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銀河一夜物語~宇宙翔る魔法使いとの約束~  作者: 宮城 英詞
優秀な社員

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銃の導き

 衛星基地からの通報と、謎のビーム光を確認したロス戦隊は、慌てて海賊の基地に急行したのだが、そこで見たのは、数名のケガ人と、大破した船の残骸、そしてもぬけの殻になった港だった。


 ご丁寧に、「ジュピター13」がここにいる旨の通信を定期的に発信するようシステムにロックをかけての逃走である。


 どう考えても、こちらをかく乱する意図は明白であった。


「馬鹿にしおって!」


 巡洋艦「ブラウニー」の艦橋でマルスはその報告を受け、歯ぎしりをする。

 やはりどうして手慣れたものだ。


 ロス艦長はそんな参謀の様子を横目に、報告のデータに目を通した。


「どうも、倉庫の食料と武器を持ち去ったようですな。どうやら、この星系に潜伏してゲリラ勢力と結託する気はどうやら無いようです。」


 どこか冷めた口調で言い放つロス。


 それにマルスは、少し苛立ったままで振り返った。


「……どういうことか?」


「もともと、ゲリラと結託しているなら。こんな無茶をしてここで補給はしないでしょう。おそらく「ジュピター13」の目的地はこの星系の外にある。」


 そしてロスは、星図をモニターに映し出した。


「我々タサキからゲートを通ってこのシキ星系に居ます。もう一度タサキに戻るという選択肢が無く、ここに潜伏するという選択肢が無いなら、残るゲートは一つしかありません。」


 星図に映し出される図は、銀河の各星系の関係図とシキ星系の全体図の二つが映し出されていた。


 この星系には二つのワープゲートしかない。


 一つは、先日自分たちが居たタサキにつながるゲート、もう一つは、この近くにあるラヤノ星系に向けてのゲート。


 それの指す意味を知り、マルスは眉をひそめた。


「つまり、奴らはそこに向かう、と?」


「ここは、かなりの難所ですが、奴らにとっては追っ手をまくのに最適の場所です。ですが、ここからゲートまではかなり障害物の少ない宙域。我々の速度なら距離を詰めることはできるでしょう」


「……時間稼ぎをしたのはそれか」


 ようやくロス艦長の言わんとしていることをマルスは理解したようだった。


「で、あれば猶予はありません。急ぎ追いかけましょう。こちらはドローン艦を先行させれば多少無茶な航法で追いつくことも可能です」


 ロス艦長はそう言ってマルスに形式上の許可を取るとひとまず海賊たちの処理は、この星系の艦隊に任せ、追跡を再開した。


「……まさか、あそこを目指しているのか?」


 ブリッジでマルスが小さくつぶやいたことに、ロスはおろかブリッジの全員が気づいていなかった。




 海賊の基地を出発して、一日。ようやくゲートまであと少しというところで、「ジュピター13」のレーダーは、猛追してくる艦影を捉えていた。


 解析結果から、ドローン艦と判ると、航宙士席の郭は舌打ちする。


「さすがにこちらに行くことはバレたみたいですわね。」


「早めに港を出て正解みたいだったけど……ものすごい勢いだね。」


 バットも、どんどん縮まる距離にさすがに焦りを感じる。


 それに郭は、現在の位置を指し示した航路図を映し出した。


「現在我々は、ゲートの重力場に乗るために、減速航行に移っています。この機に向こうは猛加速で距離を詰めてきましたの。」


 現在、「ジュピター13」は前後逆転した状態で加速にブレーキを掛けながら速度を調整している状態だ。


 確かにこの状況で向こうが加速すれば、相対距離は縮まるだろう。


「……でも、減速しないといけないのは向こうも同じじゃない?こんな加速をしたら向こうはゲートを通り過ぎちゃうよ?」


「多分ドローン艦だけで追いかけてきていますわ。ゲート前で我々を補足できれば問題ないですし。急減速をかけても、中に人が乗っていませんから、Gで押しつぶされる心配もありませんわ。その気になれば体当たりしてくるかも……。」


 確かに、そう言う無茶ができるのがドローン艦の利点と言われればそうだろう。


 よく見れば向こうは単艦。確かに捨て駒として使っている可能性は十分にあった。


「砲雷撃戦は避けられそうにありませんわね。光子ミサイルでも打たれたら厄介ですわ。」


 流石に逃げの一手は使えないようだ。


「どう応戦する?」


「荷電粒子砲は発射できそうですが、出力が安定しない上、射角は正面のみ……しかも遠距離からでは一発勝負で当てるのはまず無理ですわ。なんとかミサイルを工夫して当てて……それが無理ならレールガンでの砲撃戦ですわね」


「多少の被害は覚悟しなきゃならないか……」


 バットはこぶしを握り締め、やるしかない、とモニターを凝視した。


 そしてそれに、機関士席のイワンが声を上げる。


「この際じゃから、ちょっと試したいことがあるんじゃがの」


 そして彼はコードの先に大きなクリップのようなものを取り出す。


「エーテル機関の魔力伝導体で急造した。これで若旦那の銃と、荷電粒子砲の照準器を接続する。」


「どうなるの?」


 そう言いながら、船長席のコネクタでコードを接続するイワン。


 レーダー席のアテナはそれにピンと来たようだった。


「そうか!これなら、感覚で霊視射撃ができるわ」


「これに近い方法で魔法使いが遠距離砲撃するのを何度か見たことがあってな。元来そういうもんじゃから、これなら若旦那でも行けるんじゃないかと思ってな」


「え?この銃で?」


 銃をクリップで挟まれ、戸惑うバット。


 だが、郭もその提案には前向きな様だった。


「確かに、エンジンは調子いいですし、アウトレンジから向こうを砲撃できればそれに越したことは無いですわ。やるだけやってみましょう。」


 そして一同は、それぞれの席に着いた。


「え?今やるの?」


 一応火器管制システムは連動しているようだが、こんな簡易的な方法で大砲が打てる気がしない。


 だが、状況は刻一刻と変化している。


「早くしないと、向こうの有効射程内に入ってしまいますわ。」


 郭にそう言われ、バットはさすがに腹を決めた。


「……ブリッジに穴でも開かなきゃいいけど……。」


 バットはそう呟きながら、銃を構える。


 ブリッジでは一同が、準備を始めた。


「目標までの相対距離、現在7光秒」


「荷電粒子砲、エネルギー注入、安全装置解除」


「舵、火器管制に連動、よし」


「船長お願いしますわ。」


 そしてバットは目を閉じた。


 銃の向く先に銃口を向け、そして引き金を引く。


「発射!」


 次の瞬間、「ジュピター13」のビーム砲は輝く閃光を放った。


 同時に船体に反動がかかり、バットは前に突っ伏す。


 輝くビーム光が飛んで行く姿を確認し、イワンは嬉しそうに手を叩いていた。


「成功じゃ!いや、たいしたもんじゃのう」


 どうやら、自分をほめていてくれるらしいが、ここまで魔法の道具を簡単につなげてしまうイワンもたいしたものだ

 。

 エーテル機関をずっといじってきた彼にしかできないこともあるのだろう。


 一先ず銃口からエネルギーが出て船内に穴を開けるようなことが無かったことに、バットはひとまず胸を撫でおろした。


 そしてそれを横目に郭は時計を見ながら、結果を観察している。


「……弾着、今!」


 彼女がそう言うと同時に、望遠カメラの映像で光が観測された。


 そして、追跡艦の反応が、レーダーから消える。


 それはビーム光でも着弾を観測するのに時間がかかるほどの距離を砲撃したという事を意味していた。


「初弾命中ですわ。」


 郭は、そう言って静かに笑った。


「すごいわね!この距離で当てるなんて。どんどん魔法使いに近づいてきているみたい。」


「……いや、この銃とみんなのおかげだよ。」


 喜ぶアテナに、バットは照れ臭そうに笑った。


 もしかしたら自分は特別なのかもしれないが、それでもこんなことはみんなの協力が無ければできはしなかった。


 アテナとの出会いもそうだが、エイトの操艦、イワンの技術、郭の助言が無ければここまで来られなかっただろう。


 そしてこの船。


 ボロだと思っていたが、この「ジュピター13」はすごい船だ。


 これならどこへでも行ける気がする。


「……ホント、ウチの社員は優秀だよ。」


 バットはそう呟いて、改めて船長席に腰掛けた。


 そして「ジュピター13」はゲートをくぐる。


 ブリッジには、今までにない色の宇宙が広がって見えた。


 その星系の星図が映し出され、一同に緊張が走る。


「このラヤノ星系のシキ星系方面航路は、高重力惑星、ブラックホール、ガス雲などがある危険宙域で、民間の船舶はほとんど航行しない航路ですわ。速度は出せませんが、その分、センサー類は聞かない箇所も多く、追っ手をまくには最適です。何とかここで追っ手を振り切りたいところですわね。」


 郭の言葉に、バットが何か言おうとした瞬間、ウイザードスマッシャーが光り輝いた。


 そしてそれはホルスターから飛び出し、くるくると回転を始める。

「なんだ?」


 突然の事に慌てる一同。


 だがその中で、ただ一人、アテナだけはその意図に気づいているようだった。

 彼女は、慌てて銃を手にしようとしたバットを手で制すると、じっと、銃の動きを見守る。


「……何を訴えようとしているわ。」


 彼女がそう言っている間にも、銃の回転は、ジャイロコンパスのように徐々にある方向に向かって安定をし始める。


 やがてそれは、ある一方向を指してピタリと止まった。


「これは?」


 不可思議な動きに首を傾げるバット。


 だが、郭はそのメッセージに何か意味を見つけたようだった。


 彼女は立体星図を起動させ、銃の指し示した方向を確認する。


 それは、ラヤノ星系のある惑星の位置にピタリと符合していた。


 バットは危険宙域の真ん中にあるその星の名を見ながら、眉をひそめる。


「……惑星ヘンサワー?ここになにかあるってこと?」


「分からないわ?でも、この銃はそこに行きたがっているみたい……私も、そこに何かを感じる……。」


 バットは、アテナがそう言うのをきいてもう一度、銃を見た。


 確かに、銃は必死で何かを訴えかけているようだった。


 それにバットは小さく頷く。


 すると、銃はすっと、バットの手元に戻っていった。


 まるでそれは、バットが何を決意したか理解し、安心したかのようだった。


 アテナも、そんなバットの意志を理解したようだ。


 彼女がバットに頷いて見せるのを確認すると、バットは銃をホルスターに納め、その決意を口にする。


「……よし、行こう。惑星ヘンサワーに、そこに何が待っているかわからないけど。僕は、この銃の導きに従う。」


 そして、船長の号令の元「ジュピター13」は針路を惑星ヘンサワーに向けた。


 そこにいったい何が待ち受けているのか。


 4人はいまだ何も知らないままだった。


 


ついにラヤノ星系に到着した「ジュピター13」

だが銃に導かれ、惑星ヘンサワ―に近づくにつれてアテナの態度の変化が現れる。

 アテナは一体何を感じているのか?

 そして惑星へンサワーにはには一体何か?

次回第三章

「託された使命」


11月1日17時30分公開予定!


お楽しみに―

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