1-10 祓います
「邪魔です。どいてください」
ジェシカさんは、手にした剣を中村さんに向け言った。
「Fairedelaplace」
瞬間、世界から、色が消えた。モノクロの世界。
僕やジェシカさんの色は、そのままだった。
そして、中村さんのいた場所には、悪魔がいた。
形容するなら、角のあるゴリラが二本足で立っているような感じだった。
その体躯はゆうに2メートルはあり、禍々しいオーラを纏っていた。
どうしてだか、見たことのあるような気がしたが、その既視感の正体を探るのを邪魔するように悪魔は吠えた。
「チッ、邪魔すんじゃねェ!このチビエクソシストがァ!!」
悪魔がジェシカさんに飛びかかる。
ふわり
回転するように剣でいなす。
ツインテールが螺旋を描いてついていく。
いなされた悪魔は、廊下の壁にぶつかって爆発のような音をたてた。
そして、粉々の壁。
「あぁ廊下が…」
「心配しないでください。ここは私達の生きる世界とは違います」
問題はそこじゃない。あんなのまともに食らったら怪我どころか、形が残るかどうか。
そんなやつと、戦ってるのか。
悪魔は、すぐに立ち上がり、ジェシカさんに向かって再び突進した。
いなす。
また突進。
いなす。
突進。
いなす。
突進。
辺りの壁はほとんど壊れ、広い空間が出来ていた。さながら、闘牛場にいるようだった。
こっちまで変な汗をかいてしまう。
「そんなものですか?最近の悪魔は弱くなりましたね」
「あーもうめんどくせェ。死ね」
雰囲気が変わった。ジェシカさんもそれを感じ取ったのか、険しい顔つきで剣を構えた。
「びびんなよォ?」
刹那、ジェシカさんの立っていた場所には悪魔がいた。
そして、遥か遠くで壁が壊れる音がする。
ジェシカさんは、そこにいた。
そして、大量の血。
速すぎて見えなかった。
体が震える。汗が止まらない。
・・・違う。汗じゃない。
これは・・・
「血・・・?」
僕の右肩には小さな傷があり、血が流れていた。
そして傷の上にくっついていた、黒い物体。
「あ?気づいちまったか。まあいいや。もう終わった」
「まさか…魔力を…」
ジェシカさんだった。全身から血を流しているのに、こちらに向かってくる。
魔力?
そうか、この黒い物体はあの悪魔の一部。何かのタイミングで僕につけたんだ。
そうすれば僕から魔力を吸い続けて自身を強化出来る。
中村さんに肩を叩かれた時だ。でもあの時は血は出ていなかったはずだ。
だとすれば、戦闘が激化したあたりで、急速に魔力を吸ったのであろう。
僕が気づいていれば。気づいていれば、こんなことには。
「…日本支部が襲撃された際、同様の傷が…構成員に見られました…」
まさか…
「あ?俺様だけど?」
気づかなれいうちに魔力を吸い続け、自身を強化。魔力を吸われ消耗したところを、一気にたたみかける。
真相ががわかったとたんジェシカさんはなぜか少しだけ笑った。
「…そうですか。…あなたでしたか。わざわざ教えて頂き、ありがとうございます」
さっきまであんなにボロボロだったのに、もう血は一滴も滴っていない。
「エクソシスト協会本部所属、シュバリエ・ジェシカ・ド・リュフワ。これからあなたを、
祓います」




