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保体委員 初仕事 保健室編


 3日後、6年2組が中休みの保健室当番を任せる日になった。トモくん、かなちゃん、ナナちゃん、森嶋さんに代わっての私が待機してるところ。

「んっふっふー。あきらちゃんがいると、保健室の雰囲気が変わるねぇ。」

「そ、そうなの?かなちゃん。」

「間違いないわね。去年までここにいた森嶋さんはねぇ、気が付いたらそこにいた、って感じで影が薄かったのよねぇ。」

 へぇー、なんとなくだけど、納得しちゃった。それと同時に、なんとなく5-2の時の保体委員の様子が窺えたわ。

「保健室に入ったら、もう包帯とか、絆創膏とか、赤崎先生の机の上の書類とか、何かもう 、色んなものをせっせと整理してたよな。」

「そうそう。ボク、保健室に1番乗りで来たと思ったら、もう森嶋さんがいたりして、何で森嶋さんが1番で来れるのか不思議だったんだよね。」

 も、森嶋さん、スゴい!もしかして、忍者か何かじゃない?


「…いやぁ、僕もなんだわ。」

「失礼します…。」

 あっ、病気の子が来た!顔が青ざめてる感じじゃ、気分が悪いみたいね。よかった。この子、女の子だわ。

「どうかしましたか?」

「あ…あの…今朝から気分が悪くて、ちょっと、横にさせて下さい。」

「深山千鶴ちゃん、3年生になったんだね。クラスは?」

「2組よ、智彦お兄さん…。また体調崩しちゃった。」

「その時は無理せずに休んでおくと良いよ。」


ガタッ


「はい、ベッドの用意できたからね。また昼休みに様子見にいくから、お大事にね。」

「ありがと。智彦お兄さん。」

 今の一連の流れで、トモくんはその女の子の名前とクラスと保健室に来た理由を書き、そうしてる間にかなちゃんとナナちゃんはペットの用意をしてる。すごくスピーディね。仕事慣れしてる感じもあるわ。



 あっ、あきらちゃん、名前を確認するの忘れてたな。本当は保健室に来た理由と一緒に聞くべきなんだけどなぁ。

「あっ!ごめーん、トモくん。あの子の名前聞くの忘れてたよね?」

「あ、あぁ。確かに。でも、自分で気付いたんなら大丈夫だよ。ドンマイ。」

 なるほど。自分で分かってたんだ。ならば注意しなくても大丈夫か。


「あっれぇ?トモくん、何だかあきらちゃんに対してだけは優しいのねぇ。こういうミスなら「あれっ?名前聞いたか?」って、ちょっと追及してくるのに。」

 んっ?なんだ?「なに、あきらちゃんだけ特別扱いしてるの?」と言いた気な顔して。

「あきらちゃんが気付いたから、言わなかっただけだよ。」

と、正直に言ってやったが…。

「ボクだって「ねぇ、名前はどうした?」って聞いてくるから、ビックリするよ。」

 ナナちゃんも乗っかってきた!

「いや、それは去年の大体今頃の話だろ。今だったら僕にそう言われなくても名前を聞くから、何も問題無く見てるって!」

 っあーっ!去年はさ、えらい気合い入れて委員会活動してたから、細かい事でも何かと指摘してたんだよなぁ。赤崎先生に

「気にし過ぎだよ。」

って言われるまでずっとそうやってたから、保体委員での僕は口やかましい奴って思われてしまったんだろうなぁ。


さて、気を取り直し…

「失礼しまー。」

「はーい。あっ、内田(宏茂)くんか、4-2の。膝がすりむけてるな。ちょっと待っ…。」

 あ、あきらちゃん、めちゃくちゃ震えてる。しかも微妙に顔が青ざめてるぞ。内田くんにナニされた?



 こ…この子…あの時の子だわ…。2年前、ジャングルジムに私を縛り付けてくすぐった…あの悪ガキ共3人集の1人だわ…。あの時以来、男子がさらに苦手になって、触れられるたびに、それは無条件反射で誰彼殴りかかるようになっちゃったわ。なにせ浩一さんも思いっきり殴っちゃったんだもの。まぁ、浩一さんは元っから大嫌いなんだけどね。


「あっ!あの時の姉ちゃん!」

「ひっ…!」

 と、トモくん…助けて…!あの子、何をし出すか分からないのよ…。ダメダメダメ…。こ、今度は「どんな下着きてるの?」とか聞いてくるんでしょ?やだよー!早く帰ってー!

「お姉ちゃん、ごめんなさい。」

 へっ?どうしたの?あの子が私に謝ったの?

「俺、あの時以来ずっとお姉ちゃんに悪い事したかもって思ってて、どこかで会ったらあやまりに行かなきゃって思ってたんだけど2年たっちゃった。」

 そ、それは、本心で言ってるの?顔見た感じじゃ、反省してるように見えるけど…。ってダメダメダメ!きっと、うまい事演技して、仲直りの握手をするふりをして、その隙に私の体のどこかを触る気なんだわ!間違いないわ!

「お姉ちゃん…。」

 ひっ!きた!手を差し出したって事は、私が思い描いてる筋書きのまんまじゃない!

「まず、傷口を手当しよう。」

「う、うん…。」

 でもトモくんは平然としてるわね。はぁ…。なかなか男の子に慣れないわね。


「痛っつー!しみるー!」

「我慢してくれよ。男なんだから。女の子でも泣かずに耐えた1年生がいるんだから。」

「な、泣くかっつー…しみるーしみるー!」

はぁ…やかましい子。①のベッドに女の子が寝てるのになぁ。

「はい。手当終わったよ。絆創膏も貼っておいたからね。」

「痛かったー!ひー。兄貴、上手いんだ…」


グリグリ…


「痛ててて…!何するんだよ!」

「あきらちゃんに何をしたか知らんが、お仕置きだべぇ。」


グリグリ…


「ぐわ~!悪かった!悪かったって!ごめ…ごめんなさい!ごめんなさい!もう許してー!」

「余計に長くやったのは、あきらちゃんの分も入れておいたから。」

 まぁ!素敵な復讐をありがとう。トモくん。



「ほ、ほら、仲直りの握手をお姉ちゃん、あきらちゃんって言うんだっけ?」

「うん…。阪本あきらよ。」

 互いに手を伸ばしても、僕がすり抜けられる位置にあきらちゃんと内田くんは立ってる。それで、あきらちゃんはまだビクビクしてるし。それでも察しない内田くんは握手を求めるし。

「さ、阪本さん、俺、あんな事、足洗ったから。足洗ったおかげであの時一緒にいたダチに絶交されちったけど。ほら、たまには男を信じてくれよ。」

「わ…分かったわ…。」

 なんとか身を乗り出すようにして握手に応じるあきらちゃん。僕から見ると、ヨガか何かのポーズにしか見えんのだが。

「は、ハイッ!」


ガシッ


「ふ、普通にやってくれるかな?」

 誰だってそう言いたくなるよなぁ。

「よ、よいしょっと。」

 右脚も揃えて、やっとまともに立てたか。よかったよかった。これなら…

「阪本さんの手ってスベスベしてるな。いつも手入れしてるの?」

 あっ!内田ぁ!

「まぁねぇ。ハンドクリームは塗ってるわよ。」

 あきらちゃん普通に答えてるし!大丈夫なの?

「ねぇ、手の甲も触っていい?」

「良いわよ。」

 げっ!これ以上やると…


さわさわ…


「わぁ…すっげぇ手触り良い。」

「ふふふっ…ありがとう。」

 な、何なんだろう?この光景は。横を振り返れば、かなちゃんとナナちゃんが変な顔しながら見てるし。


ゴーン、ゴーン…


 あっ、中休み終了のベルが鳴った。

「もうすぐ赤崎先生が来るから、僕らはそろそろ帰ろうか。」

 僕がそう促すと…

「そうだね。ありがとね。阪本さん。保健室の兄さん姉さん。」

 僕らを見事に略したなぁ。

「はーぁ。俺もあの兄貴みてぇな彼女欲しいなー!」

 あっ、こらー!内田ー!



 トモくん、昼休みにも保健室に行っちゃったけど、5分ちょっとしたら帰ってきたわね。

「これも、学年リーダーの仕事だから。他のクラスの保体委員の仕事も見なきゃならなくてね。でも、どのクラスもそれなりに面白い面々が揃ってるよ。あと、中休みに来た千鶴ちゃん、もう体調治って教室に戻ってたよ。」

 まぁ、それは何よりだわ。

「でも、あきらちゃんとしては淋しかった事でしょうよ。」

 きゃっ!かなちゃん!?な、なんて事言い出すのよ!って、トモくん!かなちゃんの言葉を間に受けないで!


!(◎_◎;)


↑こんな顔してたわ!

「か、かなちゃんってば!」

「なーんか、雰囲気がどことなく寂しそうにしてたじゃない。」

「やっ、やめてよー!私、そんなに子供じゃなって!」

「大人だってなるみたいよ。大事な人が帰って来なくて寂しがる時が。」

 お、大人にもあるって言われたら、ますます否定しにくくなっちゃうじゃない。ひとまず私はトモくんとかなちゃんに向かって寂しかった事は伝えた。はぁ…倒れそう。

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