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 フラデルフィアの夜に、音が鳴り響きます。


 地面をうろつく鼠たちが最初、その音に気付き耳を傍立て、警戒し逃げだしていきます。

もう少し大きな耳の、猫や犬が気づき始め、騒ぎ声を上げ始めていきました。

鳥たちも急ぎ羽ばたく。繋がれた、部屋に閉じ込められた猫や犬を尻目に。

最後に気づいたのは、慌てるように忙しい人々たち。

ただもう、逃げるのには遅かったのでした。


 音が鳴り始めます。

人間にもようやく聞こえる大きさで。


 ドクン


 鼓動。


ドクン ドクン ドクン


 鼓動。


ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン


 心像の鼓動としか言えない音が、街の中で響く。

音を聞き、目にして異常さに気づく。

その鼓動の度に、建物に、設備に、地面に腫瘍のような出来物が大きくなっていく事を。

鉄骨が、配管が、配線が針金の様に引き伸ばされ、混線し絡み捻じられ鼓動をする。

打ち捨てられた廃棄物が、混ざり集まり塊り、鼓動を開始する。

 どこかで見た事のある形を作り上げながら。

街の逃げ遅れた医者は気づく。

心臓だと。


ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン



 その心臓の鼓動から逃げようと人々は外へ、街の外へ逃げようとするも、体は言う事を聞かない。

鼓動の振動で、足が。

足が。手が。全身が。

操られるように動き続ける。

踊り続ける。

街のそこかしこにできた針金の心臓、その鼓動に唆されて。

心臓と言う太鼓、鼓動と言うサウンドに身も心もそれに委ねてしまって。

自らの、普段気に留めない心臓にもやられてしまって。


 建物が、地面が、設備が、機械が、車両が、樹木が。塵芥が。動物が。そして人々が。

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン

踊り続けた。

心臓の鼓動のサウンドで。



 しばらくして外から救援が入り込めました。

それまで誰が入っても街の鼓動によって踊り続けてしまうために。

街は疲れ切ったものであふれていました。

建物が、地面が、設備が、機械が、車両が、樹木が。塵芥が。

動かなくなった心臓をそのまま、打ち捨てるように転がして。

動物が、また人々はその心臓を穏やかに動かし、ぐったりと眠りついています。


 ただ、なんだか街全体が幸せそうだったと言います。


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