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 フィラデルフィアの夜に、針金が見つめてきます。


 警察署の電話がまたけたたましく鳴りました。

人が攫われた、いなくなった、何かに巻き込まれたかもしれない。

そんな内容ばかり。

最近あまりにも多くのそういった事件が起こり続け、警察官がいくら出動しても全く人数が足らずその電話を受け取っても、ああまたか、と面倒くさそうに書類を書き後回しにされていきます。

そんな書類は山となり、次の当番の警察官が疲れた体を引きずって次の事件、次の事件へと向かっていきます。

 また、電話が鳴りました。

また同じ内容。

同じく面倒くさそうに書類を書こうとした、その時でした。

 気が付いたら、目が電話番の警察官を見据えている。


 無数の目が、それを備えた人形が、警察署内の人間たちを見据えている。

電話線が、ペンが、机の一部が、椅子が、パイプが針金の様に引き伸ばされて、絡みうねり捻じられ組み上げられて。

 床から、天井から、壁から、その内部にある電線や構造物が。

無作為に金属が一瞬のうちに引き伸ばされて針金状になって見据えている。

 警察署のそこかしこが、針金で組み上げられた人形だらけになって、その内部にいる警察官をじっと。

見続けている。

 続いて気づいた。

いなくなった人物の顔をしていると。

データベースの行方不明者の顔が、そのまま警察署内に無数に点在している。


 パニックになりながら、警察官たちはあちこちを点検を始める。

玄関、取調室、更衣室、署長室、トイレまで。

無数の人の形が形成され、じっと警察官を見つめてくる。

連絡が来る。

 パトカーの内部にまで、謎の行方不明者の顔が作り上げられている、と。

もう一つ、連絡。

行方不明者が見つかった、とも。

連絡を受け取った係の目の前で、一つの顔が消えた。


 警察署に、人の顔が次々に形成されていきます。

それは市民からの通報がある度に増えていきます。

続いて不明者を見つけ、保護もし続け、そうするごとに人の顔がいなくなっていきました。


 警察官たちはより多忙を極め、人の顔を減らしていこうとしていきます。

でも行方不明者がいる場所にも謎の人の顔がいつの間にか作られており、その顔が行方不明者の顔であると言います。

 なぜいきなりこの現象が起きたのか、誰にも分らず針金状になった金属製の顔に煽られつつ、警察官は出動していくのでした。


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