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第1話 学校で怖がられる幼馴染が、私にだけ弱すぎます。

「フルージェさん! よければ皆さんで放課後、中央街で卒業試験に必要な材料を買いに行きませんか?」


 魔法学校のホームルームが終わると、私――レノン・フルージェの周りにクラスメイトが集まってきた。


「まぁ! お誘いいただきありがとうございますっ。ですが申し訳ありません。このあと用事がございまして……」


 せっかくのお誘いだが、私は丁寧に頭を下げる。

 すると自慢の赤いハーフアップヘアが揺れた。


「そうでしたか……ではまた今度お誘いしますわっ!」


 その時、斜め向かいの席で、ギィィッと乱暴に椅子を引く音がした。


「……うるさい、アンタたち」


 その席から、金色のウルフカットの女子生徒が立ち上がる。

 透き通る青い瞳で、不機嫌そうに睨みつけた。


「す、すみません! フォーティシアさん……! も、もしよろしければフォーティシアさんもお買い物いかがで――」


「うるさいっての! アタシは忙しいの! アンタたちに構ってる暇なんかないわよ!!」


「ひっ!!」


 すると彼女――リサ・フォーティシアは教室を出ていき、扉をバンッ! と乱暴に閉めた。


「どうしてフォーティシアさんに声をかけたのよ、わかってたことでしょ!」


「こ、怖かったですわ……目つきも恐ろしくて、校内では粗暴な態度で先生からも目をつけられているみたいですし……」


 クラスメイトたちの間では、彼女の話題が尽きなかった。


「ね? フルージェさんもそう思いますよね?」


 話を振られ、私は曖昧に笑う。


「そう……でしょうか?」


 それ以上は、言わないでおいた。



◇



「……おっそい、レ(・)ノ(・)ン(・)」


 学生寮の自室の前まで戻ると、先ほどの金髪の彼女が扉の前で腕を組んでいた。

 青の瞳で、不機嫌そうに睨みを利かせている。


「あら、貴女が早すぎるんじゃないんですか? リ(・)サ(・)」


「うっさい! 今日もするんでしょ! さっさとしなさいよっ!!」


「……はいはい。昔から騒がしいですね、貴女は」


 もう何度目かもわからないやりとりを交わしながら、部屋の扉を開けてリサを招き入れる。


 ――ガチャリッ


「ちょっとレノン!? なんで鍵閉めるのよっ!」


「この前、開けっぱなしでしていたらクラスメイトに見られかけたの忘れたんですか? 誤魔化すの大変だったんですよ!!」


「しっ、仕方ないじゃない! やらなきゃいけないんだから!!」


「はいはい、わかりましたから音量抑えてください……耳キーンってなるんですから貴女の大声……」


「うるさくないわよっ!!」


「だからその声がうるさいんです!!」


 これ以上言い合っていても、仕方ありませんね……。


 私は準備のため、制服の上着をハンガーにかけた。


「ほらっ、リサの上着もかけてあげますから」


 私は手を差し出したが、リサは上着を脱ごうとしない。


「……今日、体育で汗かいちゃってるからこのままでいい」


「貴女ねぇ……上着越しより魔力を合わせやすいって、何回説明したら……」


 私は脱ぐのを渋るリサの上着に手をかけた。


「ちょっ! わかった!! 自分で脱ぐからっ!!」


「もう遅いです。ほいっ」


 私はリサから奪い去るように上着を脱がす。


「きゃぁ!? 無理やり脱がすな変態っ!!」


「いや上着でしょうに……それに」


 リサに近づいて鼻をすんすんと鳴らす。


「貴女は昔から良い匂いですよ?」


「ば……ば、ば……」


 すると彼女は顔を真っ赤にして――


「バカ!! そんなこと真顔で言うな! えっち!!!」


 耳を塞ぎたくなる勢いで罵倒が飛んできた。


「……小学生ですか、貴女は」


 まあいいです。とりあえず準備を進めましょう。


 私は勉強机の上に置いた紙に、羽ペンで魔法陣を描く。


「これでよしっ。ではリサ、手を」


「……んっ!」


 私たちはその勉強机の前で、両手を合わせる。


「では、私の魔力と合わせてください」


「……なんでアタシがアンタなんかに合わせなきゃ」


 そう言いながら、リサはズレた手のひらをぴたりと合わせ直す。

 ……口では文句ばかりなくせに。


 私は目を閉じて集中する。


 体内をめぐる魔力の強さを、相手に合わせる。

 少しでもズレれば、コレは失敗してしまう。


 ――あともう一つ。


「リサ、次は……」


「わかってるわよ! 心をシンクロでしょ!! アンタは集中してなさいっ!」


 そんな感情剥き出しだとダメだってのに、この人は……。


「貴女こそ落ち着きなさい。ほらっ」


「ひゃぁぅ!?!」


 私は片方の手を離し、彼女の腰を抱き寄せる。

 こうして近づけば、おのずと心も通じ合いやすいはず。

 魔力だけでなく心までシンクロさせる必要があるなんて、なんとも面倒臭い作業です。


 私も、心を穏やかにしてリサに合わせてあげないと――


「……ね、ねぇ! ちょっとぉ!!」


「なんですかもう……リサも早く心を落ち着かせて……」


 彼女の顔をよく見たら――


「れ、レノンの……お、おっぱいが当たって……そのっ……うぅ……」


 ……は?


「な、な、なに男の子みたいなこと言ってるんですか貴女は!! それでよく人のことえっちとか変態とか言えましたね!?」


「あ、アンタが密着してるからでしょ!? こんなもの当てられても、なんともないわよ!!」


「じゃあなんでそんな顔真っ赤にしているんですか! 貴女にも同じものが付いているでしょう!?」


「そういうことじゃないわよ! うぅ、バカ! バカレノンっ!!」


「バカバカ言い過ぎですよ! だいたいリサは昔から――」


 そんな言い争いを始めてしまったが最後、紙に描いた魔法陣に眩い光が集まって……。


「あっ」


「えっ」


 ぼふんっ!!!


「けほっ……あーあ……」


 爆発の煙が晴れると、魔法陣の上に小さな魔法石ができていた。……とてつもなく真っ黒コゲですが。


「あーあ、じゃないわよ! また失敗じゃない、どーすんのよレノンっ!!」


 すると彼女は私の体をぽかぽかと叩き始める。

 ……もう我慢できません。


「どーするもこうするもリサが毎回そうやって集中乱すから失敗するんですよ!! わかってるんですか!?」


「あ、アタシが全部悪いってわけ!? アンタそうやって昔から人のせいにしてばっかなのホント良くないんだからっ!」


「貴女だって昔からずーっと怒ってばっかり! いつになったら落ち着きってものを学ぶんですか! ほんっと手のかかる幼馴染ですね!」


「だ、誰がアンタに世話を焼いて欲しいなんて頼んだのよ!!」


「だぁー! もう!!」


 今はこんな喧嘩してる場合じゃありません!!


「いいですか! この魔法石の生成ができなければ魔法学校の卒業試験に合格できないんです!! 卒業できなくて留年ですよ!?」


「うるさいうるさいっ! 何回も聞いてるわよ!! だからこうして毎日アンタとやってるんでしょうが!!」


「あーもう!!」


 ぷちん、と頭の中でなにかがキレた。


「……わかりました。そこまで言うなら――明日からもっと徹底的に、心を合わせる訓練をしますからね」


「はぁ!?」


 リサの顔がピクッと引きつる。


「近づくたびに取り乱していたら、いつまで経っても成功しません! もっと近い距離にも慣れてもらいますからねっ!!」


「ちょ、なに勝手に決めてんのよレノンっ!? もっとってなによっ!!!」


 もう知りません。

 このままでは二人そろって留年なのですから。


 でも……昔は、こんなに心を合わせるのが難しい相手じゃなかったはずなのに。


 ――こうなったら、なにがなんでもこのツンツン幼馴染と心を合わせてみせますからね……!



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!




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次回もよろしくお願いいたします!

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