話の続き25
前回投稿内容↓
コーヒー一杯分の談笑をして、私は福井店長のカップと、三人分のカップを回収して、食器を洗うことにする。
「そういえば、原田さん、お客さんから演劇のチケット貰ったんですけど、誰かといきませんか?」
福井店長が原田さんにそう聞いた。
「誰かって?」
「彼女とか、ガールフレンドとか」
福井店長はあっさりそう言った。
なんて答えるんだろう。私は耳をそばだてる。
「彼女もガールフレンドもいませんよ。河原さんにあげたらいいじゃないですか。彼女、クラスの男の子と行きますよ」
その時、私は、地面にへたってしまうかと思うくらい、安心したような、嬉しいような、全身から力が抜けて、どこからともなく、喜びがあふれてきた。
原田さんは今、独り身なのだ。誰かと手を繋いで歩く休日も、大人びた女性と唇を重ねることもない。私はそんな原田さんを想像しなくてすむのだ。
「チケット二枚あるんだけど、誰かと行く?」
福井さんが私にそう聞いてくる。
「私も、ボーイフレンドも彼氏も居ません」
嬉しくってうきうきしながらそう答えた。
「じゃあ、二人で行って来たらいいよ」
福井さんがそんなことを言う。
「ん。河原さん、演劇見に行く?」
原田さんも異論はないようだ。
なんという展開……福井店長から、後光が差している。福井店長は思い付きで何にも考えず喋っちゃう人だから、こういったミラクルが起こるのだ。常識のある人はバイトの女子高生と、常連客に「二人で行ってきなよ」ってそんなことを言ったりしない。
私は舞い上がっちゃいそうになったけど、ここであんまりはしゃぐと、なんだか子どもっぽいので
「いきましょうか」
なんてクールに答えた。実際は死ぬほど、ドキドキしていた。




