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第五章 蘇りし屍

年が明け、三学期が始まってから、一週間後の1月4日祐祐は授業を受けていた。

 祐祐は机に頬杖をつきながら周囲を見渡しながら、退屈そうに欠伸を噛み殺しながら授業を受けていた。

 (おーおー、皆寝すぎだろ。折角の授業でこんなにも熟睡できるとは金を捨ててるのと同義であろうに)

 祐祐は周囲のクラスメイトを見て追加で嘆息を吐く。

 教科書を見ながら祐祐は気持ちを切り替えノートを開き、ペンをとって授業に集中する。

 視線を左に移すと佑奈が涎を垂らしながら机に突っ伏して気持ちよさそうに寝ていた。更にその向こうでは翔が顔に教科書を乗せて寝ていた。

 (にしても……)

 祐祐は数日前のイシュチュル社のプラントでの出来事を思い返していた。

 (あの、メガネの男は何だったんだ。それに、隣にいた怪物は今の俺では到底太刀打ち出来そうに無いよな……だが、一番の問題は奴等じゃない。亮喜……奴は俺に何を隠しているんだ。……そう言えば奴とは大昔からの中だが、何を考えている課は昔からわからなかったな)

 思考がそこまで行った多所で教師に当てられ教科書を読む事になったので、教科書を開きながら立ち、指名された部分を淡々と読み始める。


                    *


 三時間後 昼休み

 いつもの通り何処からともなく現れた真二が後ろから肩を組むようにして声を掛ける。

「どうしたよ祐祐君よ。暇そうにしてさ」

そう言いながら、昼飯も食べずに頬杖をつき、グランドを眺めていた祐祐に話しかける。

「ん?あぁ、みんな若くて元気だなって思ってさ。わざわざこんな辺境の校舎に飛ばされてんのにさ」

「はっ、な~に爺臭え事言ってんだよ。お前も十分若えじゃねぇか」

「そ、そうだな。お前は外で他の奴らと遊ばなくて良いのか?」

祐祐がそう聞くと、真二は分かってねぇなと言った風に首を横に振る。

「お前なぁ、俺はそこまで子供っぽくねぇよ。それにわざわざこんな寒い日に外に出ようなんて思わねぇよ」

「にしてもさ。お前俺以外に友達とかいないわけ?何かと付けて俺の所に絡みに来るが」

「いるが全員他のクラスだ。それに、お前にはちょっと興味があるしな」

「えっ?お前ってあっち♂系?」

 祐祐はドン引きしながら冷汗を額に浮かべ後退る。

 「違う、違う。そう言う意味じゃねぇよ」

真二は笑いながら、手を横に振りながら否定する。

「んじゃぁ、俺は購買でなんか買って来るわ。じゃぁな」

そう言って真二は背を向け何処かへ立ち去っていった。

(俺が気になるのは君の能力だけだよ。同類の山中 祐祐クン)

その時真二が爬虫類めいた笑みを浮かべていた事など祐祐は知る由も無い。

 真二が立ち去ってから瞳が近寄ってくる。

「祐祐さん三本君と何を話していたんですか?」

「ん?当たり障りのない日常会話だが?それよりその敬語はどうにかならないのか?」

「一応善処してみようと思います」

「で?なんでわざわざ、そんな事を聞いたんだ?学校でクラスメイトと喋るのなんて普通だろ?」

「そう、何ですけど……三本 真二。あの人には色々と不穏な噂が耐えない人でしてね」

 普段の真二からは想像もつかない事であった。

「その、不穏な噂ってのは具体的には何なんだ?」

「そうですね。代表的な物を一つ上げれば、夜の繁華街で目撃されている上にその時は何故かヤクザの方々と一緒だったなんて言う噂が流れているんですよ」

「それは確実なんだろうな?」

「はい」

それを聞き祐祐は嘆息を漏らす。その後顎に手を当て数瞬何かを考えていたかと思うと、返答を始める。

「その件については俺自身で探るないしは付けてみるから手を出さないでくれ」

「了解しました」

「あと、学校では過度な接触を避けるようにな。話は終わったんだ俺は失礼させてもらうぜ」

そう言って祐祐はポケットに手を突っ込み椅子から立ち上がると何処かへと消えて行った。


                     *


 放課後対イシュチュル対策本部訓練室にて。

 祐祐は迷彩柄のカーゴパンツに黒一色のタンクトップという服装に自動式拳銃を二挺を両手に保持するという格好で、目を閉じ精神統一を行いながら立っていた。

 次の瞬間、心臓と頭部に赤い印が付いた人型の的が祐祐の後方に現れる。

 祐祐は見向きもせずに右手の拳銃を後方に向け、二回素早くトリガーを引き、的確に心臓と頭部を撃ち抜く。その数瞬後的が倒れる。更に前方の上方から、新たに三枚の的が現れる。

 祐祐は新たに六回連続トリガーを引き今度も的確に心臓と頭部を撃ち抜く。

 祐祐はゆっくりと息を吐き、全身から力を抜く。

 その後目の前に大きめのウィンドウが現れ、能力無発動時の結果と今回の訓練の結果が同時に表示される。

 『どうだった?今回の訓練は特に体に異常はないのか?』

訓練終了後すぐに耳に嵌めていたインカムから亮喜の声が聞こえる。

 祐祐は前回の戦闘から課題を見出し、現在能力を二つ以上同時に発動する訓練に掛かっていた。

 祐祐の能力は一日の内三十分しか使用できないという制約がある。その上、能力を二つ同時に発動すると、発動時間自体が半分―― 一日十五分が能力の発動限界時間になるという弱点もあった。だが、それは同時発動している能力がフル発動の時のみで、発動させている能力を五対五のようにセーブしていると発動時間は変わらない。

 更に今までの訓練で祐祐は自らの能力の真価に気づきつつあった。

 祐祐は今まで自らの能力は限られた身体能力の向上しかする事が出来ないと思っていたのだが、実際はそうではなく、部分によって圧倒的な差ではあるが自らの体であればどのような部分の機能でも向上させる事が出来るという事だった。

 だが、今はまだ慣れておらず、限られた場所の強化しか出来ない。

 今回の訓練では祐祐は触覚と計算能力を七対三の割合で発動させていた。

 祐祐は的がで出来る時に生じる空気の振動を肌で感じ、更に卓越した計算能力で場所の詳細を予測し、的確に狙い撃っていたのである。

 その後、両手に保持している自動式拳銃を出口付近にある机に置き、身を翻し部屋を出て行く。

 部屋を出るとドアの横に腕を組み、カーゴパンツに白色無地のTシャツを着て立ったまま目を閉じている翔がいた。

 祐祐は翔の方へ向き直る。

 それに気が付いた翔は無言で何処かへ向け歩みを進める。祐祐も同じく無言のまま翔の後ろについて行く。

 翔は小道に入りその先にある部屋に入る。祐祐もその後ろに続き部屋に入る。

 部屋に入ると、翔は屈伸をしたりして準備体操をしていた。

 「今回の能力発動は動体視力と瞬発力だがいいか?」

その問いに対して翔は口で答えるのではなく、只々コクンと頷いただけであった。

 翔は半身になり構える。祐祐はそれを見ると鏡に映したように同じ構え能力を発動させながらとる。

 二人の間に静寂が流れる。どれ位が経っただろうか。

――数秒か。

 ――いや、数分が経っただろうが。

 二人は同時に肉薄。翔は拳を祐祐の顎に向けて、祐祐は掌打を翔の鳩尾へ向け、それぞれ繰り出す。

 祐祐の攻撃が先に敵の鳩尾にヒットするが、翔はそれを意に介さずそのまま直進祐祐の顎に拳を叩き込んだ。

 かに、見えたが、祐祐は拳をギリギリの所で受け止めていた。

 だが、翔は拳を引きもせずに、そのまま右足で祐祐の腹部を蹴り上げる。

 流石の祐祐もそれを避ける事も出来ずにまともに食らい、後方へ吹き飛ぶ。

 祐祐は手をつき、空中でバク転体勢を立て直すと地面を思いっ切り蹴り翔の懐に目にも止まらない勢いで肉薄。両手で的確に人体を破壊するのに特化した掌打を繰り出す。

 「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼」

翔はそれまともに食らい体が地面から浮く。

 「グフッ」

口から血を吐き、昏倒する。

 翔は無理やりに態勢を立て直す。立て直しざまに祐祐の顎に蹴りを入れ、カウンターを入れる。

 祐祐は後方に大きく跳び退き、距離を離そうとするが翔はそれを許さず後に追従する。だが、それは祐祐の罠であった。祐祐は後方に跳び退いたベクトルを使い翔の右側から回り込み、掌打では無く左拳を脇腹に叩き込む。

 翔平は脇腹に力を入れ、筋肉の鎧を作り出す事により内臓へのダメージを最小限に抑える。

 それを能力によって鈍化した世界のお蔭で見切った祐祐は回り込んだ時の勢いを殺さず、そのまま背中に組み付きバックドロップを叩き込んだ。

 そのまま大人しく技を食らう翔では無く、空中で受け身を取り、カウンターで投げ返した。

 「ガハッ。だー‼今日も負けだッ‼」

そう言い肺から空気を吐き出しながら、祐祐は身を投げ出した。

 翔は特に何も言わずに無言で足早に部屋から出て行った。

 「お疲れさん」

そう、言いながら入れ替わりで学校のブレザーコートと、スカートにニーソという格好の佑奈が退屈そうな顔をしながら入って来ると、壁の一角に手を当てる。すると、壁の一角がせり出て、その中から柄が木製で刃が車のタイヤ等にも使用されている炭素ゴム製の槍を取り出す。

 祐祐も立ち上がり、壁に手を当てこちらは炭素ゴム製のサバイバルナイフが六本入っているポーチを二つ取り出し、左右の腰に着ける。同じく炭素ゴム製の日本刀を取り出し、鞘ごと背中に背負う。

 「大丈夫?また、負けていたようだけど?」

「大丈夫、大丈夫。俺に怪我は関係ないからな」

「あら、そう。なら良かったわ。手加減なしでボコす事が出来るわね」

佑奈はそう、無慈悲な一言を言い放ちながら満面の笑みを浮かべる。

「ちょっ、おま、待った。な?ほ、ほらやっぱり怪我してるし、体中痛いな~。なんて」

「大丈夫。どちらにしろボコすつもりだし」

「ひっで」

 そう言いながら祐祐は右手で日本刀保持、左手にサバイバルナイフ保持し構え、臨戦態勢に入る。

 それを見て佑奈は槍を構える。

「能力は動体視力と反射神経だぞ」

「了解」

 佑奈はそう言うと、地面を蹴り一思いに肉薄。槍の切っ先を下から掬い上げるように、袈裟掛けに切り上げる。

 祐祐はそれを右手の日本刀で軌道をずらし、左手のサバイバルナイフで佑奈の心臓を狙う。

 佑奈は槍の柄でそのナイフを弾き飛ばす。

 祐祐は佑奈の腹に蹴りを入れ距離を開けさせる。その後態勢を崩され体重が後ろに偏っている佑奈の顔面に向けて左手のサバイバルナイフを投げつける。

 佑奈はそのナイフを口で止め、噛み砕く。

 「嘘だろ……」

祐祐はそれを見て驚愕する。

確かに、本物のナイフではなく、炭素ゴム製なのだが、それでも顎で噛み砕けるほど軟な物では無い筈である。

 佑奈は驚愕し、たたらを踏んでいる祐祐に向かって先程のお返しとばかりに、蹴りを腹に叩き込もうとするが、強化された動体視力と反射神経によって軽く躱されてしまう。

 強化していると言っても、それぞれ五対五なので、そこまで強化されてはいないのだが、銃弾では無く人間の蹴り程度であれば問題は無かった。

 祐祐は空中でバク転をしながら避けた後、地面を蹴って前に出ようとする。

 佑奈の右脚の筋肉が強張り蹴りの前兆を見せる。

 強化された祐祐の動体視力にとってそれを見破る事は造作も無かった。

 祐祐は繰り出された佑奈の蹴りを左手で掴みと、全身の体重を目いっぱい乗せて壁に向け投げつける。

 佑奈は空中で態勢を立て直し、壁を蹴り槍を前に構えながら突撃する。そのまま槍を空中で構え祐祐の顔面に向けて投擲する。

 当然それを見切っていた祐祐は上半身を逸らしそれを躱す。

 だが、佑奈はそれをあえて狙っていた。

この基地内では佑奈は随一の槍使いだという事は周知の事実である。ただし、槍の扱いに特化してはいるのだが、それ以外の戦闘技術はからっきしだと認識されていた。

 だが、それは間違いであった。佑奈は今まで翔にしか見せていなかった奥の手を使用する。

 佑奈は上着の右手首から、先にかえしの付いた鋭利な針が付いたバンド状のワイヤーケースを取り出し、そこからワイヤーを露出させ、祐祐目掛け投げつける。

 祐祐は右手の日本刀でそれを弾き返す。

 だが、佑奈が飛ばしたワイヤーは何も一本ではない、左手首からもワイヤーを飛ばしており、祐祐の背面の壁にそれを撃ち込み、ワイヤーを高速で巻き取り体を祐祐に向けて急接近させ、そのままベクトルを保持したまま祐祐の顎を蹴り飛ばす。

「テイリャァァァァァァァァァッ‼」

 祐祐の現在の弱点は戦闘中の情報取得をその圧倒的な動体視力に依存しきっているという点だ。そのため上体を逸らされ、視界から自らを消して見せた後ワイヤーで追撃という佑奈の攻撃は躱しきれなかったのである。

 「クッ」

 蹴りによって、吹き飛ばされた祐祐は右手の日本刀を佑奈に向け投げつける。

 その対応に追われた佑奈は愚かにも祐祐から目を離してしまった。その僅かな隙に祐祐は地面を一蹴りし、五メートル以上もあった差を詰める。

 祐祐は右拳によるストレート、左拳のジャブ、をそれぞれ、鳩尾と顔面に叩き込み、最後には腹を蹴り上げ、五メートル以上上空に打ち上がったユナを追うようにして、サバイバルナイフを抜きながら跳躍し、右手のサバイバルナイフで袈裟掛けに切り上げ、左手のサバイバルナイフで逆袈裟掛けに切り下げ、最後に両腕をそろえて右から左に横一文字に薙いだ。

 この連撃によって体中を痛めつけられた佑奈は受け身をとる事が出来ずに背中から落ち、軽い脳震盪を起こしながら、肺に溜まった空気を強制的に吐き出させられる。

 「ガハッ」

 祐祐は勝利を確信し、サバイバルナイフを両腰のポーチにしまう。

 「だから、あんたはいつも負けるのよ」

次の瞬間佑奈の拳が祐祐の能力を持っても回避不可能な速度で目の前に迫っていた。


 「だぁぁぁッ!負けたぁぁぁぁッ!」

そう言いながら、本日二度目の敗北宣言をしながら、身を投げ出す。

 「どうだ?調子は」

 そう言いながら、全身に万遍なく筋肉が付いた老人――亮喜がニヤケながら杖を突き、近づいてくる。

「全く駄目だ。また負けちまった。やっぱり俺には圧倒的に接近戦での経験が少ないんだよな」

 「いや、翔との訓練はそうだったが、佑奈とのは明らかにお前の油断だろ」

「うっ、そう言われれば言い返しが出来ねぇ」

 そう言いながら、祐祐は項垂れた。


                   *


 「お帰りなさいッ‼」

 そう言いながら高校二年生の娘が、台所から顔を出す。

 「あぁ、ただいま」

久しぶりの帰宅一番に愛する娘――由惟(ゆい)の顔を見て安堵しながら、メガネの男――闇導(あんどう) 啓吾(けいご)は笑顔で答える。

 「ねえ、一週間前の海上プラントでの一件どうなったの?」

「あぁ、あれね。あれはウチの捜査部が目下捜索中だとさ」

「ねぇ、それより、どうだった噂の能力者?」

啓吾は顎に手を当てながら話す。

「うん、やっぱり由惟の能力とは全く違うものだったね。由惟の様に物質を対象とした能力を持つものは少ないようだね」

「その人はどんな能力だったの?」

「う~ん?純粋な身体強化系だったかな。けど、面白かったね。通常の能力であれば、kん力強化のみと言った具合に一つしか強化できない筈なんだが、同時発動は無理とはいえ、回復力の増加まで見せていたからね。それにその回復力増加は片腕を吹き飛ばされても、ものの数十秒で完治させていたからかなり強力な物だろうね」

「そっか、楽しみにしてたのになぁ」

由惟はさも、残念そうに肩を落とす。

「まぁ、そこまで気にしなくては良いでしょう」

そう言って、啓吾は由惟を慰める。

 「ただいま」

そう言いながら、啓吾の息子であり、由惟の年子の白髪の弟――勇(ゆう)が帰って来る。

 「姉貴~、今日の晩飯は何なん――って、おわッ⁉親父?帰っていたのかよ」

「えぇ、帰って来ていますよ」

「なぁ、この前の試作兵器の試射実験の時に新OSを使ったんだが、あれは辞めといた方が良いと思う。あれを使った三十分後ぐらいに精神汚染が来たからな。俺でも平常心を保っておくのがやっとってレベルだった」

「そうだったのか、それはすまなかった」

そう言いながら、啓吾は頭を掻く。

 「はいはい、二人とも話はそれぐらいにして、あと五分でご飯が完成するから早く片付けて」

由惟がそう言いながら手を叩くと二人して片付け始めた。


                    *


 都内某所地下にて

 「グルァァァァッ‼」

 邪悪そのものを体現したかのような黒色の檻から、中からこれも同じく黒光りする黒光りする黒色の人間の腕が四本伸びる。

 その腕を警備服を着、帽子を顔の判別がつかないほど深くかぶっている男が冷ややかに見つめる。

 深淵と続いていると錯覚するほどの闇が続く廊下の向こうから、一人の女が悠然と歩いてくる。

 女は白衣に身を包み、踵の高いピンヒールを履いており、肩までしかない金の癖っ毛で、葉巻を口にくわえている。

 「被験体の様子は変わりないな?」

警備服の男は頷くと、踵を返し闇の向こうへ消えて行った。

 「どうだい?気分は」

「グルァァァァッ‼」

女の問いに対して二匹の人型の被験体は只々吼えるだけであった。

「あぁ、やっぱり、言葉を理解する事は出来ないか。なに、期待はしていないよ。フフフフッ」

女は一人不気味な笑みを浮かべながらブツブツと喋りはじめる。

 女の名は――戸森(ともり)凜(りん)イシュチュル社の研究者である。同じイシュチュル社の研究者である啓吾は兵器開発部門。対して凜は化学兵器開発部門なのだが、最近は啓吾が凜の部門を侵食しつつあり、その上向こうの方が高性能の物を作り出すため立場が無かった。

 だが、凜はかねてより進めていた特大の計画が成就しようとしていた。

 (フフフフフッ、やっとこの瞬間が来た。あの優男にいつまでも負けているのは我慢ならないからな。だがしかし!今日で終わりだ)

 心の中で言っていたのだが、段々と表に出、高笑いを始める。

「アハハハハハハッ……。さてと、最後の仕上げに取り掛かるか」

そう言うと、檻を開け平然と中に入る。

 勿論檻の中に居る謎の生物は襲い掛かるが、凜は目を向ける事すらせずに手首を掴み捻り上げる。

 「グルァァァァッ」

凜は腕に力を入れ、一思いに謎の生物の腕を引きちぎる。

 もう一体の謎の生物が横合いから襲い掛かるが、そちらも目を向ける事すらせずに右脚の蹴りを顔に叩き込み、首を吹き飛ばす。

 引き千切った腕と、死体を掴み、檻から出て行く。檻から出た凜はそのまま先程来た方向と反対側――壁の前に立つ。すると、その壁は開く。

 その中にはこの研究所でこの場所で凜しか知らない極秘研究所が広がっていた。

 その極秘研究所内には様々な極彩色の薬品や、アンプルなどが並んでいた。

 凜はその中から、緑の水槽に先程調達したばかりの死体と腕を投げ入れる。

 少しばかりの時間が経つと、死体と腕は段々と細かく剥がれるようにして分離していき、最終的に緑の薬品に全てが解けだした。

 死体の解けだした薬品はそのまま、違う水槽に流れ込む。その水槽の中には体の各所にチューブが繋がれ、酸素マスクが繋がれ、頭にNO,00と書かれた禿頭の男が入っていた。

 水槽内が薬品に満たされると、禿頭の男は暴れはじめる。

 少しすると、禿頭の男は暴れるのを止める。

 数瞬後水槽の表面に亀裂が入り、決壊する。

 中から男は体中のチューブを引きちぎり、ゆっくりと眼を開けながら出る。外に出た男の各所に開いていた穴は瞬時に全て塞がる。

 男の正体は凜の元彼氏――宮寺(みやじ)明里(あきり)で、三年前交通事故で死亡した筈であった。

 そう、凜の実験とは人類最大の禁忌、蘇生である。

 凜が明里に注入した薬は先程の謎の生物の細胞が解けだした薬品――謎の生物はこの世に存在する各環境に特化した能力を持つ生物の遺伝子を組み合わせたものだったが、体が耐えきれずに理性を失っていたものである――それの細胞を注入する事によって理性を保ったまま肉体を強化しようという事である。

 実際それは成功し、死んだ明里を生き返らせるのに成功したと言う訳である。

 凜は明里に近づこうとするが、途中で足が止まる。

 ゆっくりと視線を下ろし、その先にある物を見て凜は驚愕する。

 その先には腕が刺さっており、それは明里の手であった。

 「ガハッ、な、なにを?……明里?」

「すまないな、凜。生き返らしてもらった事には感謝しているけど、ごめん。ここでお別れだ。俺にはする事があるんでね」

 そう言うと明里は腕を上に向ける。すると掌から細い針が目にも止まらない速さで射出される。――射出された貼りはアンボイナガイと呼ばれる生き物の物で、本来はコノトキシンと呼ばれるジャガイモの目に含まれる神経毒が付いているのだが、明里が発射した針には代わりに王水が付いていた。

 発射された針は地面を穿ち、地上まで貫通する。

 明里は地上に出て久方ぶりの太陽を雪と共に拝む。

 「ふぅ、久しぶりの外だな。待っていろよ山中 祐祐ッ!」

怨念のこもった視線を空へ向ける。







お久しぶりです。サオです。

かなり、文体が変わっているとは思いますが、あまり気にしないで下さい。

今回はかなり早く、書けたかと思います。

今回は伏線を張り過ぎたかな~なんて思ったり、しなくも無いんですが、まぁそれは僕の悪癖だと思って勘弁してください。(笑)

かなり深めの伏線を二本ほど張ったんですが、この先の展開は全くと言っていいほど考えていません(笑)

はたして回収は出来るのか⁉

という事でまた次の話で!


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