第26章:森の息吹
文法や構文に不備がございましたら、平にご容赦いただけますと幸いです。
「みんな、私の後ろに!」
セラが俺たちの前に躍り出ると、気迫のこもった声を張り上げた。
「新しいスキルを試すわ……【守護者Lv79:アイギス・ドーム】!」
神々しい黄金の光を放つ結界が一瞬で広がり、俺たちを包み込んだ。
次の瞬間、巨大な異形の植物がまるで打ち出の槌のような勢いで、太い幹を叩きつけてきた。
ドォンッ!
地響きを立てるほどの凄まじい衝撃だったが、セラの黄金の結界はヒビ一つ入ることなく見事にその一撃を受け止めた。
「結界も永遠には持たないわ!」
集中を維持しながらセラが息を荒らげる。
「何か手を打たないと……それも急いで!」
「分かってる、セラ……だけど一体どうすれば!?」
木々と脈動する肉塊が混ざり合った化け物を前に、俺は歯噛みした。
「あの娘が間違いなく核じゃな」
チョーローが低く唸りを上げると、その身から発せられる熱気が一層激しさを増した。
「あやつをあの腐肉から引きずり出せば、こんなデタラメな巨体など勝手に崩壊するわ! 数秒稼いでくれ。わしの炎を一点に凝縮させてぶちかます……その後の仕上げは任せたぞ!」
「了解だ、チョーロー! やってみよう!」
俺はセラの隣に躍り出た。
「セラ、結界を解除してくれ!」
「今よ!」
黄金の光が消え去った瞬間、セラは神速の踏み込みで前方に躍り出た。
「【守護者Lv79:ディバイン・タックル】!」
盾を構えた体当たりが異形の足元に直撃し、生じた衝撃波が巨大な巨躯の体勢を大きく崩させた。怒りに狂った怪物は、俺たちに向かって腐臭のする酸の粘液を撒き散らし始める。
「そんなもの通さねえ!」
「【氷魔法Lv1:アイス・スプレッド】!」
氷のつららが空中で粘液を次々と撃ち抜き、俺たちに届く前にことごとく凍りつかせた。
「準備完了じゃ!」
口内に灼熱のマグマをみなぎらせたチョーローが、翼を広げて空へと舞い上がった。
「喰らい尽くせ……『スーパーノヴァ』ぁぁぁっ!」
灼熱の巨大な火の玉が、怪物の真っ芯へと叩きつけられた。
爆発的な熱量が吹き荒れる。腐った枝や毒の根がまるで太陽に晒された雪のように溶けていき、肉塊の中央から小さく丸まったセリアの体が姿を現した。
「よし……これがうまくいくか試してみるか!」
俺は手持ちのスキルに意識を集中させた。足元に落ちていた太い枝をひっ掴むと、一気に魔力を流し込む。
「【釣り人Lv1:パーフェクト・ライン】!」
枝の先端から、鋼鉄のワイヤーのように強靭で鋭利な糸が伸びた。狙いを定めて放たれた糸は、セリアの腰元へ正確かつ強固に絡みついた。
「セラ、手を貸してくれ! 今だ!」
「任せて、ハルキ!」
セラが俺と一緒に糸を掴み、ブーツの踵をしっかりと地面に踏み込んだ。
「いち、にの……さんっ!」
息を合わせた全力の引きで、俺たちは全身の力を込めて引っ張った。グチャリと不快な音を立てて、セリアの体が怪物の心臓部から引き剥がされる。
魔力の供給源を失った異形の植物は自壊を始め、数秒間吐き気を催すような腐臭を撒き散らしながら、灰と腐木の水たまりとなって崩れ去った。
セリアの小さく軽い体が、俺の腕の中へと落ちてきた。
「セリア……セリア、聞こえるか?」
俺は優しく肩を揺すりながら声をかけた。
少女はゆっくりと目を開けた。そこにはもう、あの恐ろしい緑の光は宿っていなかった。その顔立ちは、すっかり普通の人間の子どもに戻っていた。
「どうして……」
消え入りそうな小さな声で、彼女はぽつりと呟いた。
「どうして……放っておいてくれないの……? 私……ただみんなと遊びたかっただけなのに……誰も困らせたくなかったのに……。それなのに、あの甘い飴をくれて……ここに行けって……」
そっと瞼が閉じられ、セリアは安らかな深い眠りへと落ちていった。毒の苦しみと復讐の呪縛から、ようやく解放されたのだ。
舞い戻ってきたチョーローが手加減した炎を吹き付け、植物の不快な残骸を綺麗に焼き払い、祭壇の周囲を浄化した。
数分後、樹々の間を心地よい温かな風が吹き抜け、あたりを覆っていた不気味な霧を綺麗に押し流していった。
二十年もの長い苦しみの時を経て、森はついに、再び息を吹き返したのだった。
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