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29・三年生の一学期です

夏休みの期間中、先生方はてんてこ舞いだった。

定員50人のところに60人入学させるのだ。


「寮の増築は進んでいますか」

「はい、ただ、男子の風呂が間に合いそうにありません」

学園長の質問に先生方は答えていく。


「寒くなるまでは男子は水を浴びせておきなさい。教室は大丈夫ですか」

「教室は、今までの人数ではスカスカでしたから、机と椅子の搬入で大丈夫でした」

「教員の増員はどうですか」

「リズさんとリコさんに講師依頼のOKを貰っているので、大丈夫だと思います」

「リズさんとリコさんは今年度までしかいません。今度の卒業生から教師見習の出来そうな生徒をピックアップしておくように」


学園長の指示は的確だが強引だった。


入園式は講堂で行われる、学園長の挨拶と新入生の名前を呼び、最後に注意事項の説明で終わる。

二年生と三年生の始業式は、各教室で担任のあいさつで行われた。


教室で担任から始業の挨拶と三年生の授業内容の説明がある。


「薬学科の三年の授業内容の説明をします。まず薬作りは継続して行います。それから…」


三年生は、構内にある薬草園と森の薬草の手入れをする。これは二年生の三学期から始めている。

それから、薬師として必要な事務の授業が始まる。

薬師としての技術が高くても、経営が出来なければ仕事が続かない。

製薬会社に入る生徒もいるので、最低限の礼儀作法を教わる。

そうして、三年生初日の午前中の授業が終わった。


「さあ、頑張るぞー」

授業が終わると、ペネロペが叫んだ。


「何をそんなに頑張るの」

キャロルが聞く。

「えーだって、自分がこんなに上達するって思わなかったんだ。こんなに上達したら、もっともっと上達したいと思わない」

それは私もそう思う。


三人で盛り上がっていると、そこにリズが声をかけてくる。

「ねえ、あれから一生懸命勉強しているけど、マナが出来ないのに何で学園に来たの」

今更だが、リズの疑問ももっともである。いろいろ不思議だったんだろう。


「私の村の薬師が高齢なんです。後継者がいないと、村で病人やけが人が出ると、死んじゃうんです。村の人は、誰もマナの制御なんか出来ません。村の人全員から筆記に受かりそうな、私にお願いしてきたんです。」

キャロルだ。


「私の家は代々薬師です。本当はマナの使える姉が来るはずだったのですが、薬師は嫌だと言って、駆け落ちしていなくなったんです。親が、行けば何とかなると言って、入学させられました」

ペネロペだ。


「何となく来ました」

もちろん私である。久しぶりにアホになった。

二人の理由は入園の時に知っていたが、ルームメイトだけの秘密だった。


一学期の授業が本格的に始まる。

私をはじめ、リコとリズ以外の薬学科の生徒は、教室で薬師事務の講義を受けている。


「フワー、眠い」

ペネロペがつまらなそうに講義を聞いている。

「この授業、あなたが一番必要なことでしょ」

キャロルが注意する。家の仕事を継ぐペネロペにこそ必要な授業だった。


「リコとリズは一年生の講師になったのね」

「そうね、リコが魔法科でリズが薬学科ね」

キャロルとペネロペが話している。


「正式な授業だから、去年までの自習時間みたいに人だかりはできないでしょうね」

「そうでもないみたい、リコの授業なんか、魔法省からも見に来ているみたいよ」

一年生の一学期は基礎的な勉強だから、今までの先生でもいいはずだ。


「やっぱり、一般教育もリズに教わって方がわかりやすいんだって。初めは教壇に立っていた先生はリズに引き継いで、教室の後ろで立っているそうよ」

キャロルは見てきたのか。ずっと一緒にいたはずだが。


そういえば、この教室人の気配が少ない。

「ねー、ドナとシリルがいないよ」

私は、あまりにスカスカの教室を見渡しながら二人に聞いた。


「ああ、あの二人ね。ドナが『経営学を幼いころから学んでいます。今更こんな授業聞く必要はありません』って言って、シリルを連れてリズの講義聞きに行っちゃった」

ペネロペはドナが教室を出ていくところを見ていたようだ。


10人中4人いなければ教室がスカスカなのもうなずける。

そういえば、夏休みで友達になったナタリーはどうしているかな。


「アニス、夏休みの特訓で上達した私を見てください」

ナタリーがアニスに剣を向けながら叫んでいた。


「おいおいナタリー、いきなり何なんだ」

アニスは戸惑うが、ナタリーの真剣な目に相手をしてあげることにした。


カキン、カキン、カン、バシ、バシーン、シュッ、シュワー


最後の音は何だかわからない。とにかくすごい打ち合いが始まったのだ。

先生もあまりのことに手を出せないでいる。


「う、ううぉー。ナタリーそこまでだ、本気になりすぎると怪我をする」

二人の打ち合いが終わった。


「ナタリー、どうしたんだ。夏の特訓といったが何をしてきた」

「ええ、ミーナにマナを教わったのです」

「それだけで、そんなに強くなれるのか」

「あとは私の才能です」

ナタリーの自慢気に答えた。


「ミーナか、リズが教えていたな。まあ、そう言うことならそうなんだろう」

「これで、アニスと一緒に冒険ギルドの依頼に行けますね」

「ああ、いいだろう」

こうしてナタリーはギルド依頼の授業を受けることが出来るのだった。

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