020 盗賊?
俺達は王都を出て、地竜が引く馬車でフカクオ公爵領に向かう。
御者席には聖騎士リンとコボルトのコウキが座る。
馬車の中には俺とジジイ。
公爵令嬢カノンと一緒に居た、執事っぽい服を着てた老年の男性、暗部の前隊長、名前はケントと言うらしい。
このジジイ、レベル52で相当強い。
決闘で負けて俺の部下になった。
攻撃力増し増しの上、痛み100倍の魔王の手甲で、しこたま殴った怪我はリンの回復魔法で治療している。
フカクオ公爵領の道案内の為に、同行を許した。
馬車は馬の倍の速度で走っている割には、揺れが少なく快適な乗り心地だ。
教主レンが大金を叩いて買ってくれたのだろう。
「タクミ様、この先で馬車が襲われている様だワン。」
コウキが御者席から俺に伝える。
「ふ~ん。遠目で見えるところに止まって様子をみよう。」
「畏まりました。」
リンが答える。
テンプレまた来た~。
盗賊に襲われる貴族令嬢。
または大商人かぁ?
撃退出来るのに、助けても意味が無いからね。
先ずは状況確認だな。
馬車が遠目に見える位置に止まる。
馬車を降りて、王家の宝物庫から奪った双眼鏡で様子を窺う。
コボルトが馬車を襲っていた。
盗賊じゃ無いのか
どうやら、馬車の護衛の冒険者達が優勢の様だ。
「タクミ様、コボルトを助けるのですかワン?」
「へ、何でコボルトを?」
「どうやら、コボルトの家族があの馬車に攫われた様ですワン。『家族を帰せええ』と言ってコボルトが戦ってるワン。」
「おお、俺には聞こえないけど、コウキはこの距離で聞こえるんだね。」
「聞こえるワン。」
「リン、ジジイ、どう思う。」
「タクミ様の御心に従います。」
「通常はコボルトは助けませんな。」
「ふむ・・・。」
どうしよっかな。
コウキがキラキラした、期待の眼で見てるんだよなぁ。
多分、自分が奴隷になった際の事を思い出してる様だ。
王家の宝物庫から奪った魔道具で、何か有用な物があったかな?
お、これはっ!
「ちょっと試してみて、出来そうだったら助けよう。コウキ、俺は正義の味方じゃ無いから、助けようと思うのは今回だけだぞ。」
「やったワン!有難うワン。承知しましたワン。」
俺は時を止めて走った。
レベルが上がって、走る速度も上がってる様だ。
疲れないし。
コボルトが馬車を襲撃している現場に着いた。
馬車の中を確認すると、コボルトが数体檻に入っていた。
檻を壊して、コボルトを外に運んだ。
ついでに商人の荷物から金貨を奪う。
はは、俺って悪よのぅ。
馬車の中には商人らしきオヤジ1人。
外には、冒険者6人。
アイテムボックスより王家の宝物庫から奪った魔道具『雷の杖』を出す。
商人と冒険者達に『雷の杖』の雷撃を弱く当て、気絶させた。
時を動かす。
「コボルトの皆さん、俺は神の使徒タクミだ。家族は助けました。ここは俺に免じてこのまま家族と一緒に帰ってくれないか?」
コボルト達は驚いて俺を見ている。
コボルト達が俺の言う事を聞かなかったら、戦うしかないか。
「お父さ~ん!」
囚われていたコボルトの子供達が、助けに来たコボルト達に抱きつく。
「タクミ様を信じます。私はこの群れのリーダーでコボルです。有難う御座いました、このまま帰ります。このご恩は忘れません。何かあれば何時でも駆け付けますので、仰って下さい。」
「信じてくれて有難う。怪我した者にこの回復薬を使ってくれ。」
旅用をに購入していた回復薬を数本コボルに渡す。
コボルト達は回復薬で回復し、家族達と帰って行った。
俺はリンとコウキ、ジジイの元に走って戻った。