崖下のクズ拾い
蒸気の吹き出る音、鉄サビの匂い。ここは町外れの貧民街だ。ボクはここで生まれ育った。
「さて、今日も行くか…。」
自分を動かすように、独り言。この貧民街で仕事にあり付けているだけましだとは思うが、この仕事もいつまで続けられるか。先の見えない毎日にため息をつきたくなる。
さらに町から少し離れた所にぽつんと大きめな小屋がある。そこがボクの職場だ。
「おぅ!来るのが早いな!まだ誰も来てねぇぞ」
この見事なまでのスキンヘッドのおっさんはここを仕切っている団長だ。朝から声がデカい。
「早めに準備しておきたいですからね」
そう返して、そそくさと仕事の準備をする。
ロープにほつれがないかチェック。
他にも道具の確認などしていく。
「おはよ〜、なにしてるのー?」
眠そうな声と顔で話しかけて来たのはライという猫耳族の少女だ。ボクより少し前に団に入ったらしい。
「道具のチェックだよ。一応ね」
「毎日飽きないね〜」
「いざという時に道具のせいで死にたくはないからな」
そう、結構この仕事は危ないのだ。
少しすると、他のメンバーも集まって来た。
「よし!ちゃんと全員来たなぁ!今日もたんまり稼いで行こうや!」
小屋の奥に行くと下に降りるための階段がある。しばらく降りていくと外の明かりが見えてくる。
「気を付けて来いよ〜、落ちても知らないからな」
ここから先は外階段になっている。下を覗くと思わず腰が引けてしまいそうになる。落ちれば命は無いだろう。この階段を降りた先が作業場になる。
この崖の下には様々な物が投棄されていく。
中には価値のある物があったりする。しかし。
落ちているのは物だけではない。崖から落ちた生物の死体なんかも転がってる。そして、その死体を狙った魔物や崖底の生物が集まっている。
獲物の取り合いで力尽きたであろう魔物を見ることもある。中には素材価値のある魔物もいたりするので
投棄物を漁りつつ、魔物がいればその素材を回収する。それがボクの仕事だ。
…通称、崖下のクズ拾い。