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スマラグティー国内の浄化の旅が始まった。
第二騎士団は慣れたものだ。
今回のスマラグティーの浄化の旅には、前回と同じく第二騎士団から二十人が同行している。
ウィリディスの時にも一緒に巡った子たちが半数、今回から参加になった子たちがもう半数。
この子たちもスマラグティーに入ってから王都までの浄化の時に魔獣と戦ってだいぶ慣れた。
うちの子たちは優秀だからね!
本当は、聖女の派遣契約の内容では、ウィリディスの第二騎士団は魔獣とは戦わない事になっている。ウィリディスの騎士団は私を守るためだけと。
だけど国境から王都までの浄化時の討伐で、スマラグティーの騎士を労い褒めている私を見たうちの子たちは、自分たちも褒められたいと魔獣討伐に参戦するようになってしまったのだ。
それは澱みを巡る浄化の旅になってからも変わらない。
本当に、この世界の聖女信仰は困ったもんだわ…。
でもまぁウィリディスの時も、祈る私を守るのは十人くらいだったし、一年やって慣れているうちの子たちと連携して、スマラグティーの騎士たちも魔獣の討伐が上達したし、結果オーライかな?
私は奪われてはならない大事な大事な聖女様だけど、自国が浄化してもらっている間はスマラグティー側も無闇な事はしないだろうしね。
そういう訳で、私を奪おうとするなら他国と思われる。
その辺はエミルがばっちり対策してくれているから大丈夫!
大陸一の大魔法使いの称号は伊達ではないのだ♪
王都を出発して、一ヶ月がたった。浄化の旅は順調だ。
今日は移動日で、休憩中に川で洗濯をする事にした。
ウィリディス含め(隣国なのでそれほど風土は変わらないと思われる)スマラグティーにも四季なんてもんがあって、今は暑い時期の終盤くらいかな?毎日たくさん汗をかくのよ。
ルイーセと女性騎士ちゃんたちと洗濯物をもって川に行く。
聖女様だけど自分の分は自分で洗うよ!下着もあるしね、他人に洗ってもらえないよ!
一緒に洗濯をするけど、女性騎士ちゃんたちは護衛も兼ねている。
男性騎士君たちは少し離れて護衛に立つ。
何故離れるのか?
洗濯ついでに水浴びもするからだ。
暑い日に、きれいな川の水があって水浴びしないでいられないよ!
町の(高級)宿屋さんなんかだとお風呂もあるけど、テント暮らしにお風呂はないからね。
外なのでもちろん全裸にはならないけど、水着なんてないし、薄いワンピースを着て水に入る。
薄い布地は、濡れればぴったりくっついて身体のラインをはっきり見せてしまう。見ようによっては全裸よりエロいかも。
という訳で男子諸君は離れて護衛するのだ。
女性騎士ちゃんも薄着になるんだけど、まぁまぁ!!男子の筋肉と違って、しなやかさを感じる女性特有の筋肉というのも美しい!
鍛えれば女子でも腹筋が割れるのはテレビで見た事はあったけど、間近で見る迫力よ!
女性騎士は少なく、この子たちは(みんな年下)前回の旅からずっと一緒に過ごしてきている。
憧れの、崇め奉る対象の聖女様にも少しは慣れてくれていて、水をかけあったりキャッキャと楽しんでいると、いきなりバチッと衝撃を受けた!
いきなりだったし、静電気みたいな鋭い痛みに驚いて、私は滑って転んでしまった。
ビックリして水を飲んじゃったよ!
きれいに見える水だけど川の水だ、飲んじゃって大丈夫か!なんてむせながら考えていると「「聖女様!!」」とみんなの焦った声が聞こえた。
あれ、なんかまずいの?
後から、あれはウィリディス以外からの魔法接触をはじいたエミルの防御魔法と聞いたけど、その時は何だかよくわかっていなかった。
他所からの魔法の接触も初めてだったしね!
それより水を飲み込んだ私は激しくむせていて、そっちの方が問題だった。
私は一応泳げる。日本の義務教育では体育に水泳があるからね。
だけどそれは流れのないプールだし、私はむせているせいで半分溺れているような状態だった。
上手く呼吸ができない川の中で助けを求めた目がとらえたのは、やっぱりというかロイだった。
贔屓はしない聖女様だけど、命の危機に瀕した時って本心が勝つのね。
聖女様の一大事に、川の中に入ってくる騎士たちの中で、私は必死にロイに手を伸ばした。
すぐ近くにいた誰かの手ではなく、ただロイだけに。
というか、その時は周りが見えていなかったんだけどね。
私を抱き上げたロイはギョッとして大声で号令した。
「皆、背を向けろ! 次の攻撃に備え!」
そうして私を見ないように真っ直ぐ前を向いて歩き出した。
あぁ、私のこの姿か。
近くにいて事情を察した騎士たちが一斉に背を向ける中、私はというと、咳と一緒に飲み込んだ水を吐き出している。
ただの水とはいえ、吐いている水がロイにかかっていて申し訳ない!
咳の合間に、切れ切れにロイに謝る。
「お気になさらず、全部吐き出してください」
気にするよ! ゴホゴホ
ロイは薄着の身体を隠すように足早に女性騎士ちゃんの元に行き、一番逞しい騎士ちゃんに私を託した。
「聖女様! 申し訳ありません!」
「「聖女様! 聖女様!」」
「ルイーセは何も悪くないよ。みんなも(顔面蒼白な女性騎士ちゃんたち)悪くないからね!
ロイ、ありがとう」
「まずはお身体を温められてお休みください。野営地までは我らが命に変えましてもお守りいたします!」
さっきまでの心配顔とは変わって、ギラギラした怒りの表情で言う。
怖いし…。
抱きかかえてくれている女性騎士ちゃんを見ると、ロイの怒りが移ったようにギラギラしているよ。わぁ。
これはもしかして…。
そっと周りを見回すと、その場にいた騎士たち全員は私を心配していた青い顔から、これは赤を通り越しちゃってるんだろうなとわかる、もの凄い怒りで(こんな表現があるかわからないけど)白ざめている。
怖っわ!
私と同じように怖がってないかとルイーセを見ると。
ルイーゼさんや、あなたもかぃ。
美人の怒り顔の恐ろしさを知った。
私の拉致未遂事件はここだけで収まる訳もなく、抱きかかえられて野営地に戻った私を見たアルベルト達はいきり立った。
実際コンラードから発せられる怒気と威圧で、周りの木々から鳥が飛び立ったほどだ。
マンガみたい。すごいな。
接触を弾いた魔法に気づいたエミルも、ウィリディスの宮廷から飛んできて(文字通り転移魔法で)犯人探しを始めた。
大陸一の大魔法使いの本気の捜索。見つからない訳がないよね。
私を奪おうとしたどこぞの国はあっけなく見つかり、どんな目にあわされたのかは聞かされてないけど、まぁあの怒りを見たらただではすまなかっただろう。
自業自得だけど、お気の毒に。




