第一章:最悪のプロローグ
日本語が母語ではないため、不自然な表現や文法上の誤りがあるかと思いますが、あらかじめお詫び申し上げます。それでも作品を楽しんでいただければ幸いです。
この異世界は、マジでクソだ。
【雑用係】(オールラウンダー)
……一体全体、何だ改めたこのスキルは?
ステータス画面を目にした瞬間、それが俺の率直な感想だった。
俺の名前は佐藤陽樹、十八歳。つい五分前までは、京都にある嵯峨野高校の三分一(三年B組)の生徒だった。それが突然、クラス丸ごと異世界に召喚されたというわけだ。
「ようこそ、勇者様方。私はこのオーラリス王国の女王、エルゼアティア・ラフォレと申します。我が国が直面している未曾有の危機を救っていただくため、皆様をお呼び立ていたしました」
「左様」
女王の隣に立つ厳格な男が、威厳に満ちた声で言葉を継ぐ。
「私は宰相のザードである。諸君らの使命は、我が国を脅かす邪悪なるノクターン帝国を滅ぼすことだ」
俺は周囲を見渡した。3-Bのクラスメイトたちは完全にパニックに陥っていた。見えない机にすがって泣き出す者、激しい悪態を吐く者、逆に興奮を隠せずに目を輝かせる者。
「もっと詳しい説明を求めます」
凛とした声が響いた。学級委員長の橘葵だ。
「私たちに、一体何をさせようというのですか?」
「勇者様方」女王は荘厳な面持ちで語りかける。「この世界において、人々は生まれつき固有の能力……スキルを授かります。しかしながら、ノクターン帝国の民は闇の力に魅入られ、自らの能力を汚し、このエルドリア大陸全体を脅かしているのです」
「女王陛下の仰る通りだ」宰相ザードが、部屋の中央にある台座を指さした。「諸君にはあの魔物どもを退治していただく。列を作り、中央の水晶に手をかざすがいい。それが汝らの内に眠るスキルを顕現させるであろう」
あまりにも現実離れしていた。まるでRPGのゲームそのものだ。ただ一つの違いは、俺たちが画面の向こう側に引きずり込まれたということだけ。
「なあ、佐藤……これって、まるでラノベの展開そのままじゃないか!」
隣からヒソヒソ声が聞こえた。
「ワクワクしないか?」
「全然。俺なんて一番ハズレの職業を引き当てそうな予感しかしないよ、キサラギ」
木サラギ・蓮は、俺の唯一の親友だ。俺は根っからのぼっちでも重度のオタクでもないが、人と打ち解けるのが得意なほうでもなかった。
「では、一人目……」
女王が告げ、直後にその目を見開いた。
「な、信じられません! 最高の能力【聖剣士】を引き当てるなんて!」
ほーら、始まった。
白石魁斗。学校一のイケメンで、ミスター完璧超人こと白石が、案の定一番の当たりスキルを手にしていた。
「女王陛下」白石は洗練された動作で一礼した。「この身に代えましても、王国を勝利へ導くことをお誓いいたします」
一人、また一人とクラスメイトたちが水晶の前に立ち、驚異的なスキルを発現させていく。
「さ、佐藤くん……行かないの?」
「いや、森川。俺は最後に回るよ。お前は何だったんだ?」
「わたしは……【サイレントヒーラー】だったの。じゅ、呪文を唱えなくても、怪我を治せるみたいで……」
森川結衣。小柄で控えめ、大人しくてかなり可愛い女子だ。クラスの目立つグループに割って入るようなタイプではないが、俺が気兼ねなく話せる数少ない相手の一人だった。
「ふむ、残るは最後の一人だな」
俺は深く息を吐き、台座へと歩み寄った。
「さあ、怖がることはありませんよ」女王が優しい微笑みを向けてくる。「あなたにもきっと、お仲間と同じように素晴らしい力が与えられるはずです……」
水晶が眩い光を放つ。……が、直後に女王の表情が凍りついた。
「……ええと。これは、かなり予想外ですね……」
「【雑用係】(オールラウンダー)!?」俺は空中に浮かぶ文字を二度見して声を上げた。「何だそりゃ! 最強の炎魔法は!? 一撃必殺の狙撃手は!? ラフォレ女王、これどういう意味ですか!?」
「ええと……通常、召喚された勇者様には帝国と戦うための強力な能力が宿るのですが……」
女王は明らかに困惑し、気まずそうに言葉を濁した。
「おい、小僧」宰相ザードが冷たく割り込んでくる。「他の勇者たちに任せるのだな。そのようなスキル、戦場では何の役にも立たん」
「はぁ!? 待ってくださいよ、そこまでゴミみたいなスキルなわけないでしょ!」
俺は慌ててステータスの詳細を確認し、全身の血が凍りつくのを感じた。
【雑用係】:存在するあらゆるスキルを習得可能。ただし、全てのスキルレベルは『レベル1』で永久に固定される。
完全な詐欺スキルじゃないか。
「あらあら、可哀想な佐藤くん……」クスクスと意地の悪い笑い声が聞こえた。「でもまあ、当然じゃない? 学校でも影が薄い存在だったものね」
九条玲奈が、蔑むような笑みを浮かべて俺を見下ろしていた。「私は【結晶魔法使い】よ。やっぱり運命って、その人の本当の価値に合わせて力を与えてくれるのね」
「ギャハハ! 雑用係だって!? 最高のギャグだな!」
腕組みをした権田大地が爆笑する。「俺みたいに体を鍛えねえからそうなるんだよ! 見ろよこの筋肉! だから俺は【剛体術師】を手に入れたんだ!」
「二人ともやめなよ、言いすぎだよ」
介入してきたのは天野美香だった。運動神経抜群で明るい性格の彼女は、たった今【聖拳士】のスキルを解放したばかりだ。美香は憐れみと気まずさが入り交じった視線を俺に向けた。
「ごめんね、佐藤くん……でも無茶して怪我するより、お城で安全にしてた方がいいんじゃないかな……?」
「勇者諸君、時間を無駄にするな」宰相が冷ややかに会話を打ち切る。「その……雑用係以外の者は、全員王城の客間へ案内する。お前には小銭を握らせてやるから、辺境の町リーゼへ移住するがいい。そこでせいぜい役立つといい……生きていられればの話だがな」
「待ってください! 宰相さん、女王様……いきなり追い出すなんて酷すぎる!」
「往生際が悪いぞ、佐藤くん」
リーダーぶった白石が、冷徹な笑みを浮かべて一歩前に出た。
「現実を受け入れろよ。僕たちに任せておけば、すぐに問題なんて解決してやるからさ」
「言うねぇ白石。超チートスキルを引き当てた奴は気楽でいいよな!」
「僕のせいじゃないだろ」白石は冷たく肩をすくめた。「運命が選んだんだよ、佐藤くん。そして君は、選ばれなかった。ただそれだけだ」
「……ごめんなさい。私たちは一刻も早くこの事態を解決できるよう全力を尽くすわ」
委員長の橘が、気まずそうに目を逸らしながら言った。
「橘さん! 委員長だろ、見捨てるなよ!」
俺は唯一の友人に視線を向けた。「キサラギ……お前まで俺を見捨てるのか? お前は……何のスキルだったんだよ?」
「俺は……まあ、大したことないよ」蓮は俺と目を合わせようとせず、ボソボソと呟いた。「【影疾走】(シャドウランner)っていうんだ。要するに暗殺者だな」
「どこが大したことないんだよ! 俺なんて文字通りバイト要員だぞ!」
「頼むから耐えてくれ、佐藤……」
兵士たちに連れ出されながら、蓮が小声で囁いた。
「絶対に俺が何か方法を見つけて、お前を迎えに行くから……!」
皆、行ってしまった。
一人、また一人と召喚の広間を去っていく。女王は嘘くさい同情に満ちた視線を一度だけ俺に向けた後、あのハゲ宰相の後を追って歩き去った。
重厚な鎧を着た二人の兵士が近づき、容赦ない力で俺の両腕をつかみ上げる。
……ハッ、新しい人生のスタートとしては、これ以上ないくらい最高(最悪)の始まりだな。
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