26・二年生の春休みです
去年の春休みは、まだマナが使えず落ち込んでいる私たちに、キャロルの提案でドーツナの町に気晴らしに出かけた。
「今年の春休みはどうやって過ごそうか」
「ペネロペは何も考えていないの」
「考えてない、ミーナは」
「ない」
「お前ら暇ならどこか近場で旅に行かないか」
エマが誘ってくれる。
「でもお金かかるからダメ」
最近お金を貯め始めた私だ。
「歩きで行けば、食費だけだぞ、携帯食くらい俺が出してやる」
結局エマの提案で旅に出ることに決まった。
「行先は都市タクロアの往復だな、街道を行けば護衛がいなくても大丈夫だ」
「でも、宿代がかかるでしょ」
「安い宿もある。それに今まで野営していたところに冒険者ギルドで小屋を建てたんだ。ここなら冒険者カードで鍵が開けられるから自由に使えることになってる」
街道には宿場町があるが、離れていると間で野営をする。
野営に適した場所は限られる。安全のためにもみんながそこで野営をしている。
馬車や荷馬車の旅人はその中で泊まれるが、冒険者の多くは歩きの旅だ。
そこで冒険者ギルドが、寝るだけの施設しかないが、小屋を建てたのだ。
「えーでもそれだと、お風呂に入れない」
ペネロペである。毎日にお風呂に入れる学園の寮の生活に慣れきってしまったのだ。
「贅沢を言うな、ここが特別なんだ。卒園すれば毎日風呂に入るなんてできないぞ。それに、歩きの旅も経験しておけば、あとで何かの役に立つこともある」
タクロアまで歩きで四日、往復八日だと、10日しかない春休みではきつい。
「始業式までに帰ってこれるかな」
「身体強化して歩けば楽勝なんだがな、キャロルとペネロペは無理だな」
私はリズから身体強化を教わっている。長距離を歩くことで長時間身体強化を使う訓練になると言ってたからいい機会だ。
「よし、太っ腹の俺が帰りの乗合馬車代を出そう」
エマはここにきて同じくらいの年の女の子の友達が初めてできた。
一緒に何かしていたいのだろう。
思いたったら吉日、春休みの二日目の早朝に旅に出発した。
「エマ、ミーナ悪いわね」
「ごめんね、次は何かで返すから」
荷物は最小限にした。しかし、キャロルとペネロペには荷物をもって一日中歩くのが無理だった。
「平気だよ、これも身体強化の練習になるから」
二人の荷物を、エマと私で持つことになりました。
一日目は宿に泊まる、夕食付である。
「エマ、ここはどんな宿なの」
ペネロペが見るからにやすそうな宿に不安げである。
「ここは仕事の為の旅人用だな、遊びでないから宿泊料にシビアな客を相手にしている、だから料金がやすい。客が多く入っているから評判も良いのだろう」
確かにほぼ満室だった。
部屋は4人部屋を選んだ。
4人部屋と言っても旅は荷物が多い、実質二人部屋であった。
「狭い、狭いよー」
部屋のドアを開けるなりペネロペが驚いた。
「部屋の壁に棚がついているだろ、荷物はそこに上げるんだ、そうすれば4人何とか横になれるぞ」
確かにそうすれば何とかなる。
桶にお湯をもらってきて体をふく、当然風呂はない。
食事は食堂で食べる、人がいっぱいでむんむんしているので、黙って素早く食べて部屋に帰ってきた。
「安い宿はベッドや布団などない、持ってきた寝袋で寝るんだぞ」
エマはさっさと寝袋を用意して横になった。
「ねえ、これって夜露が防げるだ野営と変わらなくない」
キャロルが言うがもっともだ。
宿に泊まるのはここだけにした。あとは冒険者ギルドの小屋に泊まった。
ドアのカギに冒険者カードをかざすと鍵がある。
「この鍵って魔道具なの」
「そうだな、ここにきて新しい魔道具がいくつも出てきている、これもその一つだ」
あとで知ったが、冒険者ギルドの依頼でリコが作ったらしい。
予定通り四日で着く。
タクロアにはリコの母親の実家が有るので、調査に行きたいが。
「時間に余裕のある旅ではないぞ、旅をするのが目的だからな」
とんぼ返りだとエマは言う
夕方、タクロアの冒険者ギルドで安宿を紹介してもらった。
そして次の朝には王都に向かって出発だ。
「わーい、ラクチンだよ」
行きの歩きで疲れていたペンロペは乗合馬車にホッとしていた。
「乗合馬車だと一泊二日で帰れるな」
王都と都市を結ぶ街道は年々改良されている。移動時間も短くなったのだ。
『王国の道はどこも整備してあるな、何で私の国の道はあんなにひどいんだろう』
王国の暮らしに触れれば触れるほど、帝国の暮らしに思うものがあった。




