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「っ?」

「どうしたのルフェ?」


 王都ログラインをルフェとアイネの二人が歩いている。アイネの買い出しについていく荷物持ちのようだが、アイネにとっては半ばデートのようなもの、もしくはその練習のようなものである。その途中にルフェが何かを感じ取ったかのように後ろを振り向く。


「……数が」

「数?」

「っ! 速い!」

「ちょっとルフェ?」


 ルフェは王都の外から王都へ向かってくる魔物の動きを感じ取れる。しかしルフェ以外、アイネのような何もわからない人間にとってはただ一人でしゃべり動いているだけにしか見えないだろう。アイネはあるていどルフェのことをわかっているのでまた何かあったのか、くらいには思っているが結局何が起きているかわからないためルフェに訊ねることしかできない。


「アイネ、王都で何か起きた場合何処に避難すればいいかっていうの知ってるか?」

「……ちょっとそれはわからないわね。一度宿の方に戻る?」

「荷物もあるしな……しばらくは持つ……いや、抜けてきてる」

「え?」


 王都ログラインには防壁があり、各入口に騎士が配置されている。その護りは完璧とは言えないかもしれないが、魔物の群れに対処するだけの戦力は存在するはずなのである。しかし、その騎士たちをもってしても、魔物の群れの数は多くその一部の街中への侵入を許してしまっている。それをルフェは感じ取っている。


「あー、これはやばいか? ちょっと加勢に行かないと……荷物は……ああ、面倒くさいな」

「ちょっとー、ルフェー?」

「アイネ、これとりあえず持てるだけ持って」

「え……ああ、うん、わかったけど……」


 ルフェの持っていた物を抱えれられるだけアイネが抱えて持つ。押し付けられたような感じではあるがこういう時はルフェに従った方が安全なのを村での魔物の襲撃の時のことなどからも経験で理解している。


「よし、じゃあ持つぞ! 舌噛むなよ!」

「えっ!? きゃっああああっ!?」


 荷物を抱えたアイネをそのまま横抱きに抱き上げそのまま地面を蹴って跳びあがる。王都の建物は平屋だけではなく二階建て、場合によっては三階建ての建物などもあってなかなか背の高い建物が多いが、それを気にすることなく悠々とジャンプでその屋根の上に乗っている。そしてその屋根の上を乗り継ぎ王都の宿のある方向とは反対側の方へと駆けて行く。それもものすごく早く。

 そういう状況に持ち込まれたアイネの方はたまったものではない。そもそも宿に戻るのではないかと話しているところにいきなり抱き上げどこかに連れていかれるのである。ルフェのことを信頼しているとはいってもこの状態は厳しいものである。しかしその速度はなかなかのものでその中で口を開けば舌を噛むかもしれない、先にルフェから注意されているため言いたいことがあっても何も言えないでいるのである。

 そのままルフェは屋根の上を風のごとく駆け抜け、中央にある王城を回り込みながら反対側への入口へと向かう。そして近い場所、入り口付近の平屋の建物の屋根の上にアイネを降ろす。


「悪いけどちょっと待っててくれ」

「え? おいてくの? 降りれないんだけど!?」

「いや、降りたら危ないからここで待ってほしい。ここなら魔物も登っては来れないだろうし」


 そう言ってルフェは下へと降りる。


「ちょっとー!? 何が起きてるかくらい話していきなさいよー!?」


 その叫びをルフェは聞き流しつつ、ルフェはアイネを置いて入り口の方へと地面を蹴って跳びあがって去っていった。






 王城の入り口、その一角では魔物の群れに配備されている騎士たちが総力で当たっている。しかし相手は群れ一匹二匹ではなくかなりの数がいる。それを入り口に配置されている騎士だけで相手をするのは無理があるというものだ。騎士十数人に対し魔物が三十程、人間の一部隊対獣の群れと考えれば不利なのはわかるだろう。現に抑え込んでいるとはいえ魔物の群れの一部を幾らか王都内部に侵入させてしまっている。


「くっ! これ以上は中に入れるな!」

「ですが隊長! そもそも俺たちもやられるかもしれないんですがっ!」

「泣き言を言うな! 死なない限りどうにでもなる! 死ぬ気で抑えこめ! 応援が来るまで持ちこたえろっ!」

「はいーっ!」


 騎士たちも泣きたくなる状況だろう。倒すことは考えず、応援がくるまで抑えこむ。それが現状である。

 ところで奥へと抜けて言った魔物は何故騎士たちを襲わずに王都の中に入っていったのか。そもそもこれは魔物の群れがただ王都を襲ったという話ではない。そもそも魔物は親子や兄弟の関係でもない限りは同族であっても殺し合うことが多い。こういう風に魔物が群れを成す、ということ自体が異常事態である。それもこれも魔王、魔族のせいなのだが。

 つまりはこの魔物の群れは魔族に統率されたものであり、王都襲撃は計画されたもの、魔物に対する命令も目の前の騎士を倒す、とかではなく王都に被害を出すことであるという予測は立つだろう。

 もっともそんな予測が立ったところで何の役に立つのかという話でもある。現状魔物の相手をしている騎士たちは足止めされており、王都に侵入した魔物の相手などやっていられない。他の入り口、もしくは王城にいる騎士に応援を頼めるよう騎士を一人連絡員として送ったが果たしてここの騎士たちが全滅し魔物の群れが侵入するのが先か、抑えこめて何とかなるか、そうであっても王都に侵入した魔物の排除に時間がかかり被害の大きさは予想以上のものとなるだろう。


「ぐあっ!」

「っ! フズロー!」

「隊長! やっぱダメっぽいです! 逃げていいですか!?」

「ダメに決まっているだろう!」


 そもそも逃げる気があるなら聞く前に逃げればいいだろう、と隊長……カルナックは叫びたくなった。だがそんな余計な体力を使う余裕はない。一人一人、死んでこそいないが怪我で減っていく状況、全滅まで時間もないだろうと思われた矢先……流星が落ちてきた。


「だああああああああああああっ!!!」


 地を割る破砕音とともに現れた空から落ちてきた流星……否、地面に足を突き立てている人影。その真下にいたと思われる魔物は原形をとどめておらず、その周囲の地面はいくらか陥没しておりそれに巻き込まれ騎士が数人と魔物が十匹ほどその陥没地に体を倒している。


「な、なんだっ!?」

「隊長! 空から人が落ちてきました! 男です! こういう時って女の子なのが一般的じゃないんですか!?」

「知るかっ!」


 物語でよくある展開はさておいて、落ちてきた人影は明らかに魔物を狙って落ちてきた、というか足が地面に突き立っているのはそういう風に落下攻撃をしたからであり、地面が陥没しているのもその一撃が凄まじいからである……とカルナックは荒唐無稽な非現実的空想を浮かべてしまう。しかし現実的にはそういう結果を起こしているし、実際その空想は正しい。ただそれが正しくても正しいと信じるのは難しいだろう。それを現実とするのがまず難しいのだから。


「おい! お前は何者だ!」

「ルフェだ!」


 ルフェはそう言って魔物へと向かっていく。手刀一閃。その一撃で魔物は切断される。その光景を見たカルナックおよびその他騎士一同は唖然とする。魔物を手刀で倒すなどありえない。そもそも手刀で剣以上の切れ味をだしているのが異常である。しかしその光景を見てカルナックはすぐに判断を下す。目の前の存在は自分たちの味方であり、魔物を倒す手助けをしてくれているのだと。いや、手助けというよりはもっと直接的に魔物を倒してくれるのだと。


「魔物を倒すのを手伝ってくれ!」

「ああ、もちろん!」


 そのまま王都の入り口前で騎士達とルフェによる魔物との戦闘が行われる。騎士たちはルフェに魔物の殲滅を任せ、自分達は魔物を抑える役目に回る。本来騎士としては守るべきものを頼るのはどうかと思う所だが、ただでさえ減らされ戦力が足りない現状それが精いっぱいである。苦い経験ではあるが、これ以上の被害を出さずに入り口前に来た魔物がルフェによって殲滅された。


「よし! よくやった!」


 カルナックの叫びに騎士たちは堪える。満身創痍、死者こそいないがけが人は多数、起き上がれないような重傷者もあり、すぐに治療や何やらが必要だろう。そして彼らの戦いはこの場だけではない。王都に入りこんだ魔物も倒さなければいけない。


「まだ我々のするべきことはある……ああ、君、ルフェと言った……おい、彼は何処に行った?」

「何か王都の方に走っていきましたが……どうしました隊長?」

「呑気だなお前は! まだ王都に侵入した魔物を倒さなければならないだろう! 倒れた騎士も医務室へ運べ! 各所に連絡もしろ! もたもたするな!」

「はいっ!」


 カルナックから指示が飛び騎士たちは各々の仕事に回る。この様子では王都に侵入した魔物を討つのに時間がかかることだろう。


「……彼に礼をするのは後回しか」


 ルフェの名前は本人が名乗ったため後回しである。今は自分の仕事をしなければとカルナックは己のするべきことをしなければならないと王都内に数人の騎士を伴って入り侵入した魔物を倒しに向かっていった。

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