38 第四皇女は17歳になりました。
ごきげんよう。ルイーズ・ドゥ・グルノーです。
私、先週17歳になりました。
前回こんな感じでご挨拶をしてからまだ1年しか経っていないので、私も、私の周りも、それ程の変化は……たぶんないと思います。
グルノー皇国は相変わらずとても平穏な国です。もしかすると、以前よりももっと平穏かもしれません。
ここ数年は悪天候により起きる農作物の不作といった話も聞きませんし、害虫被害の報告もないそうですし、概ね良い感じなのではないかしら?
個人的に不満があるとすれば、社交デビューしてからというもの、どこどこ侯爵家のお茶会とか、まるまる辺境伯家の晩餐会とか、皇王家主催の舞踏会とか、近隣の国の使者様の訪問とか、なんだかんだと出席しなければならない行事が増えてしまったせいで、研究室に籠ったり、読書をしたりする時間が大幅に減ってしまっていることですね。
「ルイーズ様。本日は夏用の新しいお召し物のための採寸がございますので、このお部屋からお出にならないで下さいね。採寸が終わりましたらそれに合わせてお持ちになるためのバッグ、お靴、宝飾品、その他をお決めになるようにと王妃様が」
採寸?……でも私、1年前から背なんてあまり伸びていないと思うのだけれど。
「ねえ、ジネット。時間も手間も無駄だし、去年と同じ寸法で、それか、ちょっとだけ大きくして仕立ててもらえば、それで良いと思わない?」
「まあ、そう言われてしまえば、ルイーズ様はほとんど成長されておられない気も……。いえいえ、何を仰いますか! 例え1ミリも背が伸びてなかろうと、新しいお召し物を完璧に仕立てるには採寸は欠かせませんわ!」
「1ミリもって……。流石に2、3ミリは伸びてるかもしれないわよ?」
採寸する暇があったら本でも読もうと思ったのに、あらら、作戦失敗ね。
この1年での大きな変化と言えば……。
ああ、そうよ! ジョルジュの背がすーーっごく伸びたわ! 最近では隣に並んだジョルジュが私を見下ろすのよ。私の方がお姉さんなのに、ちょっと気分が悪いわね。
でも、皇王家の男性は揃いも揃って背が高いので、遅かれ早かれどこかのタイミングでは追い越されると思ってはいたけれど……。
むむむ。分かってはいても、悔しいものは悔しいのよ!
では、この辺ですっかり恒例となっている私の家族の近況をお伝えしますね。
お父様とお母様は、相変わらずとっても仲良しです。な、の、で、今回も省略しちゃって良いかしら?
ああ、でもここ数年分ずっと省略しているわね。
うーん。それではあまりにも失礼よね。仮にもこの国の皇王陛下と皇后陛下なのだし……。
でも、実際あまり変化がないのは事実なのよ。
お父様は、最近とってもお忙しいようです。
何がどう忙しいかは、私の預かり知るところではないので詳しくは説明できないけれど、他所の国から訪問される方がとても多いようで、メラニーが旦那さんの料理長も忙しいのだと言っていたわ。
そう言って笑うメラニーも、料理長に負けず劣らず忙しそうよ。
その理由は、私がメラニーにお願いしていつも作ってもらっている焼き菓子をお母様がとても気に入ってしまって、最近ではお母様の主催するお茶会の回数がなんだか急に増えたそうなの。
あの焼き菓子だものね。分からなくはないわ。だって、本当に美味しいもの!
そんな感じなので、お母様もお忙しそうです。
そうそう。お母様はラファエルお兄様と結婚されたシャーリー公爵家のアマリア様をとても気に入られたようで、毎回お母様の主催するお茶会にアマリア様を呼ばれて、ご友人たちに紹介していらっしゃるみたい。
アマリア様はいずれはこの国の国母となられる方ですもの。そういったお付き合いは重要よね。アマリア様、頑張れー!
では、続きまして兄弟姉妹を上から順番に。
1番上、第一皇女のクロエお姉様は28歳。
クロエお姉様は半年ほど前に大聖女としてリスカリス王国から “大規模浄化” の依頼をお受けになりました。
ヘンリエッタお姉様がルルーファ王国への聖女訪問団に参加している途中で魔獣の群れに襲われた件もあって、お父様はクロエお姉様が国外へお出になることを猛烈に反対されたのだけれど、結局は聖教会に押し切られたようです。
でもリスカリス王国には、元聖女のグレーテ叔母上様が王弟殿下に嫁いでいらっしゃるので、警備は普段以上に厳重だったようです。
クロエお姉様は任務を完遂されて、グルノー皇国に無事にお戻りになられました。
2番目、第二皇女のアデルお姉様は24歳。
ヴィンガル公爵家に嫁がれてもうすぐ6年。
3歳のおしゃまなエミリアちゃんと、1歳半になったばかりの元気なラウレンス君を連れて、時々お城に遊びに来られます。
3番目、第一皇子のラファエルお兄様は21歳。
お兄様は結婚を機にお父様から公務をいくつか引き継いでいる途中のようです。地方視察のためだと思いますが、ここ最近、お城を留守にされることが増えました。
ああ! だからお母様はアマリア様がお寂しくないようにと、アマリア様を頻繁にお茶会にお呼びになられているのかもしれませんね。
そうそう。(覚えておいでかは分かりませんが)アマリア様はちゃんとあの秘密をラファエルお兄様に打ち明けられたようですよ。
4番目、第三皇女のヘンリエッタお姉様は19歳。
お姉様は相変わらずほとんどこのお城へは戻られません。
あのルルーファ王国での事件の後、かなりの人数の聖女様が帰国と同時に「聖女を引退したい!」と言い出したらしいです。
聖教会としては聖女の力を失ってもいない方たちの聖女引退をできれば認めたくはなかったようですが、特に貴族のご令嬢を中心に多くの方が聖教会を去ったと聞きます。
訪問団に加わっていた中では身分的には1番高いはずのヘンリエッタお姉様は、一度も引退を口にされませんでした。
事件後も聖教会に残られた方々と一緒に、グルノー皇国内各地を巡りながら聖女の癒しを行っておられるようです。
次が5番目の私。第四皇女のルイーズ。現在17歳。
私の近況は、また別の機会に。
最後が6番目、第二皇子のジョルジュ14歳。
ジョルジュはお父様から15歳になり次第、ラファエルお兄様と同じく、ハーランド王国の王立学院に2年間留学する許可を獲得しました。
むーん。本当に羨ましいわ。
出発は1年後。それまでにラファエルお兄様と一緒に運営している商会を、今の倍以上に大きくするつもりだと息巻いています。
そのためには新商品が必要なのよね……。
それってつまり、頑張らなきゃならないのは、ジョルジュよりも私ってことにならないかしら?
兄弟姉妹の近況に関しては以上です!
お祖父様とお祖母様の話は……特に今回も変わったことは無いですね。
お二人とも相変わらず仲良く旅に出たりしながら楽しくお過ごしのようです。
大聖女マリアンヌ伯母上様も相変わらず精力的にご活躍のようです。
お終いは、リスカリス王国の王弟シャール殿下に嫁がれたグレーテ叔母上様。
グレーテ様がリスカリス王国へ向かわれてから、早いものでもうすぐ5年になります。
グレーテ様は、グルノー皇国で聖女として過ごしていらした時よりも、リスカリス王国での生活の方が断然水が合うようですよ。
ラファエルお兄様とジョルジュが運営する商会と取り引きをするために、王弟妃でありながら、自ら商会を立ち上げたとの話をお父様から伺った時には驚きましたが、とてもグレーテ様らしいとも思います。
王弟妃という立場を上手に利用しながら、グレーテ様はリスカリス王国の高位貴族のご婦人を中心にかなりの顧客を得ているようで、売り上げ額がもの凄いことになっていると、ジョルジュが狂喜乱舞していましたから。
「ルイーズ様。そう言えば、また竜国の使者が陛下を訪ねて来ているのをご存知でしたか?」
「えっ? 全然知らなかったわ!!!」
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