☆1-3 豆電池と発電所
そも幼女、もといジェシカさんは、僕の方を向いたまま、じっと動かない。ハシビロコウかあんたは。
おそらく僕に用事があるのだろう。ともかくこの黒髪の彼女をなんとかしなくてはならない。
数少ない僕の友人、カズを呼び出し、気絶している黒髪の彼女を託すことにした。
カズに電話をかけ、神社まで来るように伝える。
「なに、どした」
「いや、この子なんだけどさ…」
「おう…?」
カズは黒髪の彼女に目をやって、また僕の方を見た。
「いや、あのさ、さっき不良に襲われてたのを助けたらさ、転んで頭打っちゃって、で、こんな感じ」
「わかった。で、お前はこれから弔い合戦と洒落込む訳だ」
「いや、死んでないけど」
「まあわかった。行ってら。無理すんなよ」
カズに礼を言って、神社の階段を降りていくと、ジェシカさんもそこにいた。
今のところ敵か見方か、いや、現状敵の可能性が高いジェシカさんと話をつけるべく、二人縁日へと繰り出した。
「まず一つ、私はあなたの味方です」
にわかには信じられないな。黒髪の彼女に「何か」したわけだからな。
「正確には違いますよ。平たく言えば、彼女にとりついた『悪魔』を『祓った』のです」
悪魔?払った?もしかして中二病なのか?
「まあ、すぐ信じてもらえるとは思ってないですけど、中二病とは心外ですね。そうですね、時間もないのでさっさと説明しますよ。あなたは現在、悪魔に狙われています」
悪魔に、狙われている?
「まず、この世の中には、『悪魔』と呼ばれる存在があります。
これらは、実体を持ちません。これは、自身の魔力が少ないためで、およそすべての悪魔は、実体を得るために、魔力を求めて行動します。・・・ここまでいいですか?」
悪魔か・・・ゲームの世界だな。とりあえず大丈夫。
「はい。では次。気付いてないと思いますが、森羅万象すべてのものには『魔力』というものが宿っています。もちろん、人間にも、です。悪魔は、人間の心の隙間に入り込み、魔力を吸収しようとします。ある程度吸収したら、とりついた人間を操作し、さらなる魔力を持った人間を探します。」
それと僕が狙われていることになんの関係が?
「あなたは無限の魔力を持っています」
無限の魔力?
「正確には、ほぼ、無限です。生き物は、自身の身体を維持するのに魔力を消耗します。ですが、大気中などから魔力を少しずつ吸収しているため、生活に支障は出ません。ところがあなたの場合、身体に溜め込める魔力の量、大気中から魔力を吸収する速度ともに、一般人のそれをはるかに超えているのです」
急に色々言われても分からない。なにかこう、例えとかないのか?
「めんどくさいことを言いますね。まあ例えるなら、豆電池と発電所くらいの差はありますね」
でもそれなら僕にとりつけばいいんじゃないか?
「先程の悪魔くらいの弱い悪魔があなたにとりつくと、魔力の量に耐えきれず、消滅します。要するに、キャパが違うのです。キャパが」
つまり、黒髪の彼女にとりついた悪魔が、僕の魔力を求めて近づいてきた。
それをジェシカさんが払ってくれた、というわけか。
にしても、なんでわざわざ本部所属のジェシカさんが来たんだ?本部があるってことは、支部もあるんじゃないのか?日本支部とか。
「ごもっともな意見ですね。実は先日、
悪魔の襲撃によって日本支部は壊滅しました。