何者だ、てめえ……!? それにその魔兵機《ゾルダート》はなんだ? 見たことねえぞ」

「名を聞きたきゃ自分からってのは常識じゃないのか?」

「貴様……!」


 俺が鼻で笑ってからそういうと、魔兵機《ゾルダート》は家屋に倒れている状態から体勢を立て直し、俺に向かって突撃してきた。

 手には大剣があり、こっちへ来る前の最後に見たガルシア隊長を思い出す。


「俺はグライアード王国第五騎士団長『殲滅者《ターミネーション》』のジョンビエル様だ! 死ね……!」


 ヴァイスやヴァッフェリーゼ、さらに『メビウス』の機体と比べてもそれほど速い動きじゃないな。騎士を下ろしてからジョンビエルとやらに突っ込んでいく。


「前に出るだと!? 馬鹿が!」

<マスター、プラズマダガーの使用を提案します>

「そいつは後だ、まずはぶん殴る!」

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