第9話 逸話性
とうとう第3門を突破した光。しかし次の門は更に難敵が待ち構えて居た。
一行は遂に第3門を勝ち取った。しかもお題は’愛’。
光のデザインに対する愛が難敵をぶち破ったのだ。
「拙僧も貴方の愛を確かに感じましたぞ。」
敗れた黒シャツがさり気なく恐ろしい事をほざいていたので一行は聞こえなかった振りをしてソソクサと階段を急いだ。
「しかし師匠。あの丸い球体は一体何だったんですか?」
花地が聞いたので説明してやった。
「弁当箱だ。中が2重になっていて内側の底には重しが付いて居る。内側の球体がロールで自由に動ける構造となっていてどんな角度にしようとも水平を保てて中身が偏らないという愛のある設計になっている。」
「...また機能一辺倒ですね。」
「仕方が無いだろう!それが俺の持ち味だと良い方に解釈できない?!」
自分で言っておいて弱点にしか聞こえないのだがそこは何時もの強気で押し通した。
とにかくこれで6,000ギラの半額、3,000ギラをゲットした訳である。
「次は幾ら貰えるのかしら?」
「次は一気に一人倒せば標準報酬で1万ギラの賞金が出ます。しかし...」
シローが口を噤んだ。
そう、次の第4門は通称、死門。
泣く子も黙るという僧正の親戚の息子達の仲の良い嫁姉妹が立ちはざかる最大の難所なのである。
パンフレットによると彼女達の名前は霊子と鯛子。貯蓄上手な主婦達とあった。
もちろん彼女達のレベルは相当に高く推定レベルがDL20(デザインレベル20)である。第3門をクリアした事で光には大きな経験値が入り、羽織やエロ組にもそこそこの経験値が入った。そして皆エッグレベルを超越し、デザイナーレベルに到達していたのだが、それでも今の光がDL4,羽織がDL2,エロ組が共にDL1であった。未だ未だ彼女達に勝てるレベルではなかったのだ。
そもそも第3門の推奨レベルがDL4なのでここに来て敵は急激に強化されている。
実際最終の第5門よりも死門の方が強いという噂があり、この逆転現象から言って寺が本格的に資金回収に来ているのは目に見えていた。
「しかし敢えて押して通る!」
ここでビビっていてはベテランレベル(DbL),神レベル(DkL)の強者達を倒すなど、夢また夢、あ~ポンポンと鼓の音が聞こえて来そうだからである。
勝算はあるのか?
いや、実は全くない。
あるのは只自分を信ずる心のみ、さあデザインナーバトルの開始である。
「おーほっほっほ。良く入らっしゃいましたお客様。参加費用の一人500ギラを頂戴します。」
彼女達が着る紅白のTシャツには分かりやすく’姉’,’妹’と書かれていた。
そして姉妹の応対は丁寧だった、しかし光が2,000ギラを支払うと妹が耳元で囁いた。
「お客様ぁ。次の第5門で勝てばすごく経験値が貰えますのよ?
でもその前にあるこの第4門はとても勝率が低いんです。
そこで、お客様の為に特別に5万ギラ頂ければ勝てる様に私達全力でご協力させて頂いていますの。」
「必要ない!」
「ええっ!ショック、こんな良いお話を拒絶されるなんて!」
妹の雰囲気が変わった。
「クククク!ギョホホホ!ならば身の程を知るが良い‼」
美しい淑女だった妹が突如巨大化すると醜い魚人と化した。鱗に覆われた肌はヌメヌメと生臭く歯並びの悪い口からは涎まで垂らしている。なんとこいつら妖怪だったのか?
「下門での試合は全て特設モニターでチェックさせて貰った。貴様は機能デザイン一辺倒で抽象的な題が苦手。所で抽象的って英語で言えて?」
「むむっ何だっけ?」
とぼけて見たがそんな単語はなっから知らないのである。
「そんな貴方に捧げるテーマはこれ、’逸話性’よ!」
おいおい、そんなの英語どころか日本語で言われても説明出来ないぞ?
「済みません、その逸話性って一言で言うと何ですか?」
聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥。仕方が無く光は思い切って質問して見た。
「ぷっ学歴低そうっ」
なっなんだとぅ!手前、アトラクションスタッフの癖にファンタジーに学歴を持ち込もうと言うのか?けしからん、不細工な魚人のくせに。
光はこっそりとポータブル端末を開くと’イツワセイ’と入力した。
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製麺所ばっかりじゃないか?
諦めてイツワで検索。
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わお。イツワってメジャーな名称なのね。って違うわっ!
そうこうする内に時間切れで先行の権利が相手に移ってしまい、バトルが始まってしまった。
読んで頂き有難うございました。
因みに製麺所の行は作者の実話でございます。