OutLine
静寂。
ざわつく俺の心境とは正反対に、部屋は張り詰めるような静けさを帯びていた。
いや、部屋と言ってしまうと少々語弊があるかもしれない。
正確に言えば、ここは飛行船の中だ。
学校にて、突如現れた宮谷と黒服に、俺はなすすべもなく拘束された。抵抗すること数秒もせずに、突如大型の飛行船がやってきて、俺はその中へと乗せられた。
そして現在、俺は全身を特殊な機器で束縛され、身動き一つ取れない状態にある。
正面にいる宮谷に睨みをきかせながら、俺はこう思うのだった。
一体全体、どうしてこんな状況下に陥ったのか。
もう一度現状を整理しよう。
ここは飛行船の中。俺は何やら謎技術の拘束器具によって、椅子に座ったまま身動き一つとることができない。
そして、そんな俺を囲うようにして20を超える黒服が整列状態で円を形作り、その中心に宮谷がいる。
視線の先、数歩歩けば届きそうな位置で、宮谷はフロート型の椅子に座って浮かんでいる。脚を組み、真正面にて俺の睨みを真っ向に受けていた。
「いやね、そんなに睨まないでくれる? 私が何をしたっていうのよ」
「胸に手を当てて、自分の行動をよく思い返してみろ」
はて、と惚け面を晒した宮谷は、従順にもご丁寧に胸を押さえて、僅か数秒だけ思考の海へと沈む。
「心当たりがないのだけれど、八つ当たりなら私以外にして貰えるかしら」
「どういう思考回路してるんだよ、お前! こうして今! 俺が理不尽に束縛されてるこの状況!」
「あら、そんなに磁力ルーデ拘束器具がご不満かしら。筋肉に電磁気方面から干渉して動けなくしてるだけだから、痛みもないハズだけど?
あ、ひょっとして健康面に気を使ってる? 大丈夫よ安心して、アナタが想像するほどの悪影響は無いわよ」
「違う! そういう意味じゃねぇ!」
「困ったわね」
と本当に困り顔をする宮谷。
「何か苛立ちを生む要素が他に? あ、ひょっとして彼ら?」
と宮谷は浮かんだ状態でクルリと一回り。20名強の黒服の存在を確認する。
再び俺と向き合う宮谷。その表情はすがすがしいまでの作り笑顔だ。
「ゴメンね、彼らはアナタを拘束、監視目的で本部から送られてきた人員だから、いくら怖いからといってこの場から外すワケにはいかないわ。彼らにも果たすべき職務というモノがあるの。分かる?」
「そういう問題じゃねぇ! 何で! 俺が! こうして拘束されてるんだよ! その理由が知りたいの!」
「それこそ、私が聞きたいわ」
作り笑顔をふっと隠し、いきなり真顔に戻る宮谷。
「こうしてアナタを完全拘束して、こんな不慣れな輸送船で連行中だけれども。これは全部本部の指示よ。アナタが拘束される理由を、私は一切知らないわ」
「……じゃあ、お前はあくまで本部の指示を受けて、俺を捕らえただけ。その理由は一切知らされていないってことか?」
「そういうこと。あくまで今回の捕獲に関しては、私は下っ端だったってことよ。だから捕獲理由なんて知らないし、知る道理もない」
分かった? と宮谷は頬杖をつく。
「じゃあ、何で俺を学校に行かせたんだ。ICDAで作業しているところを押さえれば、こんなデッカイ飛行船を用意する面倒も省けただろ」
「それに関しても上層部の指示。『半日分だけ支倉恭司を外で泳がせろ』ってね」
つまり、今回の捕獲の件に関しては、宮谷は本当に何も知らされていないらしい。
「心配しなくても、理由くらいすぐに分かるわよ。これから連れて行かれる所で」
ニッコリ笑顔の宮谷に心配ご無用と言われるが、正直ここまで大仰な捕獲作戦を実行された身としては、これからの身の安全に不安を抱かずにはいられない。
「あのさ、これから連れて行かれる場所はICDAだって推測はついてるんだけど、ICDAの何処に? 前に言っていた地下の監禁所か?」
「まさか。覚えてない? コード査問会って場所」
「コード……査問会?」
一度説明は受けた気はする。ICDA内部で過ごした2週間の間にも、幾度となくその言葉を聞いていた。
「ゴメン忘れた。コード査問会って、なんだっけ?」
「組織内部での重大なミスとか、機密漏えいとかの大罪を犯した者を裁くトコロ。いわば、裏世界の法廷って言ったところね」
簡略化した説明を受けて、俺は背筋がゾクリッとするのを感じる。
「な、なんか俺、マズイことしたっけな……?」
「さぁ、こればかりは私にも分からないわ」
正直なところ、全く心当たりがない。
この2週間はずっとICDA内部で過ごしていたから、秘密漏えいの可能性なんて欠片もないし、復興作業で身を粉にする間も目立ったミスはしていない……はず。
よって、こうしてその裏世界の法廷とやらに連行されるだけの大罪を、俺は知らぬ間に犯していたとは考えにくいのだが。
しかし、それよりも今はこれからのことだ。
嫌な予感をヒシヒシと感じながら、俺は恐る恐る聞いてみる。
「あのさ、そこで裁かれた人たちって、普通は最後どうなるの?」
「アナタが想像してるよりは無惨なモノよ」
ひっ、と短い悲鳴を漏らしてしまう。
「まぁ全く意味はないけど、神に祈るなり縋るなりご自由に。所詮査問会なんて茶番よ。とっくにアナタへの判決は決まってるから」
「なら何でそんな面倒な会を開くんだよ」
「正義面してショーに興じたがるお偉いさんたちも、組織の上層部にはイッパイいるってこと」
「はぁ、なるほどな……」
宮谷の言わんとすることは分かる。つまりは犯罪者を裁くことで、正義感に浸りたい連中がいるということだろう。そのためのコード査問会。
「でも、尚更何が悪かったのか分からなくなってきたな。俺みたいな下っ端を捕まえて裁くのに、ここまで大がかりな捕獲作戦なり査問会なりが用意されるんだから。よほどのことを俺はしてしまったみたいだな……」
「そのことなんだけどね」
宮谷は脚を組みなおす。まるでこの一言が話の節目であるかのように。
「アナタをこの裏世界へと招いたのは他でもない私だし、それなりに関わり合いのある身として教えてあげるわ」
「何を?」
「私の推測。アナタが今回捕まった理由についてね」
宮谷はすっと右手を掲げる。それに機敏に反応した黒服の一人がすぐさま翻し、飛行船内部に備え付けられていた端末を操作し始める。
程なくして、ちょうど俺と宮谷を区切る様にして、エアスクリーンが浮かび上がる。
最初はノイズに塗れた画面が、次第に鮮明度を上げていく。
そして、俺の視界に映りこんできた映像は。
「そう」
スクリーン越しに、宮谷は言葉を続けた。
「先日ICDA副会長ユウリ・アリフォンス許可の元に行われたアナタとライエルとの戦闘、それを記録した映像よ。雅美が解析用に撮影していたGOD-EYESビジョンを私にも流してもらったの」
音声は無い。ただ示される映像に、俺は注視した。
限界までズームアウトされたGOD-EYESが捉えていたのは、世紀末の都市を彷彿とさせる瓦礫の山と――――。
その中央で壮絶な闘いを繰り広げる、2人の人物。
いや、壮絶な戦いと言うが、実際のところ何が起きているのかすら分からない。
衝撃。
電撃。
連撃。
絶え間なく閃光と紫電が行き交う空間において、ぶつかり合う2つの人影が辛うじて視認できるだけだ。
しかも、微かに捉えられる人影は固定されていない。まるで一閃の軌跡を描くかのように荒れ果てた空間を飛び交い、2本の軌跡が交わる度に嵐を彷彿とさせる衝撃波が生み出され、周囲の瓦礫が砂の如く吹き飛ばされている。
常軌を逸した超高速度で繰り広げられる闘いだ、人物の表情はおろか、その風貌すら視認できない。ただ分かるとすれば、桁外れの戦闘能力を持った人物2人が、悍ましいまでに加速された世界にて、熾烈な闘いを繰り広げているということだけだ。
「これが……この一人が……」
俺だというのか?
冗談もいいところだ。こんな映像だけで、信じろと言う方が無理がる。
「でも、アナタはライエルを倒した」
まるで俺の思考を読み取ったかのように、宮谷は言葉を重ねる。
「そういえば、アナタにはこの時の記憶が無いらしいわね」
「ああ、俺自身不思議でな、全く覚えていないんだ。だからこんな映像を見せられたところで、正直にわかには信じがたい」
それでも、断片的ながらも、微かに記憶はある。
まるで何処か遠い世界での出来事のように、淡い光を纏った光景として、時々俺の脳裏によぎるのだ。
俺が、この世界最弱の俺が、ライエルの顔面に思いっきり殴りを入れている光景が。
「――――……」
あの時俺は、結局意識がないまま……。
パン、と。
「――――……っ!」
宮谷が両手を叩いた音で、底なしの思考の海に沈みかけていた俺は現実へと連れ戻される。
「今はライエルのことはいいわ。問題は、アナタが世界最弱の適合率0%の男、その一点に限られる」
志穂は人差し指を素早くフリック。同時にスクリーンに浮かび上がった動画が停止される。
「GOD-EYESによる秒間撮影コマは、対象の速度に沿ってオートマティク式に吊り上げられる。今世間で市販されているGOD-EYESは、最大2000000コマ/秒。ICDA内部で採用されているのは、最大3000000コマ/秒よ。最新鋭の戦闘機すら捕捉するこのGOD-EYESによるキャプチャだけれど、ここに映るアナタはどうかしら」
と聞かれても、画面が静止したところで俺の姿ははっきりと視認できなかった。まるで大昔に使われていたテープを無理やり引き伸ばして、画面の中に当てはめたかのような、そんな細い黒色の線が走っているだけだ。
つまり。
「そう、ライエルとの戦闘時において、アナタはGOD-EYESによる捕捉を完全に振り切っていたのよ。適合率0%のアナタがね」
言葉が出なかった。本当にこのバカげたヤツが俺だとでもいうのか。
「それだけじゃないわ」
「っ――?」
宮谷は唐突に立ち上がる。スクリーン越しから、俺の方へと歩み寄ってくる。
「前に言ったの覚えてるかしら? 橙のモールドによる、個人特有の能力発現に関するメカニズム」
「あ、ああ。確かアレだろ。感情の波長パターン……だっけ? それに似通った事象が、橙のモールドとリファポットを経由して具現化するんだよな」
「ええ、その通り。個人の感情の波長パターンは、唯一にして無二。そのため個人に発現する能力は、原則として一つだけ。多重人格者なんかは、人格ごとに発現する場合もあるけど……それでも片手の指を超える数の能力が発現することはない。絶対に」
でもね、と俺の目前に立つ宮谷はゆっくり続ける。
「その絶対が、ついに破られてしまったのよ」
ピッ、と宮谷の指が、俺のオデコに当てられる。
「この約120秒間の戦闘記録において、『橙』のモールドによる支倉恭司の能力が、複数以上確認されたの。――――その数、実に3000種類オーバー」
「……は?」
最初、宮谷の発する言葉の意味を飲み込めなかった。
いや、それ以前に思考を放棄してしまった。
「え、いや……! えっと、ちょっと、待ってくれ……」
ようやく思考という行動に復帰できたのは、たっぷり数秒も呆けた後だった。
そして少し考えて、後悔した。
その言葉はあまりにも信じがたく、信じようとすることすらバカらしく感じられてしまったからだ。
「私だって信じられないわ。映像の解析を終えた雅美からこの事を伝えられたときには、それこそ私も卒倒しそうになったもの」
基本原則1つの能力を、俺が3000種類、いや、それ以上持っていた。
実感なんて持てるはずがない。いや、納得すらできない。そんなイレギュラーな事態が、自分の身に起こっているとは。
「すぐには……いや、金輪際信じられるワケがないだろ……どうしちまったんだよ」
最後の呟きは、俺自身へと向けたものだ。世界最弱というレッテルを疑いもせず、未だに抱え込もうとしている俺へ。
宮谷はその場で翻すと、再び静かに椅子へと腰を下ろす。
「何、解釈の仕方によっては、アナタの能力は1つだけということになるわ。ただ私たちの能力基準に当てはめてみた際に、アナタの能力数が3000種類を超えたというだけのことよ」
「つまり、どういうことだ?」
宮谷はすっとポケットから『橙』のモールドを取り出す。内部で波打つそれを片手で弄りながら、呟くように言う。
「ねぇ、そもそもどうしてかしらね? 能力は一人に一つだけ、なんて決まっているのは」
「それは、前に説明してくれただろ。なんだっけな……そうだ、本当はどんな事象でも生み出せる『橙』のモールドだけど、複雑奇怪な事象の解析が困難だから、初めから解析済みの感情の波長パターンと同じ事象しか生み出せない。その感情パターンは一人一つだから、結果的に能力は一つだけになってしまう」
「そうね。つまり逆を言うと、全ての事象の解析ができるなら、森羅万象、どんな事象でも引き起こすことができる。能力としてね」
「それができるのが、どんな答えでも導出してしまうFコードなんだろ?」
宮谷は無言で肯定を示した。
「少しだけ話は逸れるけど、今回の件を考察する上では外せないことだから。アナタには、私たちの扱う能力の本質について、何も教えてはいなかったわね」
「能力の……本質?」
宮谷の能力――重力を操る能力だ。浦田さんの風力操作も目の当たりにしている。
「私たちの能力はね、外部の事象に『干渉している』んじゃない。事象を『生み出している』だけ」
どういう意味なのか、そう尋ねる間も無かった。
そもそも完璧な理解を求めていないのか、宮谷はお構いなしに解説を続ける。
「例えば私の重力操作は、本当に地球の重力に『干渉』してるワケじゃないのよ。新たに斥力なり引力なりを『生み出し』ているだけ。だからさっきみたいにアナタが空中に浮かんでいられたのは、地球の重力を消したからじゃない。地球の重力と釣り合うだけの上向きの力を、私が生み出したから。直接消したのではなくて、逆向きの力で打ち消したのよ」
「つまり……結局何が言いたいんだ?」
ねぇ、と唐突に宮谷は聞いてくる。
「バタフライ効果って知ってるかしら?」
「まぁ、軽く聞いたことはあるな。あれだろ、蝶々の小さな羽が、遠い未来に地球の裏側で大竜巻を起こすって話」
「そう、つまりこの世界の事象全ては、複雑に相互干渉して形作られているのよ。僅かな空気の揺らぎとか、そんな些細な影響が重なりに重なって、途轍もない暴風が生まれてしまうように。
さっきも言ったでしょ。私たち人間如きでは、そのように多要素から成る複雑怪奇な外部の事象を解析できるだけの頭脳が無い。だから外部の事象に干渉するかわりに、既に解析済みも同然の感情波長のパターンに依存するしかなかった」
そして宮谷は、ゆっくりと告げてきた。
「支倉恭司、これが今回のキーよ。アナタの能力は、感情波長のパターンに依存していない。それがライエルとの戦闘映像を解析して判明したこと。
アナタは事象を生み出していたのではなく、外部の事象を無理やりに書き換えていた」
「書き換え……ていた?」
「ええ、ライエルとの戦闘時、アナタは常時周囲の事象を書き換えていた。だからライエルの放つ電撃を打ち消すこともできたし、自己の位置情報について書き換えることで、信じられないような速度で移動することもできた」
「――――」
とても信じられない話だ。
その場限りの事象を、解析した上で書き換える。しかも、あの超高速戦闘の最中に絶やさず何度も。
口で言ってしまえば簡単だが、実際には想像を絶するほどの難儀だ。
例えばライエルの放つ電撃一つを消すにしたって、電撃の事象情報を把握した程度では叶わない。微風、小石、砂埃、気温、湿度、空気などなど……その空間全ての、ありとあらゆる細かな要素、それら全ての事象情報を組み合わせて作られた、最終的な『事象情報』を把握しなければならないのだ。
バタフライ効果の通り、最終的な事象情報は、それに関わる全ての事象情報を総括して成り立つ。
つまり、最終的な事象情報を把握するためには、それを構成するどんなに些細な事象情報でも、決して見落としてはならない。
例えて言うならば、それは宙に散りばめられた幾多の糸を、一本の針で縫い合わせて、一つの糸編みを作り上げるようなもの。
簡単に風に流されてしまい、すぐにその場所を変えてしまうような流動性。加えて針で刺すにはあまりに無謀な、細すぎる胴体。無数にあるそんな糸を、その動きを一つとして逃すことなく把握し、宙に漂うその細糸の身を針一つで縫い合わせて、一つの編み物を作り上げる。
そのような行為を、俺は僅か120秒の戦闘時間において、何と3000回も行ったという。
「そんなこと……人間にできるワケがないだろ」
「ええ、その通りよ。その通りのハズ。ただの人間には、そんな無茶苦茶を通り越した芸当はできっこない。複雑極まりない上に、戦闘中のような常時書き換わる事象の解析なんて、『マザー・クリス』に演算させたトコロで数年はかかるわ。ましてやそんな無茶苦茶を、あんな目に追えないような速度域において、たった120秒間で3000回もだなんてね。考えただけで気がどうにかなってしまいそうだわ」
宮谷はパン、と両手を叩く。展開されていたエアスクリーンがふっと掻き消える。
「そこで、私と雅美は考えたのよ。これまで誰も到達できなかった、外部の事象への直接干渉を、どうしてアナタがやってのけられたのか。目下、私が抱いている推論は二つ」
ピッと、宮谷は人差し指で空気をはじく。
「一つ、アナタに目覚めた能力が、『周囲の事象を把握する』能力だった。もしそうならば、最早この能力は規格外だわ。能力ランクSSSどころの騒ぎじゃない」
「どうしてだ?」
「だってそうでしょ。周囲の事象を完全に把握できるとしたら、アナタは『何でもできる』のよ。どんなに細かい事象ですら書き換えられる。感情プールの存在する限り、この世の全てを、世界そのものを書き換えることができるわ。それこそ小さな神様よ」
その響きを全身で噛み締めたとき、俺は悟った。
違う。宮谷の推論は誤っていると。
――――神なんかじゃない。ふつうの人間だ。一人の人間だ。
そう心の中で叫ばれる声を、俺は何処か遠くの客席で聞いている気分だった。
だからこそ、それこそ全くの『他人事』であるこの話に終止符を打つために、俺は自然に宮谷に先を促しているのだった。
「なら、宮谷の思う推論、二つ目は何なんだ?」
「ええ……」
宮谷は、先ほどの一つ目の時のような軽快な動きとは対照的に、ゆっくりと中指を上げた。
まるでその推論を述べることを、無意識のように抵抗として感じてしまっているように。
「二つ目は、それこそアナタが今回捕まった理由へとつながる」
宮谷の口の動きが、はっきりと、ゆっくりと目で追えた。
「アナタが、――――だから」
「――――」
ああ。
そうだ。
きっと、それに違いない。