☆1-2 白髪幼女は「さん」づけで
「欲とか以前に節操がないですね。節操が」
そう言い放った少女、もとい幼女は、こちらに差し出していた剣を肩に担いだ。
こちらも黒の装いで、ワンピースを着ていた。彼女と違うのは、二つに束ねた雪のような白い髪だった。
膝まであろうかという長く艶やかな髪は、細いリボンでツインテールにされており、縁日にうかされた熱い風がかすかに揺らしていた。
僕を逆ナンした彼女は、幼女をキッと睨むと、とても人間とは思えない動きで幼女の後方に飛び退いた。
それから獣のような剣幕で幼女を睨んでいる。
幼女は、チラッと自分の肩に目をやって、
「師匠、お願い」
誰に何をお願いしたのかわからないが、幼女は、続けて言った。
「crier」
何語だろう。しかしそんなことよりも、彼女だ。
幼女が何か言った途端に耳を押さえて苦しそうにうずくまっている。
何かしたのか?
男ならば助けに行かねばならない。
相手は剣を持っている。
勝てるのか?
格闘技経験は無い。
いや、そもそもあの剣が本物だという証拠はどこにもない。
しかし助けることができたらヒーローになれるんじゃないか?
そうと決まれば話は早い。
実行、あるのみである。
「…っ!」
助ける!と思ったのだが、どういうわけだか体が動かない。
幼女と目が合った。
「黙って見ていて下さい」
全く身動きの取れない僕を見て、幼女は言った。
幼女に何かされたのか。
幼女は再び彼女に向き直り、ゆっくりと迫っていった。
彼女はうずくまったまま、幼女の方をキッと睨みつけている。背中から黒いモヤのようなものがでていた。
一閃。
幼女は黒いモヤに狙いを定め、その剣をふるった。
切られたモヤは夜の闇に溶けるように消えていった。
彼女は気を失ったように倒れてしまったが、同時に僕にかかっていた謎の束縛も解けた。
少しよろけたが、急いで彼女の元に駆け寄った。良かった、眠っているだけらしい。
にしても、この幼女。いったい何者なんだ。
「君は、いったい…」
幼女は答える。
「申し遅れました。エクソシスト協会本部所属。
シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワ
気軽にジェシカさん、とお呼びくださいね」
「さん」ついてたら気軽じゃないじゃないか。
そんなこんなで、僕、差滋悠輝と、ジェシカ(さん)による、
壮絶な悪魔払いの日々が、幕を開けたのである。




