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火と氷の未来で、君と世界を救うということ  作者: 星見航
第23章:エクアドル・種の起源の島へ【2030年2月10日】
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第360話:進化の一歩手前

挿絵(By みてみん)


 バルトラ島に戻ったわたしと十萌さんは、二人で海岸線を歩いていた。

 足元を見ると、やたらと色鮮やかで立体感のあるカニ達が、波打ち際を駆け回っている。


「”Sally (サリー)Lightfoot(ライトフット)”――。ガラパゴス全土に生息する名物蟹よ」


「なんだか、タチコマっぽいですね」

 自然と『攻殻機動隊』のAI思考戦車の名前が口にでる。


 思えば、わたし達とカイとの腐れ縁も、そこから始まったようなものだ。

 

 もし、カイが、星の部屋でタチコマのフィギュアを見つけていなかったら、わたし達を取り巻く全ての物語は、全く違ったものになっていただろう。


「なんか……やたらと敏捷なんですね」

 波や小石の間を縫うように、前・後・横・斜めの四方向を高速で動き周り、垂直の岩さえもを苦も無く登っていく。


「ええ。カニの中ではトップクラスの身体能力よ。作家のジョン・スタインベックも『捕食者の心を読む』生物と表現してたくらいだから。これも、生存のための進化の一形態でしょうね」


 ――生存のための進化……か。


 わたしは、無人島でのカイの言葉を思い出す。

「”人類の進化”を()()()に引き起こす。火と氷の時代を生き延びるために」


その言葉を聞くまでは、わたしにとっての「進化」とは、あくまでも長い歴史の結果だった。

いや、大概の人にとってはそのはずだ。


他愛のない”小学生の夢”でさえ、「宇宙に行く」と文集に書く子はいても、「人類を進化させる」なんて書いている子に会ったことはない。


けれど、もし「自然進化」が起こるまでの時間が、人類に残されていないとしたら――。


「残念ながら未来予測は変わってはいないわ。今後10年以内に、本格氷河期が地球全土に到来する可能性は、むしろ上昇している」


「でも何で、今までなんで氷河期到来(それ)を予測できなかったんでしょうか?つい数年前までは、”地球温暖化”だって騒いでいたのに」


「当時は量子コンピューターが実用化されていなかったらね。ソフトウェアとしてAIもね。この二つがかけ合わさると、演算能力は、従来型スパコンの優に数万倍を超えるから」


たしかにまだ小学生だった10年前は、カスタマイズ(サラ)AIが親友のようにずっと傍にいて、何でも教えてくれるような未来が来るなんて、想像もしていなかった。


「ただそれでも、人間の脳の仕組みはまだまだ解明しきれていないの。だから、リンちゃんの協力が必要なの。脳波を操る――”進化の一歩手前”にいる、貴重な存在としてね」


挿絵(By みてみん)

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