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あなたとならなのに  作者: 悪徳渋助
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話の続き

 私が女子高生だから、というわけでもないだろうけど、私はよく運命について考える。結婚までしたある夫婦が離婚したときや、退屈な友人の恋の馴れ初めを聞くたびに、なんだ運命なんてないじゃないか全部全部偶然なだけじゃないかと言いたくなる。


 運命というからにはもっとこう絶対的で、揺るぎない何かでなきゃいけないような気がして、離婚なんてもってのほかだし、「最近ちょっと倦怠期なんだよね」とかいう関係ではないと思う。倦怠期まで到達してそれを乗り切っちゃう私たちって超運命だよねみたいな、そういう不幸自慢じみた報告にはちょっとうんざりする。

 

 私だって、やる気を出せば適当に彼氏作って適当に倦怠期なんかも到達しちゃったりするし……とにかく、嘘くさい友人の恋の話を聞くと、本当の運命ってやつを是非私に実感させてみなさいよと思う。だけどそれはイタコ様に「ほれ、徳川家康と会わせてみなさいよ」といった風な挑発的な感情でもあるし、また一方で純粋にそういうのを感じてみたいというような気持ちでもある。

 

 そうするとやっぱり、起こりうる恋全てが運命だったら大変だ。秩序の崩壊だ。そんな事態になると何か恐ろしいことが起こるに違いない。だからこそ私は日常の中でどんな運命も見逃さないぞと躍起になる。

しかし、まるで訪れない。

 

 すれ違った瞬間恋に落ちるような何かも、夜の駅のホームで倒れている少年もいない。倒れているのはせいぜい金曜日だからってはしゃいで酔いつぶれた、しょぼくれたおじさんくらいだ。酔いつぶれるおじさんと酔いつぶれないおじさんとでは決定的にしょぼくれ度が変わってくると思う。毎日毎日満員電車に揉まれながら、朝から晩まで働くおじさんたちなら金曜日くらいはしゃいでもいいとも思うけど。

 

 とにかく「運命の出会い」なんてまるでどこにも転がっていないのだ。別に何か特別な出会いが欲しいわけではない。それこそ運命めいていて、酩酊しているだけだ。金曜日のおじさんさながら。


 だからといって気がつけない運命なんてないのと一緒だ。だけど、運命は認知した瞬間急速に偶然へと姿を変えていくような気もする。観測が対象に影響を与えるなんて……まるで量子力学だ。もう何がなんだかわからない。


 だけどやっぱり私は運命の誰かを待ち続けているんだと思う。


 運命について過剰に考えることは現実逃避でもあるし、退屈な日常と向き合うための必要悪のようなものでもある。女子高生だから、多少こんな感じでも罰は当たらないだろうと思う。

 

 そんな私もとうとう高3になってしまったのだ。

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