第九話
俺は目を開けた。
視界に映るのは、白い――天井。
首を右に回すと、窓から外が見えた。民家の屋根と、青空、太陽。わかったのは、今が日中であること。
――うん? ここは、どこだっけ?
俺は上体を起こした。
テーブルの上に、時計を発見。短針が三、長針が十二を指している。言うまでもなく、今は昼の三時なんだろう。
辺りを見回すと、ここは殺風景な一室。
「はて、俺は何やってたんだっけ?」
呟きながら、俺は記憶を掘り起こす。
ルーが「遺跡調査」の仕事を取ってきたこと。馬車の停留所でアンディさんと落ち合ったこと。俺とロット、ルーの三人で遺跡の調査を開始したこと。遺跡内部でウェリィ、ワイト、ギーンと出くわしたこと。濁流に追われたこと。アンディさんに「役不足」と言われたこと。深夜、三人で遺跡に侵入しようとしたこと。そして、そこで――
――敵に襲われたこと。
俺は慌てて、腹部に手を当てる。……触っても、痛みはない。Tシャツをたくし上げて目で確認してみるが、傷どころか、アザすらできていない。
……やはり、あの攻撃は蹴りだったのか。
あの時は見えなかったが、感触や衝撃から、何となくそうは思った。ナイフによる攻撃じゃなくて、本当良かった。
いや、敵は三人を同時に相手していたんだ。たかが一瞬でも、ナイフを使用不能にする隙を作りたくなかったんだろう。まあ、運が良かったことには変わりないが。
しかしこの現状、俺が見覚えのある宿にいることから考えて、敵に捕らえられたり、既に殺されたわけではないだろう。天国がこんな殺風景な場所じゃなければの話だが。……地獄が、こんな心に易い場所であるわけもない。
再度部屋を見回してみたが、やはりここには俺しかいない。……他の二人はどこに行ったんだ?
と、壁の向こうからぼそぼそと話し声が聞こえる。
この部屋は、俺とロットが泊まっている部屋。そして壁の向こう、この部屋の右隣は、確かアンディさんの部屋だったはず。
俺は部屋を出て、廊下を直進。隣のドアを開けた。
目の前に開かれたのは、俺達の二人部屋よりそこそこ広い三人部屋。
……そうだった。アンディさんは、一人でこのだだっ広い部屋に予約したんだっけな。別にアンディさんが希望したわけではなく、ここしか空いてなかったからというだけだが。しかし「面倒くさい」というだけで一人で三人部屋を取ってしまう辺り、俺達とは懐事情がだいぶ違うがね。
壁際にベッドが三つ並び、その奥の窓際にテーブルと椅子が並んでいる間取り。そしてそこには、ロットとルーとアンディさんの三人が向かい合って座っていた。
「あ、ダルク。目ぇ覚めたんだねっ」
ニコッとするルー。
「ああ、覚めたことには覚めたが、何で俺がここにいるのかはさっぱりだ」
言いながら俺は部屋の中に歩を進めた。残念ながら椅子が余ってなかったので、ベッドの上に腰掛ける。
「その問いに答えるのは造作もない。私がお前をここまで背負ってきたからだ」
ロットが薄く笑いながら答えた。
「ほう。てことは、あの敵は倒したか捕まえたか追い返したかしたってことか?」
俺は感心しながら言ったが、しかしロットは苦笑いで視線を落とした。
「いや、むしろ殺されそうになった。アンディさんが来てくれなければ、あの山が我々の墓標になっていたところだ」
――墓標とは、これまた縁起でもない表現だ。しかし、それが決して冗談ではなかったことに思い至り、俺の背中に冷たいものが走る。
「アンディさん…………来てくれたんですか?」
俺がアンディさんに視線を動かすと、
「ああ。夜中トイレに行こうとしたら、お前らの部屋から気配が一つもしないんで、もしやと思ってな。遺跡に行ってみたら、案の定だったってわけだ。ったく、神がかり的なタイミングの良さだったぜ」
「じゃあ、アンディさんがあいつを倒したんですか?」
「いや、まんまと逃げられたよ。奴が俺の視界に入った三秒後には、完全に逃げの体勢に入ってやがった。あの様子は、完全に俺を警戒してやがった。ま、今日この村に俺がいることは、わかりきってたことだったろうからな」
自嘲気味に笑うアンディさん。
「……じゃあ、あいつが何者なのかとか、全然わかってないんですか?」
「まーな。結局あれからわかったのは、あいつが遺跡から何かを持ち出したってことだけだ」
「え? もう確認したんですか?」
「ああ。今日の午前中にプロの調査団が遺跡に入って、確認した。あの遺跡の隠し部屋から、宝石箱くらいの大きさの何かが盗られたことが、な」
「今日? え? ちょっと待ってください。俺達が襲われたのって、昨日と言うか、今日ですよね?」
「ああ、そうだ」
「それにしちゃ、行動が迅速ですよね? 半日後にはプロの調査が済んでるって」
アンディさんは嘆息しながら、
「俺が昨夜の内に頼んでおいた連中だよ。昨日はお宝探しを頼んでたんだが、無い物探しに目的が変更しちまった。すぐに確認できたのは、ま、悪くはないことだったが、な」
……そうか、そうだよ、そうだよな。当たり前だ。寝起きのせいで、頭が良く回っていない。
「なるほど……ね」
状況を飲み込み、俺は呟きながら大きく息を吐いた。
と、
「あの……アンディさん」
小さい声で、ルーが言葉を発した。
「あん?」
「その……あたし達のこと、怒らないの? もしくは罰とか、報告とか……」
「何で?」
眉を吊り上げるアンディさん。
「だってあたし達、アンディさんに黙って遺跡に入ろうとしたから……。昨日、危ないって注意されたのに……」
尻すぼみに言葉を続けるルー。アンディさんは一瞬きょとんとした顔をしてから、息を噴き出し、
「くはははははっ。そうか、そういうことか。やけに沈んだ顔してると思ったら。くははは、ははははは。そうか、そうか。くくくくく。いや、なに、簡単なこった。これは俺の責任だからだ」
「え? アンディさんの……責任?」
ルーは首をひねる。
「そうだ。俺がこの遺跡調査の責任者。そしてお前らは、昨日俺が解任した時点ですでに部外者だ。何のとがもねえ。つまり、本当は俺があの遺跡を監視してなけりゃいけなかったんだ。侵入者がいないか、俺が見張るべきだった。しかし、まさかあんなタイミングで盗賊が出るなんてあり得ないと、楽観視――またしても、楽観視――しちまったせいで、あいつの侵入を許した。許しちまった。通常なら、俺は調査団が無い物を確認するまで、あいつの存在にも気付けなかったわけだ。だがしかし、お前らのおかげで早く発見できた、発見を早くできた。しかも、あいつの外見を一瞬目にできた。だから別に、俺にお前らを怒る理由も資格もねえんだ。むしろお前らは、褒められるべきだ。よくやったぜ。くははは」
「……そうなんですか」
逆に呆然とするルー。
「しっかし、このタイミングの良さ――いや、悪さか――はねえよな、ったく」
舌打ちするアンディさん。
「タイミング? どういうことです?」
俺が聞くと、アンディさんは「つまりだな」と肩をすくめ、
「いくら楽観視してたとは言え、俺だってさすがにそこまで気を抜いてたわけじゃねえんだ。周囲にはずっと気を配ってた。あの、お前らが濁流に追われて慌てて出てきた時もな。あん時ゃさすがに驚いたが、それでも警戒は解いてねえよ。俺達を観察する視線があれば、間違いなく俺は気付いたはずだ。んで、さっきこいつらから話を聞いた分には、お前らは外で隠し部屋の話はまったくしてないんだろ? 向こうだって、責任者が責任者だ、あいつらから情報が漏れたなんて考えられねえ。つまり、敵は隠し部屋があるなんて知ってるわけねえんだよ」
「……そうか……そうですよね」
俺は無意識に頷く。
「つまりあいつは、わざわざ隠し部屋を狙ったわけじゃなく、偶然今日、あそこに進入したことになる。しかも、だ。ロットが隠し扉を開く前なら、あいつもそれに気付けなかったかもしれない。しかし昨日お前らが見つけたせいで、開けっぴろげになっちまった。本当、タイミングが良い――いや、悪い――よな。俺の責任じゃねえ、運が悪かっただけだ、って言いたくなるぜ」
肩をすくめるアンディさん。
アンディさんが話し終え、数秒、部屋に沈黙が流れた。各々、事の流れを整理し、思い返しているんだろう。最悪の結果ではなかったが、最善でもない。四人それぞれ、反省するべき点が少なからず存在する。
静寂の中、俺はこれからどうしたもんかと考えてると、
コンコンッ
ドアが叩かれた。俺たち三人は一瞬びくっとした後、そのままきょとんとする。そしてロットがすくっと立ち上がり
「開けてもいいですか?」
とアンディさんに尋ねる。アンディさんは椅子に反り返ったまま何ともなさそうに、
「ああ、頼む」
ロットはその返事を受取ると、ドアの前まで行き、扉を内側に開いた。
ドアの向こうに立っていたのは、黒髪のロングヘアーに黒ぶち眼鏡、黒いコートを着た――二十代後半くらい? ――の女性。少々目つきの悪い顔で――仕事ができそうなタイプという印象は受けたが――佇んでいる。
その人はすっとお辞儀をしながら、
「こんにちは。私は今回ウェリィのチームの責任者を務めていました、リンク=レバークと申します」
涼しげな声で言う。
「ああ、あなたも賞金稼ぎの方ですか?」
ロットが尋ねると、
「いいえ。私はギルド本部に所属している者です。言ってしまえば、ただの公務員ですが」
表情は崩さず、言葉を続けるリンクさん。
……そうか、そうだった。本来、こういう集団で行動をする仕事の責任者は、ギルド本部の人間が請負うのが通例。文字通り、経営者として責任を負っているんだから。
しかし、集団の仕事すべてに本部から人材を派遣していては、人員が足りなくなってしまう。全世界には何万件という依頼が飛び交っているのだ。なので、ランクで上位の人間――つまり、仕事に関して多大な信頼がある人物――にそれを任せることがある。それが、今回のアンディさんのケース。何と言っても、ランク十番台の賞金稼ぎなんだ。
一説によると、ランクが二十位以上の賞金稼ぎには、実力差はほとんどないと言われている。実際に試したわけではないし、そもそもランキングは変わり行くもの、本当かどうかはわかりやしないが。
では、ランキング上位者の実質的な差というのは、一体何なのか?
それは、金に対する執着心だと言われている。つまり、効率のいい仕事に絞って請負っていれば賞金も増え、逆にそれ以外にプライオリティを置く人は下になってしまう。それが、それこそが違いになる――――らしい。
逆に十番台の賞金稼ぎの方が、金以外に大事なものを持っている分だけ度し難い、恐るべき、と言う人もいる。アンディさんの場合、確かに度し難い部分もあるけど、雰囲気的に恐るべきとは感じない、が……。
と、思考が横道にそれている内に、リンクさんはコツコツと部屋の中に歩を進め、アンディさんに向かい合う形で立ち止まった。アンディさんは笑顔と共に手をヒラヒラさせながら、
「どうも、リンクさん。本日はお日柄も良く」
「ええ、日和は良いですね。気分は芳しくありませんが」
相変わらず睨む目つきのリンクさん。
「で、今日伺った用件は、今回の件の事実確認です。報告書は受取りましたが、他にも何かわかったことがありましたら、聞いておこうと思いまして」
リンクさんは淡々と言葉を紡ぐ。アンディさんは「つれねーなあ」と苦笑いを浮かべながら、
「書いた通りだよ。今日の午前一時半頃、こいつらは遺跡から出てきた不信人物と遭遇。そいつは布装束に黒いマスク、道具袋、そしてナイフを装備していた。俺がそこに着いた瞬間に逃げやがったが。盗られたものは、掌に収まるくらいの四角い物体」
「その中身は?」
「そんなのわからねえよ。宝石箱くらいの大きさだったから、中に入ってたのは宝石か、もしくは『石』か……。推測の域は出ないね」
「なるほど……。報告書に書いてあることがわかっているすべて、というわけですか。わかりました」
それだけ言って、リンクさんはくるっと振り返ろうとする。
と、
「あ、あと、これも推測は推測なんだが――」
思い出したように、アンディさんが言葉を続けた。リンクさんはまた振り返る。
「はい? 何ですか?」
「あいつが使ってたナイフは、恐らく『青石』で作られたもんだぜ。あいつのナイフがロットの服を掠めたところを見てみたら、いくらか湿ってたからな」
アンディさんは口元を引きつらせた笑みで言った。リンクさんは顎に手をやりながら、
「なるほど……。それは厄介ですね」
「ああ。ああいう氷の刃を使われると、向こうのナイフにゃあ刀傷は残らねえ。『石』が発動する度に刃も再生するからな。あいつを犯人と断定する証拠が一つなくなっちまうわけだ。この場合攻撃力は下がるが、しかし殺傷能力があることには変わりない。ああいう輩が良く使う手だ」
リンクさんは「ふむ」と息をつき、
「わかりました。それは重要な情報ですね。提供に感謝します。事件が進展すれば、またあなたに仕事を依頼することもあると思いますし、その時はよろしくお願いします」
軽くお辞儀をして、リンクさんは再度方向転換。そのまま部屋を出て行った。
廊下に響くヒールの音が聞こえなくなったところで、
「ったく、打ち解けづらいキャラだよなあ」
と、鼻で笑いながら呟くアンディさん。
「さて、これからどうすっかな?」
「あの――」
いくらか言いづらそうに、ルーが静々と口を開けた。が、
「おっと。お前らがその盗賊を追うってのはなしだぜ? 今回のこのセリフは、厳重注意だ」
「……そうですか」
俯くルー。
「これはもう、遺跡探索の時とは次元が違う。トラップ云々とか、そういう問題じゃないんだ。もしお前らだけでやつを追えば、九分九厘、お前らは殺される」
「…………」
――殺される――というアンディさんの断定に、俺もロットもルーも、黙り込む。
「昨夜の戦闘でお前らも実力の差は実感してると思うが、話を聞くだけでも、そいつが手だれだって事はわかる。暗闇の中、あいつは正確にお前らの急所に攻撃してきたんだよな? しかも、お前らの攻撃も最小限でかわしている。つまり、お前らの動きを完全に見切ってたわけだ」
ロットはゆっくり頷き、
「……そうですね。暗闇の戦闘ならばお互い攻撃の命中率は下がり、頭数でこっちの方が有利と判断して最初は『グレン』を発動させなかったんですが……」
そうだ、確かにあの時、俺の意識が存続してた間は、こいつは『赤石』を発動させなかった。あの刹那でそこまで考えが及んでたとは、ちょっと驚きだ。なかなかの戦闘センス。ウェリィが惚れ込むのも、分らないでもない。ただし、こいつは一度褒めると成層圏まで付け上がるため、世界と俺自身の平穏のためにこいつを褒めることを自らに禁じているので、残念ながら俺はこの感想を口に出すことをしない。が――
「――ん? じゃあ、あの後発動させたのか?」
俺の疑問に、ロットは再度首を縦に振った。
「ああ。あいつがお前に攻撃を加えている間に、な。私が奴に〈火炎斬鉄〉で攻撃しつつ、奴を炎で照らし、その明かりを頼りにルーが『レンキ』で狙い撃ちする、という陣形を組んだんだが」
「ほう。うまくいったのか?」
「いいや、戦況は変わらなかった。基本能力が違い過ぎる」
「そうか……。俺が倒れてなけりゃあ、少しはおもしろくなったかもしれなかったな」
「いや、敵がお前に気を取られている隙があったからこそ、私が『グレン』を発動させ、ルーがあいつと距離をとる時間ができたんだ。両方は成り立たないさ」
「……そうか、そうだな」
どちらにしろ、俺達が負けるのは時間の問題だったってことか。くやしいが、そういうことだろう。
アンディさんは俺とロットの問答が終わったのを見て取ると、嘆息しながら
「月明かりしかない中で敵の動きを正確に察し、しかも敵の急所を正確に狙うなんて、普通の人間にはできやしない。明らかにそういう戦闘になれている人間だ。まあ、俺にも同じことはできるが、逆に言えば同じことしかできない。精度の差もあるだろうが、どちらにしろお前らにとっちゃ大同小異だろう。お前らに勝ち目はない」
そしてルーの方に視線を動かし、
「ルー。お前があの遺跡――あるいはその中にあるもの――に思い入れがあるのは、何となくわかる。その顔を見てればな。だがあいつを深追いすれば、逆にそれに未来永劫手が届かなくなっちまうぜ。俺は四十、五十の先輩から見れば若造だが、それでもギルドでは筆頭に挙げられる賞金稼ぎだ。その俺から見ると、お前らは言うなれば雛鳥みたいなもんだ。巣を出て、飛び方の練習をしてる雛鳥、まだ外界を知らない雛鳥。お前らは、これからどういう飛び方をしていくか、勉強している最中ってことだ。それを見守る俺は――柄でもねえが――親鳥ってところだろう。お前らが間違った方向に飛ばないよう、はらはら見守ってる心境だ。だから、お前らが飛び方を間違えないように言っておく。今は――少なくとも今は――あいつを追うのは止めとけ」
昨日と同じように――いや、もっと静かに、強い口調で――アンディさんは言い聞かせた。ルーは視線をテーブルに落とし、数秒沈黙を守った。
が、
「はい」
と、小さく答えた。そしてスクッと立ち上がり、
「じゃあもう、あたし達、帰りますね。荷物まとめてくる」
そう言って、トテテテッと部屋を出て行った。その後ろ姿にロットは首だけ向けつつ、「やれやれ」と言いながら、
「私達も帰る準備をしよう。明日からはまた、別の仕事に移るとするかね。しかし今回の仕事は、やけに長く感じたな。請負ってまだ二日というのが信じられん。なかなかに疲れたし、な。さあ、さっさと帰って、さっさと休もう」
肩をコキコキ鳴らしながら立ち上がり、同じく部屋を出て行った。
俺はその背中を見送り、視線をアンディさんに移した。
「……何かもう、色々申し訳ありませんでしたね。ルーのことといい。本当は俺かロットが止めるべきだったんでしょうが」
「いや、なに。確かにルーのことも心配だが、それ以上に俺はお前のことも危惧してんだ」
「……俺、ですか?」
はて? 危惧される心当たりなんて、微塵もないが……?
「ああ。ラキのこともあるしな。ま、その様子じゃ、当分は関係なさそうだが。…………さて、そろそろ遺跡の方に戻らねえと、またグチグチ言われそうだ。ほれ、この部屋鍵閉めっから、お前も部屋に戻って荷物整理しろ」
「あ、はい。じゃあ――昨日も言った気がしますが――本当にありがとうございました」
「おう」
ぺこっとお辞儀し、そのまま俺も部屋を出た。
――廊下を歩きながら考える。
アンディさんがラキと知り合いだったとは意外だ。一体どんな接点なんだ? ラキが賞金稼ぎをしてたなんて話は聞いてないしな。確かに年齢は近そうだが……もしかして友達とか?
……まあ、どうでもいいさ。そんなこと、どっちだろうが問題ない。
俺には関係ない…………はずだ。