歴史
ロキは受勲式から数日経って手紙を残し去ってからしまった。
トールは無言で荒れていた。
シギョンは上院や国王へ捜索の案を何度も出していた。
シギョンの進言は受け入れられなかった。
それ程、ロキの行動や心理状態はあの日から芳しくなかった。
上院はロキを英雄と言う偶像の枠に抑え以降は余生を過ごしていると言う設定で国民を騙し通すつもりでいる。
その考えをトールでさえ感じているが何も出来なかった。
月が変わり、トールが痺れを切らしてしまった。
「シギョン!俺様はロキを探しに旅に出る!」
「。。。居場所のあてはあるのですか?」
「。。。」
そんなトールにシギョンは抑揚を抑えた声を投げつける。
付き合いの長いトールにもシギョンの気持ちが分かったように黙ってしまった。
シギョンはトールと同じように、、、いや、それ以上に現状を打開しようともがいていた。
そして後悔もしている。
あの日、敵国の情勢等をきちんとしていたら、、、
そんな変えようの無い過去を何度も何度も思案し。思考し。施策し。その度にロキが下した決断の重みを感じて後悔していた。
「後、数日は待ってください」
「。。。」
シギョンは真っ直ぐトールの目を見つめる。
言葉の重みをトールは受け止めたように軽く頷いた。
トールもシギョンも抱えるものはあるがその日はそれで解散した。
そして、数日の準備期間が終わり、シギョンはトールを呼び出した。
「やっとか?」
「えぇ。ロキを探しに行きます」
「詭弁をどうしたかは聞かないが、行けるんだな?」
「はい。我慢してくれてありがとうございます」
「。。。友を迎えに行こう」
2人は決意のこもった目を通わせると戦衣装に着替えるために部屋に戻っていく。
ロキを連れ戻す。
その目的のために、、、
壱
夕暮れ、トール率いる小隊。シギョン率いる小隊の精鋭混同小隊がロキ捜索の為に集まっている。
「あてはあるのか?」
「ありません。でも、立ち寄らなくてはいけない所はあります」
「そうか。。。俺様には分からないけどそこにはロキの足取りがあるんだな?」
「えぇ。必ずあります。あるはずです。私達が遅くなってなければ必ず。。。」
「なら、急ぐしかないな!」
トールはシギョンの肩を軽く叩くと小隊に対して号令を告げる。
小隊は乗馬すると森へと進路を向けて駆け出した。
先頭をシギョンが走りその後方にトール。そして兵士達が続いている。
森を抜けたその先にある敵国である隣国へ向けて、、、
弐
森を抜けて敵国の城が見えてくる。
空を漆黒のように無数の烏が敵国を覆うその光景をシギョンは奥歯を噛み締めて睨み付けた。
その光景は国と表現するにはあまりにも活気が感じられなかった。
トールもその事を感じているのか周囲への警戒を強めている。
城の周りに辿り着くも城門は閉じており、周りには商人達の気配も感じられない。
「門を壊して中に入るか?」
トールは鎚を手に構えてシギョンにだけ聞こえるように声をかけた。
「いえ、この城を占拠されてる可能性も否定できません。なので壁を登りましょう」
少しだけ考え込むとシギョンは軽く首を振って城壁を指差した。
その指揮を受けた兵士達は馬を降りて壁を登る準備を始める。
それを少し離れた所でトールとシギョンは城の上を異常に飛び交う烏を見つめている。
「なぁ。コレってやはり。。。」
「ありえません。。。ロキは誰よりも優しいのです。。。」
「そうだよな。。。だが、俺様達より本気のロキは強い」
「。。。」
含みのある言い方でも2人の中では1つの推測が確信へと変わっていく。
「ロキはなぜ前線で戦わないのだろうな。。。」
「それは彼が優しすぎるのです。。。」
「それでも、冗談で始めたとは言え俺様達2人相手に稽古試合で圧勝した。今回の襲撃も僅かな可能性を感じていたからロキを残したんだろ?」
「はい。。。それ程の実力を持っている彼だから防衛は出来ると思いました。ですが。。。」
「予想外は敵さえ殺すことを躊躇い様子見をした結果、少なくない規模の被害を出した事だろ?」
「ロキも警戒をしていたでしょう。でも、不運は不運を呼んで結果はロキの守るべき対象を失ってしまい、私達がロキの心の傷を癒すことも出来ずロキは出ていってしまった。」
「。。。」
2人はロキを救えなかった。
救える手段がなかった。
それ程、ロキの心の傷が深いことをロキの顔を、言葉を、息遣いだけで感じていたから、、、
「隊長。準備が整いました」
「分かった。。。」
小隊はゾクゾクと城壁を登り始めた。
シギョンとトールも登りきると、眼下に広がる惨状に息を飲んだ。
予測をして覚悟をしていたがそれでも眼下に広がる景色が現実とは思えないでいた。
「。。。コレより!探索を行う!各員防護マスクを着けて現状の状態を崩さず状況の把握をしろ!」
トールは兵士達に号令をかけるとシギョンと目線を合わせると城へと視線を向けた。
2人は無言で城壁から城へと向かって歩き始めた。
視覚を変えても、歩いても廃墟であるのを感じる。
2人の足は少しずつ早くなる。
奥歯を噛み締めて、足を強く踏み締める。
理解していた可能性。
果たした後、ロキは、、、
最悪の想定は2人に焦りを感じさせる。
城を散策するとそこは腐乱した死体があちらこちらに放置されている。
最後の部屋を見た時、シギョンは崩れ落ちた。
「最悪は。。。回避できてましたね。。。」
「あぁ。。。」
トールは周囲を見渡してからシギョンを立たせて、城の前の広場に向けて歩き出した。
参
2人が広場に到着すると散開した兵士が既に揃っている。
「生存者は。。。」
「あぁ。。。分かってる。何も言わなくて良い」
「。。。」
冷たい空気と烏の鳴き声が広場に響く。
「王が乱心して国民を虐殺、そして王は配下によって相討ちの死を遂げておりました」
「いえ、それは。。。」
シギョンの発言に兵士の1人が否定しようとしたがシギョンが視線で制止した。
「コレからは我が国の為に工作をします。各自、王への無理な徴兵等の不満と最後の断末魔としての書記を書いて適当に住民のタンスや付近に散布しなさい」
「。。。」
勝ったものが歴史を作る。
それをシギョンは命令している。
例え、それが偽装された歴史でも資料と矢の角度から信憑性が史実となる。
コレで王都への強襲も相まって王都への恨みの連鎖は終わる。
「悪いな。。。嫌な役目をさせた。。。」
「いいえ。コレで良いのです。それにおバカなトールではこの後の責任は取れないでしょ?」
「。。。」
2人は夕暮れを迎える空を見上げながら今後について考え始めた。
「俺様は俺様の国を作る。。。」
「私は国に送還されるでしょうね。。。」
この光景の惨劇を1番に発見したそれが意味をするのは王都が虐殺したと言う認識を与える事になる。
それを回避するための策をロキは無意識に残したのか、それとも故意的に残したのかは2人には分からない。
それでも人柱として2人は王都からの支援が無くなる道を選んで、空を見上げ続ける。
この空のどこかに未だに生きてる友を願って、、、




